【スカルプターズ・データベース】絶妙な“柔らかさ”の造形、驚異の天才肌 Entei Ryu

フィギュア、ゲーム、CM、映画、そしてアートのジャンルで最も造形力のあるスカルプター・原型師を集めた、最新データベース創刊!
【2025/10/28更新!】ファンタジー造形の次世代エース
Entei Ryu Profile


Entei Ryuとその手。
エンテイ・リュウ
1993年生まれ、コンセプトアーティスト、デジタル造形作家。東京大学で建築を専攻し、卒業後はゲーム・映画のコンセプトアートを中心に活動。彫刻、イラストレーション、ファッションデザインにも携わっている。2021年からワンダーフェスティバルへの出展を始めた。
2025年8月、『MERCURY Entei Ryu造形作品集』(玄光社)を発行。
Twitter: @BadZrlwt
☆主な参加作品
オリジナル作品

「CROCOGIRL」彩色:面球儿 『スカルプターズ06』より。

「Forest Friends」©︎CyDesignation.Inc
作品集

「Mercury」
2025年上半期で一番変化したこと
毎年なにか新しいことに挑戦するようにしています。
2025年の上半期は、裁縫を始めてみました。大したものは作れませんでしたが、手仕事って本当に時間がかかるものなんだなと感じました。もしこの先もう少し時間に余裕ができたら、半年とか一年くらいかけて、手縫いだけで布の作品を作ってみたいなと思っています。
それと、2Dと3Dアニメーションの制作もゼロから独学で始めました。新しい技術をたくさん覚えたし、絵を描くことや造形することについても、今までと少し違う感覚を得られた気がします。
もちろん、「技術的な作業は外に任せて、自分はアートディレクションだけやればいいじゃないか」という考え方もあります。でも、そういう価値観が主流になりつつある今だからこそ、自分の手でやることの意味をもう一度考えたいんです。
商業構造や技術の進化で、“リアル”というものがどんどん遠ざかっていくように感じます。けれど、その“リアル”は物や結果の中にあるんじゃなくて、手を動かしているその一瞬一瞬の中に生まれるものなんだと思います。
だから、今年も来年も、自分の手で新しいことを学びながら、表現の幅を少しずつ広げていきたいです。
2025年上半期で一番良かった資料
もうあまりはっきり覚えていませんが、
2025年上半期で一番感動した作品、映画、動画
2025年上半期でこれは使える!と思ったマイブームのツール
無印良品のシャープペンシルはスケッチを描くときにとても使いや
ワークフロー
使っているPC、ペンタブ
【PC】
組み立てPC(i7-11700,RTX3700)
【ペンタブ】
Wacom Intuos Pro PTH-660
INTERVIEW
■——小さい頃なりたかったものは?
小学生の頃は、小説や詩をたくさん書いていたので、J・R・R・トールキンのようなファンタジー作家になるのが夢でした。中学生時代は物理が好きだったので、いつか天体物理学者になりたいと思っていました。
■——最初に造形したのはいつですか?
中学時代に柔らかい消しゴムで授業中に作った“変なもの”が最初の造形作品。初めてZBrushで本格的に造形したのは大学3年の頃です。クリーチャーとメカのようなコンセプトデザインを描いていたとき、3D造形でデザインした方が早いことが分かり、そこからデジタル造形に手を出し始めました。その後、大学院の試験勉強があったので2〜3年やらない時期もありました。初めての粘土造形は、2018年のLAです。Simon Leeさんの週末ワークショップで、猫星人2人が犬星人を襲うという30分程度の制限時間で作った作品です。本格的に造形した最初の作品は片桐裕司さんのゼミで作った「キリン」だと思います。アナログで完成したときの達成感は最高でした。
■——出身校と、学生時代にはまっていたものを教えてください。
学生時代の大半は北京で過ごしていたのですが、中学生時代は試験以外学校に行きたくないと思っていたので、引きこもり問題児でした。引きこもっているときは日本のノベルゲーム(『CLANNAD』『STEINS;GATE』)から欧米のRPGゲーム(『GTAオンライン』『The Elder Scrolls V:Skyrim』マイクロソフトの『FABLE』シリーズ、『Dragon Age;Origins』『Mass Effect』)をたくさんやりました。長く遊べて異世界に旅した気分になれるゲームが好きでした。たまに自分でキャラクターを設定したり、ゲームエンジンを使って友人とゲームを作ったりもしました。来日後、東京大学の大学院で建築を学びました。建築を学ぶことは好きでしたが、その頃の私は、とにかく多くのアイデアを作品として現実に出したいと思っていたので、コンセプトアーティストを目指していました。
■——いつ頃から原型師を目指しましたか?また、本格的に造形した最初の作品を教えてください。
ZBrushをメインに、CGの作品を頻繁に作り始めた時です。そこから、クリエイター向けの作品投稿サイト「Artstation」に「Dragon Mermaid」(2019)が載ったことで商品化のお誘いをいただきました。画面にしかなかった作品が立体化した時はとても感動しました。以降、徐々に日本と上海のワンフェスで作品を発表し、2021年10月、初めて個人ディラーとしてワンフェスオンラインにも参加しました。イベントを通じて、ファンの方に自分の作品をお渡しすることが新しい作品を作るモチベーションになっています。
■——使っている粘土の種類、塗料の種類、愛用のツールなど教えてください
デジタルツールは、ZBrush ・Blender・Keyshot・Substance Painterを使っています。
制作アプリは、ProcreateとNomad Sculptがおすすめです。
■——落ち込んだ時に聞く音楽、もしくは見る映像は?
ラムシュタインの楽曲、『Famous Blue Raincoat』(レナード・コーエン)、『Duvet』(bôa)
映画は90年代のをよく観ます。
■——造形する時一番こだわられていることは?
“柔らかさ”です。アートの視点から見た“柔らかさ”は、
・自然であること
・流動していること
・調和がされていること
・生命力を感じることを
考えると思います。ですが、静止したポーズでも躍動感と生き生きした表情を出せれば、もっと面白いと思います。私は少し目を閉じるとか少し角度を捻るなど、微細な動きで見え方が大きく変わるディテールが好きなんです。
■——現在、メインでお仕事されているジャンルは?
ゲームや映画のコンセプトアートがメインで、ときには立体物の依頼も受けます。
■——今後の野望を教えてください。
今までの新作発表のペースを維持しつつ、SNSでいただいたコメントを参考に、これから作る作品を考えていきたいです。あとは複製のワークフローにもっと詳しくなって、キットの質を向上させたいです。それ以外の仕事はファッションや建築の分野で造形する機会を得ながら造形言語やスタイルを磨いて、どんなジャンル作品でも一目で「エンテイさんぽい!」と思ってもらえるようになりたいですね。
■——最近ハマっているものは?
Data
作業スペース

ワンフェス準備中はテーブルに置いています。普段は本棚にあります。
影響を受けた(大好きな)映画・漫画・アニメ
映画:『ジュラシック・ワールド』、『ファンタジア』(1940、ディズニー)、『海の上のピアニスト』
アニメ:『千年女優』
漫画:『GANTZ』、『The Metabarons』メビウス(ジャン・ジロー)さんの漫画
小説:『指輪物語』、『最果ての銀河船団』(ヴァーナー・ヴィンジ)、テッド・チャンさんの短編小説、基本ファンタジー小説、SF小説が好きです。
1日に造形する平均作業時間
お絵描きを含め6時間
おすすめの椅子、照明
【椅子】
ソファ
【照明】
暖色系の照明

































