どこよりも分かりやすい! 光と影を駆使したBlender演出術 ⑨―HDRIとフォグで「ゴールデンアワー」を演出しよう!―

風景やシーンを作っていて、こんなことを感じたことはありませんか?
「光は当たっているはずなのに、ドラマや空気感が出てこない」
「上手い人の風景の構造がわからない」
風景の「それっぽさ」を決めているのは、光そのものよりも「影の落ち方」や、「空気感」のコントロールにあります。光を強くしたり、HDRIを差し込むだけでは、平坦で単調な画面になりがちです。大切なのは、影を意図的に、ひとつの複雑なシーンとして「全体設計」することにあります。
今回は、ゴールデンアワーの作品を題材に、HDRI・スポット/エリアライト・フォグを組み合わせて、「影を操りながら作る風景」の演出術をご紹介します。
00. ゴールデンアワーとは
ゴールデンアワーとは、日の出直後と日没前のおよそ1時間、世界全体が金色の光に包まれる時間帯のことです。
なぜ金色になるのかというと、太陽が低い位置にあると、光が大気を通過する距離が長くなるからです。青い光(短波長)は途中で散乱されてしまい、赤〜オレンジの光(長波長)だけが地上に届くので、空と光が暖色に染まります。
この時間帯の特徴は、色だけではなく、太陽が低いため影が長く伸びます。また、光が横から差し込むことで、ものの立体感や質感がくっきりと浮かび上がります。
さらに空全体がオレンジに染まるため、直射光だけでなく間接光まで暖色になり、影も少しだけ暖色を帯びます。写真や映像、CGのライティングで「なんか美しいなぁ」と感じる画の多くは、この時間帯の光を再現したものだったりします。
01. サンライトで影の方向性を決める
まず考え方の話からです。私たちが「きれいな光だな」と感じている画面には、光が生む「影の形」に反応していることも多いです。正面からべたっと当たるサンライトは、影が隠れてしまい、のっぺりと平坦な絵になります。現状の作品だとこんな感じです。
反対に、光を低く・斜めから当てると、影が長く伸び、オブジェクトの凹凸を拾って、画面の情報量が一気に増えます。例えば、画面左から光を当てると、右側に影が出てくるので、影にメリハリがついてきます。中央の岩を見ると、よりシルエットがはっきりと出ていることが分かります。
さらに、光に色を付けることで、夕暮れ時のイメージを強調します。海や空の色に統一感がないので、違和感もありますが、まずはサンライトではっきりと影を印象付けることで、見せたい場所、影を際立たせたい部分を明確にすることができます。
02. HDRI でゴールデンアワーの空気をつくる
土台になるのがHDRI(全天球の環境マップ)です。夕暮れ・朝焼け系のHDRIをワールドに設定するだけで、空の色・全体の色温度・柔らかな回り込みの光が、ワンクリックで一気に決まります。HDRIだけだと、光がまんべんなく回るので、絵が中途半端になりがちです。そのため今回は夕暮れの時間帯で、かつ影がはっきりと出るような設計にしたかったので、 「指向性のある光」として、サンライトを使ったという形です。
HDRIの使用時のポイントは回転です。
ワールドのマッピングノードでZ回転を回し、太陽(いちばん明るい部分)を画面の低い位置・斜め方向に持ってくると、それだけで逆光ぎみの、ドラマのある構図になります。
色は、暖色(オレンジ〜ピンク)に寄せると、ゴールデンアワー特有の空気になります。
強すぎると白飛びするので、ワールドの強さは控えめから探るのがおすすめです。色を調整したい時は、シェーダーノードで、カラーを調整します。輝度コントラストやカラーランプ、色相明度彩度のノードを組み合わせます。
注意点としては、サンライトが指す方角と、HDRIの明るいところ(太陽が差し込んでいるであろう場所)がずれていると、絵として違和感が生じてしまいます。このように、背景から差し込む予定の太陽光が、真正面から差し込んでいると非現実的な絵になってしまいます。影が出来る方向と合わせてHDRIの回転も調整することが大切です。今回の場合は、背景からサンライトが差し込む形を想定しているので、カメラに向かってサンライトが向くように設定しています。
03. 影をわざと複雑にする
光をあえて低い角度=斜めから差し込ませると、影が長く伸び、地面の凹凸や岩にイイ感じの影が走ります。長く複雑に伸びた影が、画面にリアリティやドラマを生み出します。
影がまっすぐ足元に落ちる正面光は、情報量が少なく単調ですが、斜光の影は、輪郭が入り組み、明暗のリズムが生まれます。「影が単調だな」と思ったら、まずサンライトを回して、光が横から入るように調整してみてください。そして地味に効くのが、画面(レンダリング範囲外)には映らない位置に、木や枝をわざと置くことです。
オブジェクト自体は写らなくても、その影が手前や岩、地面に伸びてきます。こうすると、フレームの中はすっきりしているのに、落ちてくる影は複雑という説得力のある画面になります。今回も、前景を縁取る枝葉はフレームの外まで広げて配置し、画面全体に落ちる影を意図的に複雑にしています。
05. フォグ(ボリューム)で光を見えるようにする
ゴールデンアワーの霞は、ボリュメトリック(フォグ)で作ります。ワールドやドメインにVolume Scatterを薄く入れると、空気中に光が散乱し、逆光の光の筋(ゴッドレイ)や、奥に向かうほど霞む空気遠近が生まれます。
また、フォグは逆光と組み合わせると効果が跳ね上がります。太陽側から差すスポットの光がフォグに散乱して、立体的な光の柱になります。ここはコンポジットノードと組み合わせることで、比較的表現しやすい分野です。こちらがコンポジットノードの全体像です。
特に、グレアを複数掛け合わせることで、より逆光のシーンを柔らかく作ることができます。サンビームによる光の差し込みとブルーム、ゴーストによる柔らかいボケた光の拡散を上手く使っていきます。
さらに、フィルターを使って、ボケとシャープさを組み合わせていきます。FinalLUTは、有料アドオンですが、ルックを整えるのに便利です。
06. 構図=手前→中央→奥の視線誘導
最後に構図についての考え方です。今回の絵は、三層構造で視線を誘導しています。
前景は、手前に暗い植物のシルエットを置いてフレーミングしています。画面を縁取りながらも、奥行きをつくるために、効果的な前景を配置することで、画面に変化を持たせています。
中景は、中央に目を引く主役オブジェクト(今回は、一本の木)を配置しています。さらに、この中央の木に向かって、視線が自然と中央に集まるような視線誘導、周辺の木や岩の配置を心掛けています。そして、木を中心に光が拡散している風景を出すために、遠景を使います。
遠景では、霞んだ空へ視線が抜けていくように、フォグを使って、奥行き感を演出しています。
前景を少し暗めにしながら、中央を明るくし、奥を霞ませるという、明暗のリレーのような構成を組みながら、視線は自然に手前から奥へと流れていくような、そんな構図です。植物のシルエットは、影を複雑にするので、重宝します。
Before / Afterはこちらです。
いかがでしたでしょうか?
「なんとなくオレンジっぽくすれば夕方でしょ」という曖昧な理解だと、説得力のあるライティングになりづらいです。
例えば、昼と夕方のライティングの違いは、単に色温度が変わるだけではなく、太陽の角度、影の長さ、空の色、間接光の色味、コントラストの強さなど、複数のパラメータが同時に変化して表現されます。
これらをコントロールしながら、絵として魅力的なものに仕上げるために、光を強くするのではなく、「影を設計する」という視点に切り替えると、風景はドラマチックになると思います。ぜひ、この機会に作品作りで試してみてくださいね。
他にも、noteではBlenderについて学習した独学の記録をたくさん残しています。
こちらもぜひ合わせてお読みください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、次回の記事でお会いしましょう!
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