第3回「スカルプターズ・ラボ」造形コンペ選考会審査員対談【後編】 竹谷隆之×大山竜×塚田貴士×大畠雅人×Entei Ryu×Yoshi.

第3回「スカルプターズ・ラボ」造形コンペ選考会対談では、前後編にわけて惜しくも受賞には至らなかった作品の一部を対談形式でご紹介します。審査員の熱のあるコメントをぜひお楽しみください!
第3回「スカルプターズ・ラボ」造形コンペ 審査員対談(後編)
【No.84】チャーリー リン「Stargazer」
Yoshi.(以下、ヨシ):物語の冒頭感ありますね。レンダリングもうまい。
大畠雅人(以下、大畠):まとまってて上手だなと思います。豚のお面を被ってる犬?……あ、お面じゃないんだ。
ヨシ:目は羊とか山羊の瞳孔横になっている。羊なのかな。「宇宙の子供」と作品解説に書いてあるので宇宙人ですかね。これもよくできてます。
大畠:デフォルメのバランスがいいなって。
大山竜(以下、大山):僕は『宇宙船サジタリウス』みたいだなって思いました。
大畠:手足がデカくて胴体が小さいけど、シワのリアルさがこのくらいのデフォルメにあってる。整理もされてるけど、リアルさも残してて上手だなぁと。
大山:こういう感じの椅子をデザインしてって言われたら、めっちゃ難しいと思う。
竹谷隆之(以下、竹谷):まとめ方がうまいですね。このキャラの体型に合った椅子じゃないのかな。ちょっと大きいと思う。
大山:ほんまや!
竹谷:いいですね、大きい種族のところに来て……撃ち殺したのか、これからなのか。ストーリーがあるのかな、と。
ヨシ:宇宙船の整備士っぽいですよね。装備とか見ると。これ一枚目だけ星空にしてるんですよね。世界観の構築にすごい効果的です。さりげない演出です。
大畠:確かに。いろんな大きさのキャラクターが乗ってる宇宙船とか。
大山:自分が座る側ならここに土足で立たないですもんね。これ絶対なんかのプロの人ですよね。
大畠:プロでしょうね(笑)。
【No.85】野々下 和貴「流涙草」
竹谷:なんか異様なオーラが…(笑)うわぁ~。
ヨシ:耳がついてる……。
竹谷:これはレンダリング作品ですね。Nomad Sculptで作られたみたいです。
大畠:顔面が鼻になってて、ベロがあって、みたいな。作品解説によると「異界に咲く五感を有する植物」らしいです。真ん中のお花が耳になってる。
ヨシ:聴覚と触覚ってことか。
大畠:「視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚を駆使して獲物を捕食し、その血液を体全体に巡らせることで生命活動を維持する」。
竹谷:作者の方がいい人だといいなぁ(笑)。
スカルプターズ・ラボ編集部(以下、編):「背側の瞳から流れ落ちる雫は不治の病さえ治す万能薬とされ、多くの者が獲得に挑むが、その殆どは流涙草の餌食となる」とあります。
ヨシ:食後っぽいですもんね。
【No.54】SANDORA「King Of The Osean」
塚田貴士(以下、塚田):ちょっと拙いディテールですが、決め打ちっぽいシルエットが決まっていて、このシルエットで「おっ」と思います。印象は古代壁画のバケモノや中国の妖怪のようなみたいな感じかなと思ったら、解説がそういう感ではなくてイメージとは違ったんですけど。
竹谷:ヘリコプリオンっていうサメの口に似ていますね。
塚田:「ワニや龍、ヘリコプリオンを合わせたキメラ」だそうです。歯の付け方とか、ディテールの拙さが気にならないくらい面白さがあるなと。手原型なんですかね?
大畠:やりたいことが明確ですよね。牙をいっぱい付けたいのかなって。
竹谷:楽しくなっちゃうからね、どんどん。
大畠:背中にいっぱい目もある。
大山:牙の付け方、下のほうがくるくる巻いてるじゃないですか。巻いてるラインに合わせてバランスよく綺麗に流れていってるのはうまいですよね。
塚田:徐々に短くとかじゃなくて長い短い、長い長い、とかいいですね。この全体のセンスのまま、ディテールの技術が上がっていったらすごそう。
大山:手足がいっぱい生えてるあたり僕はすごい好きです。
竹谷:足がいっぱい生えてるから、動いてる途中感みたいなものも出てますよね。
大畠:泳いでるっぽくも見えます。
塚田:見えますね、浮いてる感。
大山:でも体に顔があるのはなぜだろう(笑)。
塚田:一応やっぱり生物的というか妖怪というかね。
大山:僕はこのシリーズを続けてほしいな。
【No.53】手のひら万博「蟲」
大畠:手のひら万博さん。「虫唾の走る様な不快さを、纏わりつく女性の衣服で表現致しました」。この人いいよなぁ。
竹谷:常連の!ついにレリーフから抜け出して。
Entei Ryu(以下、エンテイ):レディ・ガガさんの昔の生肉のドレスを思い出します。
ヨシ:アナログで作られてる?めちゃくちゃうまい。
大畠:やっぱり持ってくる世界観が毎回唯一無二ですね。
竹谷:この人、文章も毎回いいですよね。「男はみな蟲で…そんな事を考える」。男性なんですよね。男性だけど女性の立場からの男性嫌悪。
ヨシ:めっちゃ嫌なことあったんですかね。
大畠:毎回死とエロがテーマですよね、この人。
ヨシ:確かに「手のひら万博」という名前と画像を開いた時のギャップにやられました。
大畠:この人の文章が好きで、もらった詩集を結構読み返してます。
竹谷:独り言的なやつが完成度高いですよね。この人、ちゃんと作品溜まったら個展ができる人ですよね。
大畠:できるできる。
ヨシ:文章から考えて着想を得てるんでしょうか、ストーリーを作って。
エンテイ:説明がなくても見るだけで何を表現したいか想像が広まりますね。眉毛がないとか、血を流してるとか。
竹谷:この表情とポーズを選ぶっていうのもこの人らしい。
大畠:他にない世界だから一発でわかるのすごい。世界観を貫いているし、誰に言われなくても俺はずっとこれをやる、というのがわかるから生き様なんだなと。素晴らしいですね。
竹谷:迷ってないですもんね。これでいいのかな?じゃなくて。
大畠:毎回2、3作品出してくれますね。映画を撮ってほしいな。
エンテイ:シンプルで落ち着いてるのは好きですね。最近はCGとかも増えてるから無限にディテールが入れられるけど、逆に表現したいものが見えづらくなってる印象です。
【No.50】レオパ「Avarice」
ヨシ:触れるか触れないかすごい迷ったんですけど、すごい気になった作品。見たことがない、独特なもの持ってる。この見た目で「レオパ」という小さくてかわいいトカゲがモチーフなのがすごいなって。どっちなんだろうという性別感とかも含めて。
竹谷:ちゃんと完成させてますもんね。
塚田:外側の体が男性かなって思いますけど、体の中に女性モチーフがありそうな。
大畠:説明に「彼女」ってあるんで女性なのかな。
ヨシ:嫌悪感と綺麗さとっていうところが、あんまりみたことないなって思ってました。
竹谷:実在感とかのほうにいってないから、もうちょっと絵画的でもいいのかなとも思いますね。物体としてぽこんとひとつ存在させるというよりかは、もっと自由に絵画として考えてもいいのかなと思う。
大畠:目線がちょっと横にズレてるのかな。
竹谷:正面は見てないですね。
大畠:ちょっと恥ずかしがってるように見えるというか、正面を向いてないのが違和感ですよね。目線外すんだと思って。このシンメトリー構図でど真ん中から開いて取り込むみたいなメッセージだったら、正面を向いてたほうがコンセプトに合いそうな気がするけど、ちょっとずらしてますよね。
ヨシ:アンニュイな表情をしてますね。
大山:解説に「魅了された獲物は疑うことなく自ら近づき、逃げることもできずに彼女の元へと歩み寄ってしまいます」を書いてあって、誘惑して取り込むみたいなことでもあるわけですよね。「ウツボカズラや蛇のような取りこんで丸呑みするような生物で『包み込みたい』『取りこみたい』という意識の意味を表現した」と書いてます。
大畠:6本の腕でホールドするのかな。
大山:そういう意味で足ではなく手なのかなと思いましたね。その気持ちをひとつの生物で表すならこうであるっていうことを、まず造形でやろうとしたことがすごいです。
大畠:近づいていったらこの1番大きい下の手で足をバッと掴まれて、動けなくなって頭から飲み込まれちゃうみたいな。
大山:いや、頭は最後かもしれない。
(一同笑い)
大山:上の手でガッと掴んで目を見たまま飲み込んでいくかも。
ヨシ:凶暴な手とかじゃなくてまぁまぁ手入れされた綺麗な手なのが怖いなとおもいます。
大畠:モチーフに蛇も入っているから、この長いところを消化されて通っていくんだろうね。
ヨシ:「これでいくぜ」っていう思い切りの良さが。
大畠:確かに。竹谷さんもおっしゃいましたが、完成させたのがすごい。そこまでエネルギーが持続したってことだから。
大山:塚田くんと違うタイプの人外だなと思って。
塚田:僕はあまり、人体パーツを使って構成しないかな。この作品は全部人間の肌みたいな。
大山:こっちのタイプは少数派な気がする。
大畠:性器をモチーフにして造形する人はいっぱいいますが、カラーリングを人の肌と生の内臓の色にする人は少ない気がする。そのまんまになっちゃうから。
ヨシ:初めてエアブラシを使用したそうですが、うますぎだろと思いますね。
大畠:確かに(笑)。色がうますぎますね。
大山:この人の2作目3作目がすごく気になる。
竹谷:どんどん闇度を上げてってほしいですね。
【No.11】CaPas「Themis」
大山:レンダリング作品ですよね。こんなライティングとかできるんですね。
大畠:クオリティが高いです。プロの人なのかな。
大山:大理石とゴールドをイメージしてるってことですかね。
エンテイ:BlenderとかKeyShotを使っているかもしれないですね。
ヨシ:マテリアル当てですね。出力しようと思ったらできるのかな。
大畠:できそうですけどね。
塚田:布にわざわざ沿わせてる。花とか花の横の翼はなかなか複製とはいかないですね。
大畠:テーマが「裁きの女神テミス」だったり、大理石風にして昔のルネサンス期の彫刻をちょっとアニメっぽくしてるみたい。
【No.6】CaPas「Lacrithal」
大畠:構図はナポレオンですね。
塚田:これもすごい作り込んでますね。
大畠:好きなものがわかる。西洋の古典をアニメにしたい、みたいな。
ヨシ:好きなものがわかりやすいですよね。潔いなっていう。本当にシミュレーションでベースでやられてる。リアルに布になってますよね、厚みとかが。
大畠:レダリングについては、Yoshi.さんどうでしょう?
ヨシ:視線誘導があんまりないのでズームしないと、全部同じ反射に見えてしまうのがもったいない気はします。絵画的な雰囲気の作品なので、ライティングも絵画っぽいバロック様式みたいな暗い背景にライトをポイントしぼって焚いてドラマチックにするといいのかなって。好みもあるんですけど、絵画的な感じだと、そういうドラマチックな演出がより合うんじゃないかなと個人的に思います。
塚田:確かによく見たらすごい作り込んでるし、目で追うかっこよさも拾えそうだけど、ちょっとサッと見ちゃうっていう印象になってます。
大畠:見どころを絞ったほうが良いという感じなんですかね。
ヨシ:視線誘導とか。でもハイパー技量は高いんだろうなって感じがしますね。
塚田:出力してサフ吹きとかだけでも「おお!」って思いそうな造形ではある。
大山:そうそう、髪の毛もいい感じに当たらないように入ってるし。こういうキャラクターがアニメや漫画にいてて、その作品がすごく好きで、そこに描かれてないシーンとかを思い出して「うわぁ、ほしい!」となるのがフィギュアだと思うんですよね。今まで見てきてこれ面白いよね、と言っていた作品ってまず「よくこれを作ろうと思ったな」とかそういう部分の話が多かった。だからこういう作品ってすごく特殊な癖みたいなものがあったほうが目を引くのかなと実感しましたね。
第3回「スカルプターズ・ラボ」造形コンペ公開講評オンライン開催決定!
2月27日(金)20時より、第3回スカルプターズ・ラボ造形コンペ応募作品の中から事前に募集した10作品+大賞作品を対象に、審査員の竹谷隆之さん、大山竜さん、塚田貴士さん、大畠雅人さん、Entei Ryuさん、Yoshi.さんが公開講評を行います!講評の様子はYouTubeにて無料配信いたしますので、ぜひご覧ください!
【日時】
2026年2月27日(金)20:00〜22:00
【配信URL】
https://youtube.com/live/ZPOdCZXtyOI?feature=share
【参加審査員】
竹谷隆之、大山竜、塚田貴士、大畠雅人、Entei Ryu、Yoshi.
審査員プロフィール
竹谷隆之
造形家。1963年12月10日生まれ、北海道出身。阿佐ヶ谷美術専門学校卒業。映像、ゲーム、トイ関連でキャラクターデザイン、アレンジ、造形を手掛ける。主な出版物は、『漁師の角度・完全増補改訂版』(講談社)、『造形のためのデザインとアレンジ 竹谷隆之精密デザイン画集』(グラフィック社)、『ROIDMUDE 竹谷隆之仮面ライダードライブ デザインワークス』『漁師で猟師の家に生まれましたが、継げませんでした。』(ホビージャパン)、『竹谷隆之 畏怖の造形』(玄光社)、『腐海創造 ー写真で見る造形プロセスー』(徳間書店)など。
大山竜
1977年1月22日生まれ。中学1年の時に映画『ゴジラvs ビオランテ』に衝撃を受け、粘土造形を開始する。雑誌『ホビージャパン』にて竹谷隆之氏の作品に出会い自由かつ個性あふれる造形に魅了され原型師の世界に憧れを抱く。その後「立体造形は趣味として続け、本業としては絵描きになりたい」と思うようになり、美術系高校に進学。周囲の同級生に絵が上手い人がたくさんいることを知り、絵の道を諦め、造形科のある美術系短大に進学するも中退。その後の21歳の時にガレージキット原型師としてデビュー、版権キャラクター、オリジナルデザイン等幅広いジャンルのモチーフを造形し続け、今年で原型師歴28年目 となる。最近はゲームのクリーチャーデザインなどジャンルを問わず幅広く活動中。
塚田貴士
1983年生まれ、京都府出身。専門学校在学中、チョコエッグがきっかけでフィギュアに興味を持つ。卒業後、玩具製造会社を経てGILLGILLに造形作家として所属。ジャンルを問わない作風で、数多くの商業原型を担当しながらイベント出展用の作品も精力的に発表している。代表作に「寺田克也版妖鳥シレーヌ」、「sheep版赤い蝋燭と人魚」など。2024年6月に玄光社より『MONSTRUM塚田貴士造形集+ZBrush入門テクニック』を出版。
大畠雅人
1985年生まれ、千葉県出身。武蔵野美術大学油画科版画コース卒業。株 式会社エムアイシーを経て、現在はフリーランス原型師として活躍中。 2015年にワンダーフェスティバルで初のオリジナル造形「contagion girl」を発表以降、オリジナル造形作品が人気を集め、2018年に初作品 集『大畠雅人作品集 ZBrush+造形テクニック』(玄光社)、2024年2月には2冊目の作品集『STRING 大畠雅人アートワークス・造形テクニック』(ボーンデジタル)を出版。近年の仕事に、NHK『おかあさんといっしょ』 人形劇「ファンターネ!」のキャラクターデザイン等。
Entei Ryu
1993年生まれ、コンセプトアーティスト、デジタル造形作家。東京大学で建築を専攻し、卒業後はゲーム・映画のコンセプトアートを中心に活動。彫刻、イラストレーション、ファッションデザインにも携わっている。2021年からワンダーフェスティバルへの出展を始めた。2025年8月、『MERCURY Entei Ryu造形作品集』(玄光社)を発行。
Yoshi.
ゲーム会社を退職後、フリーの造形作家、キャラクターデザイナーとして活動。『紡ギ箱』という自身のコンテンツを個人、商業ともに展開しており、2025年には『紡ギ箱』をゲーム化した「IZON.」が発売された。アニメ『コードギアス 星追いのアスパル』にアガルマータデザインとして参加。















