第3回「スカルプターズ・ラボ」造形コンペ選考会審査員対談【前編】 竹谷隆之×大山竜×塚田貴士×大畠雅人×Entei Ryu×Yoshi.

第3回「スカルプターズ・ラボ」造形コンペ選考会対談では、前後編にわけて惜しくも受賞には至らなかった作品の一部を対談形式でご紹介します。審査員の熱のあるコメントをぜひお楽しみください!
第3回「スカルプターズ・ラボ」造形コンペ 審査員対談(前編)
【No.98】あきかン「王の再従兄」
大畠雅人(以下、大畠):かっこいい。以前に公開講評に参加された方だと思います。
大山竜(以下、大山):1番前の人は首がないですよね。足の角度からして、海老反りになって、肋骨がバッと開いている。
大畠:「王の復讐のために死体と合体して牢屋から出てきた」みたいな。
Yoshi.(以下、ヨシ):第二形態のような。
竹谷隆之(以下、竹谷):ブロンズでできていてもおかしくないですよね。ロダンっぽい、というところでわざと止めている感じもします。
ヨシ:確かに。粘土のラフ造形っぽい感じもあります。
大畠:こういう反射するマテリアルは、形状が見づらいかなと思うんですが……みなさんどうですか?
大山:見づらいから格好良く見えるので、僕は自信がない時に使います(笑)。アナログでも写真を撮って見せるとき、ライティングでディテールを強調したりするから、「最終的にはこんな感じになる予定なんです」っていうことじゃないのかな……大畠さんはやっぱりなるべく見やすいようにしますか?
大畠:デザインの雰囲気はわかりますが、よく見ようとすると見づらいのが残念で。雰囲気とデザインとコンセプトで勝負って感じなのかな。
大山:もしかしたら本当は色まで塗りたかったのかもしれないですね。もしくはブロンズ風に仕上げたかったとか。
大畠:それはわかります。最終的なイメージがこういう感じなのかもしれないですね。
スカルプターズ・ラボ編集部(以下、編):ちなみにあきかンさんが1番最初に公開講評に参加してくださった時は、粘土造形で参加してくれました。その後にデジタルに移行されて。
竹谷:すごい上達してますね。
大山:素晴らしいです、いずれ賞をとってほしいですね。
【No.41】LUTIDEI「The Monster」
大畠:うまい。
ヨシ:うま!
竹谷:うまいですね。
大畠:ズボンの質感が……Substance 3D Painterでこういうストライプが塗れるんですね。
竹谷:カエルが好きなんですね、きっと。だから可愛く作ってますね。カエルとのリレーションシップってフランケンシュタインの設定にありましたっけ?
大山:特になかったと思います。小さき命というものを強く意識してる、ということなんでしょう。
編:作品解説には「カエルのようなとても素朴で無垢な生き物と出会ったときに、偏見を持たれずに見つめられる姿を表現しました」とあります。
大山:「みんな自分を恐れてたのに、こいつだけは恐れない」という。
大畠:ストーリーに必要な大事なところが上半身に集約しているから、トルソーでも成立するじゃないですか。でも全身を作っていて、足元にあえて段差を作って片足を上げる演出を入れることで、下半身がおざなりになってない。上半身と同じくらい見応えがある。バランス感覚がすごいなと思いますね。
大山:あとおしゃれですよね、色づかいとか。
竹谷:フランケンシュタインの表情がいいですね。どこまでもリアルというよりは、少し漫画っぽさというか、そういうのを入れて逆にリアルにしてますね。
大山:髪の毛も3DCGっぽくリアルにできるのに、出力したフィギュアに塗ったような質感になっていて。
大畠:台座の収め方とかを見ると、ガレージキット愛がある感じですね。
大山:平らな板に乗ってないところがすごく良いです。盆栽っぽさもある。うまいのを見れば見るほど……なんで出力しなかったんだろうと思います。
大畠:確かに。出力した作品を見たいですね。
Entei Ryu(以下、エンテイ):ライティングと撮影環境がしっかりしている作品も、ポイントが高いですね。
【No.87】もしゅ「にゃんかっぷ」
ヨシ:唯一のプロダクトデザイン。
竹谷:センスいいですよね、ちゃんと足の裏まで塗られて。
大畠:これほしいです、ガジュマルとか育てたいな……。
竹谷:肉球に色が塗ってあるんですよね。どうやって焼いたんだろう。
ヨシ:反対に向けて焼いたんですかね。
エンテイ:見えないところのディテールにこだわるのはいいですね。みんながよく使う1番かわいい頭の部分をあえて捨てて……。
大畠:それ思いました。猫をモチーフにしたら絶対耳を入れたいはずなのに、そこ全部取っ払って「猫」って言い張るところがすごいなと。
エンテイ:赤いジュース入れたくなる。
(一同笑い)
竹谷:植物を育てて、その形によって頭になるとか。
大山:青で猫だと、ドラえもん……っていうのは考えすぎなのかな(笑)。
竹谷:あまり猫っぽくはないんですよね。尻尾が猫というだけで。
エンテイ:足も長いし。お尻も……(笑)。
ヨシ:むちっとね。気合い入ってますね、このカット。
大畠:お尻が作りたかったんじゃないかな?
【No.67】曽根宏暢「獅子顕舞」
大畠:あぁ~クオリティ高いですね。名前がちょっと、少年漫画の必殺技の具現化みたいな感じに見えなくもない(笑)。
塚田貴士(以下、塚田):ぱっと見、暗くて見えにくいと思ったんですが、細部を見たらめちゃくちゃ作り込まれてるし、どの写真も構成がかっこいいなぁと。
ヨシ:かっこいいけど、やっぱり黒バックじゃないほうがいいのかなぁ。めちゃくちゃシックにまとめたかったんですかね。
竹谷:シチューションとしては動きのある、勢いのある空間構成だから、そんなにシックにしなくてもいい気がします。
大山:獅子舞ってことはこれは作り物ということなんですよね。人が操ってる奥行きとかそういうことでしょう?そのへんはイメージなんですかね。
ヨシ:獅子の中にはパッと見、人はいなさそうですね。
大山:獅子の下にいる人が担いで、ぐわーっと動かしてるみたいな感じですかね。
大畠:中国の龍舞みたいなイメージなのかな?
大山:すごくセンスがいいですね。どの角度から見ても破綻してないのがすごいです。全部ベストアングル。
大畠:このヒラヒラした布のバランスと動きが全部邪魔になっていなくて。すごいバランス感覚、三次元的な感覚があります。
ヨシ:多分台座の岩も「くるくる回してみてね」じゃないですけど、視線誘導的にもぐるぐるとうねるような感じになってますね。かっこいい。
大畠:確かに上から見たら反時計回りに回ってますね。上からの写真もほしかった。この台座、おしゃれですよね。概念っぽいけど良いです。動きがとにかくすごい。顔をあえて隠してるみたいな感じ。
大山:獅子の顔を見てほしいということですよね。
大畠:そんな感じですよね。邪魔せず、こっちに目がいかないようにあえてしてる感じ。
大山:ライオンの目線が上を向いていてかっこいいんですよ。正面から見たらすごい三白眼なんだろうなという。
エンテイ:デフォルメされた顔ですね。存在感が全部黒で、でもライティングもちゃんとシルエット出して。
大山:よく見たら口がカパカパ動きそうな感じがしませんか?
大畠:下顎で分割してる感じですね。
大山:それが「獅子舞感」なのかもしれないですね。下顎のところに手を添えているから、これで動かしてるのかもしれない。
大畠:本当だ。マリオネットラインがありますね。
塚田:実物が見たいですね。見れば見るほどいいところがあるので。
大山:そう言ったら……出力してくれないかな(笑)。獅子舞だったら差し色に金とかほしかったですね。
塚田:カラーリングとかちょっと見せ方を工夫すれば受賞していたのではと思います。
【No.97】月野 遼「怪人87号 [蟷螂女]」
竹谷:これを可愛いって言って良いのかわかりませんが……まあでも、デフォルメ=かわいいと認識しているので。
大畠:いや、かわいいと思います。
竹谷:なかなかこう、まとめるセンスが良いと思います。
塚田:良いデフォルメのバランスですよね。SDすぎず、リアルすぎず子どもっぽくも見えるし。でもしっかり倒しているんでしょうね。かっこいいです。
竹谷:あと多分、カマキリの触覚の「気持ち悪いけど自分はかっこいいと思ってるんだよね」っていうのがちゃんと伝わってくる。
大畠:(モチーフになったニセハナマオウカマキリは)お花みたいな虫ですか?
大山:それはハナカマキリ。それよりもっと派手でエグい奴です。
竹谷:あのへんの種類ですよね。
大山:これは出力してるんですかね?この腕のあたりの白い水玉みたいな模様がすごくいいですね。
ヨシ:結構ポップな感じにもなってて。
大山:この足元にいるやつはギンヤンマとかそのあたりのトンボなのかな。指の表現がすごくいいですね。
竹谷:ちゃんと指先まで緊張感がある。
大山:そこに目がいく色を乗せてるっていうのは、ちゃんと「ここを見てほしい」っていう意思が伝わります。
エンテイ:正面から見てもかわいいですね。動物みたい。
大山:竹谷さんってこういう等身のキャラクターを作ったことはないですよね?
竹谷:作ったことはないですが、仕事でそういうデフォルメはやったことがありますね。
大山:作りたい!みたいなのはありますか?
竹谷:ないかなぁ。
大山:だけどこれをみて「かわいいな」って思ったんですね。
竹谷:やっぱり僕が持ってないセンスというか、引き出しなのですごく魅力的に見える。昆虫の魅力の出し方とかもすごい。不思議な色づかいだし……。
【No.22】菊地原 裕基「禅の極致〜The Ultimate State of Zen〜」
大畠:禅の極地。ミイラになってるのかな。
塚田:即身仏的な。
竹谷:この作品は出力していますね。
ヨシ:リアルタッチめだけど様式的な形なのがすごく珍しいです。横から見ても結構装飾的な感じだけど、造形はリアルめ。本当に儀式っぽい感じなのかなって思いました。
竹谷:このデッサンもわざとなのか、様式っぽいというか鋳造物っぽい作法にしてるのかな。今まで通ってきた道が見えづらいというのも一つの魅力になりますよね。「こっち通ってきたのね」というのがあんまりわかっちゃうと……。
大畠:確かに、子供の時に何が好きだったのかとかミニ四駆やってた人なのかなとかが全然わからない。
竹谷:遠い感じが魅力に変換されてますね。両側から龍が来てるけど、別にハートに見せたいっていうわけではない?
塚田:手の形と対になってるとか?
大畠:これだけ龍が真横にいても気にしません、ということなのかもしれませんね。
(一同笑い)
エンテイ:仏教の修羅場とかのお話しをしているのかも、ハートだからそういう意味あるかも(笑)。
ヨシ:阿吽の呼吸とかなんですかね。口閉じと口開きで。熱意高く最後まで作りきってる感じがすごいですね。
竹谷:流してるところがないですよね。ちまちまちま……と全部やってる。
大山:逆にこれはよくこの色で統一するのを我慢できたなと思っていて。
大畠:彩度を落としているけど、結構色は使っていますね。
エンテイ:龍の部分も綺麗ですね。両方違うデザインも入ってますし。
ヨシ:龍以外の色を無機質な感じにしちゃって、視線的にはやっぱ龍を見てほしいのかな。最初(龍が)生えてきてるのかなと思ったら別だったので、視線的には龍を見るよう意図してるんでしょうね。面白いです。
【No.23】Jack Shen「魇」
ヨシ:顔が3つついてるんですね。最初は阿修羅かなと思いましたが、腕は二対なんですよ。
竹谷:骨のつき方が独特で面白い。これもありだなと思って。仕事だと顔が3つある場合、もうちょっとわかりやすくしようよ、と言われそうですけどこの作品はすごく好きでやってるのが伝わってくる。
大畠:色が1番印象的でしたね。柔らかそうな。
ヨシ:孵化したてみたいな。
大山:これもしかしたら真横の写真が1番かっこいいのかもしれない。ないのがもったいないですね。
大畠:羽が前に行ってる感じとかもかっこいい。
ヨシ:大きさ30センチなんですね、すごい! 6分の1くらい。迫力ありそうですね
【No.20】KEN「Arachne」
ヨシ:女の子なんですね。めっちゃ作りこまれてますね。
竹谷:あんまり女性型っぽくないですね。
ヨシ:お腹に光るものを入れたくなる気持ちはすごくわかる。
大畠:どういう気持ちなんですか、それは(笑)?
ヨシ:変身ベルト的な感じで……多分胸のコアと悩んで「どっちも入れたれ!」っていう感じなのかな。
大畠:その視点は僕になかったです、そうなんだ!
ヨシ:やっぱりお腹が光って変身みたいな、いや僕のただの想像ですけど(笑)。全然違うかもしれないですが、かっこいいです。甲殻類っぽさもありますね。
竹谷:触覚は蜘蛛っぽくないですけどね
大山:蜘蛛=足が8本っていう情報って必要だから、顔に足8本付けたれってことでしょう?これ結構すごいですよ。うわーこれ俺やりたかった!と思ったんですよ(笑)。
竹谷:足も手だとすると5対なんですよね。だから4対にして欲しかった気もします(笑)。
大山:あとこの触覚は絶対に蜘蛛じゃない(笑)。
大畠:さすが虫博士。脇のところにも足がありますね。
竹谷:じゃあ6対なんだ(笑)。もっと忠実にしておいたほうがいい気がしますが……。
大山:竹谷さんは見ますもんね、そのへんをちゃんと(笑)。蜘蛛をモチーフにしてるけど、「人と蟲の間に生まれた」と解説に書いてるから、特定の蜘蛛ではないようですね。だからこの2本の触覚をわざと入れてるんですかね。
竹谷:蜘蛛じゃなくて怪獣とか蜘蛛の合成だったら……でもうまいですね、やっぱり。
エンテイ:下の木の部分も影に隠れてるけど、ちゃんとサポートできるように作ってますね。
大畠:木のセンスって結構あると思うんですが、この方は木のセンスがすごい。
竹谷:自然な感じですね。
第3回「スカルプターズ・ラボ」造形コンペ公開講評オンライン開催決定!
2月27日(金)20時より、第3回スカルプターズ・ラボ造形コンペ応募作品の中から事前に募集した10作品+大賞作品を対象に、審査員の竹谷隆之さん、大山竜さん、塚田貴士さん、大畠雅人さん、Entei Ryuさん、Yoshi.さんが公開講評を行います!講評の様子はYouTubeにて無料配信いたしますので、ぜひご覧ください!
【日時】
2026年2月27日(金)20:00〜22:00
【配信URL】
https://youtube.com/live/ZPOdCZXtyOI?feature=share
【参加審査員】
竹谷隆之、大山竜、塚田貴士、大畠雅人、Entei Ryu、Yoshi.
審査員プロフィール
竹谷隆之
造形家。1963年12月10日生まれ、北海道出身。阿佐ヶ谷美術専門学校卒業。映像、ゲーム、トイ関連でキャラクターデザイン、アレンジ、造形を手掛ける。主な出版物は、『漁師の角度・完全増補改訂版』(講談社)、『造形のためのデザインとアレンジ 竹谷隆之精密デザイン画集』(グラフィック社)、『ROIDMUDE 竹谷隆之仮面ライダードライブ デザインワークス』『漁師で猟師の家に生まれましたが、継げませんでした。』(ホビージャパン)、『竹谷隆之 畏怖の造形』(玄光社)、『腐海創造 ー写真で見る造形プロセスー』(徳間書店)など。
大山竜
1977年1月22日生まれ。中学1年の時に映画『ゴジラvs ビオランテ』に衝撃を受け、粘土造形を開始する。雑誌『ホビージャパン』にて竹谷隆之氏の作品に出会い自由かつ個性あふれる造形に魅了され原型師の世界に憧れを抱く。その後「立体造形は趣味として続け、本業としては絵描きになりたい」と思うようになり、美術系高校に進学。周囲の同級生に絵が上手い人がたくさんいることを知り、絵の道を諦め、造形科のある美術系短大に進学するも中退。その後の21歳の時にガレージキット原型師としてデビュー、版権キャラクター、オリジナルデザイン等幅広いジャンルのモチーフを造形し続け、今年で原型師歴28年目 となる。最近はゲームのクリーチャーデザインなどジャンルを問わず幅広く活動中。
塚田貴士
1983年生まれ、京都府出身。専門学校在学中、チョコエッグがきっかけでフィギュアに興味を持つ。卒業後、玩具製造会社を経てGILLGILLに造形作家として所属。ジャンルを問わない作風で、数多くの商業原型を担当しながらイベント出展用の作品も精力的に発表している。代表作に「寺田克也版妖鳥シレーヌ」、「sheep版赤い蝋燭と人魚」など。2024年6月に玄光社より『MONSTRUM塚田貴士造形集+ZBrush入門テクニック』を出版。
大畠雅人
1985年生まれ、千葉県出身。武蔵野美術大学油画科版画コース卒業。株 式会社エムアイシーを経て、現在はフリーランス原型師として活躍中。 2015年にワンダーフェスティバルで初のオリジナル造形「contagion girl」を発表以降、オリジナル造形作品が人気を集め、2018年に初作品 集『大畠雅人作品集 ZBrush+造形テクニック』(玄光社)、2024年2月には2冊目の作品集『STRING 大畠雅人アートワークス・造形テクニック』(ボーンデジタル)を出版。近年の仕事に、NHK『おかあさんといっしょ』 人形劇「ファンターネ!」のキャラクターデザイン等。
Entei Ryu
1993年生まれ、コンセプトアーティスト、デジタル造形作家。東京大学で建築を専攻し、卒業後はゲーム・映画のコンセプトアートを中心に活動。彫刻、イラストレーション、ファッションデザインにも携わっている。2021年からワンダーフェスティバルへの出展を始めた。2025年8月、『MERCURY Entei Ryu造形作品集』(玄光社)を発行。
Yoshi.
ゲーム会社を退職後、フリーの造形作家、キャラクターデザイナーとして活動。『紡ギ箱』という自身のコンテンツを個人、商業ともに展開しており、2025年には『紡ギ箱』をゲーム化した「IZON.」が発売された。アニメ『コードギアス 星追いのアスパル』にアガルマータデザインとして参加。

















