『クライマキナ/CRYMACHINA』エネミーデザインを手がけた、造形作家・Yoshi.インタビュー!

2023年7月27日にリリース開始された『クライマキナ/CRYMACHINA』。今回、エネミーデザインを手がけられた造形作家・Yoshi.さんにキャラクターデザインについて裏話をお聞きしました。

 

ゲームのキャラクターデザインで一番大事なのは、ユーザーがどう思うか、印象をコントロールすること

——キャラクターデザインをされた経緯を教えてください。

『クライマキナ/CRYMACHINA』のプロデューサー兼原作をされたフリューの林風肖さんから僕がフリーランスになった告知をしたその日に敵デザインご依頼のご連絡をいただきました。

フリーランスになって初めての依頼が最速で来てとても嬉しかったです(笑)。

林さんは以前から「紡ギ箱」で僕の作品を知ってくださっていて企画書には敵はメカと記載されていたのでメカは難しいかもと思っていましたが、「紡ギ箱」のような有機的なものでいいと言ってくださったので「ぜひやらせてください!」とその場でお仕事を受ける事になりました!ゲームを立ち上げる企画書段階、本当に一番スタートの時点から声をかけていただいたのでとても光栄でした。
同世代で同じようなものを見てきた方なのでずっと意気投合して制作していました!

——キャラクターは全部で何体手がけられたのでしょうか?

派閥の仮面と装甲とその強化個体の差分が組み合わせた分いるので明確には数えられないんですけど……30~40体くらいですかね。それぞれ、持っている武器もデザインしているのでなんやかんや50個くらいデザインしたと思います。

作中の敵デザインをほぼ一人でするのはゲーム業界にいたころでもなかなか無い貴重な経験でした。

——世界観に対しても関わられましたか?

世界観と敵対する勢力の設定をお伺いしてデザインでそれを反映させた提案をして、それがそのまま敵の記号として採用していただきました。

——こだわりのキャラクターがいましたら教えてください。

汎用的に戦う、ケルビム達ですかね?いわゆるザコキャラでユーザが一番見るキャラクターなので林さんと何回も打ち合わせました。「いわゆる、ザコっぽい見た目にはしたくないですね」っていう共通認識は最初からありました。簡単に倒されてしまうけど、プレイヤー側の能力値が高いから結果的にやられてしまうだけで、本来は人間と比べたらめっちゃ強くて威圧感のあるものにした方がいいんじゃないかと。あと、ゲーム的な都合で壊すところがあからさまに光って見えたりするゲーム的な要素をなるべく廃してシルエット重視で進めました。

ケルビム © FURYU Corporation.

——全体を通して色合いを統一をされたのでしょうか?

基本的に敵対する勢力の派閥があって、それぞれ派閥のパーソナルカラーみたいなのがあります。また携帯機などでギラギラしすぎないよう、光る部分はポイントを絞って効果的に見える位置をディレクションしたりしました。

© FURYU Corporation.

——デザイン制作期間はどれくらいでしたか?

お声がけいただいたのが2021年の冬くらいで、2年くらいがっつり関わってましたね。ボスキャラは1ヶ月に1体、ケルビムの装甲などは同時に複数体を一気にやるので、1ヶ月に7、8体のキャラクターのバリエーションを作っていましたが作っても作っても種類がたくさんあるので一生終わらないなって思ってました(笑)。でもめちゃくちゃ楽しかったのでしんどくはなかったです!

——本作で使用した、デザイン・ツールを教えてください。

ZBrushでデザインしながらゲーム用のハイモデルまで一気に作っていました。なのですごいスピードでいろんなデザインが全部できましたね。
納品も、2Dのコンセプトアートではなく3Dモデルデータで行いました。僕は元々3Dモデラーをしていたので、ゲームモデルを制作してくださる方と話し合って引き継ぎしやすい形で納品させていただきました。

——特殊なやり方ですね…!

珍しいですよね(笑)。
普通はコンセプトデザイン(絵)が上がってきたら、その絵を見ながらモデラーさんが3Dモデルを作ってチェック、修正という工程があるんですけど、今回はデザイン画兼ゲームで使える3Dデータを納品するので、納品後すぐゲームで検証することに専念できたのであの数を少ない人数で作り切れたのかなと思っています。やりやすいようにお互いすり合わせをして作っていきました。

——派閥の仮面の設定について。

彼らは人間に憧れている機械達という設定なんです。素体自体のデザインを心臓部分と頭の部分は空っぽになるデザインにして派閥を象徴とする仮面と自身の空っぽな見た目を隠すような攻撃的な装甲をつけることによって何者かになりたいという願望を体現したいと考えました。

その人への憧れが皮肉にも人の愚かしさを表現できたらいいな、と提案したまでは良かったのですがその派閥分の仮面と各スタイルの装甲も1人で作らないといけなかったので自分で自分の首を絞めていくスタイルになりました(笑)。

エクレシア © FURYU Corporation.

ゾーエー © FURYU Corporation.

ノエイン © FURYU Corporation.

——キャラクターデザインで大切にされていることはありますか?

フィギュアだと、自分が表現したいことやクライアントの要望が一番大事になりますが、ゲームだとユーザーがどう思うか、印象をコントロールすることが一番大事になってくる。例えば、「ここを殴ったらひよるんだろうな」とか「ここからすごい攻撃が出てくるから避けなきゃダメだなとか」視覚的にわかるデザインでなければならない。

強力な腕からパンチをしてくるキャラクターなら、腕が光っててゴツくて構えた時に光って攻撃がくるな、ということを伝えないといけない。

そこがわからなかったり、ズレたものを出してしまうと、キャラクターデザインとしてはカッコ良くてもゲームのモデル的には全然だめになってしまう。どういう印象を持たせたいか、は造形とはまた違うベクトルで意識しないとダメなので、そこはすごい注意してましたね。さきほど述べたゲーム仕様っぽくないデザインと最低限ユーザーに伝えないといけない要素を足したり引いたりしながらデザインを進めていました。

「第六神機 ロゴス」© FURYU Corporation.
操られているだけで敵意や殺意はないが自分たちが人間になるために殺さなきゃいけないというシーンで葛藤するキャラクターなので他の敵よりも攻撃的な要素は抑えて神秘的な見た目を意識しています。

 

「第五神機 レティア」© FURYU Corporation.
観測者という記号からあらゆる目線を表す複数の仮面、天体観測器のような見た目と全方位にトゲトゲして神経質な内面を表現してみました。

 

「第二神機 エクレシア」© FURYU Corporation.
「最強の神機」と呼ばれている設定。目に見えて危険だなっていう色やシルエットにデザインしています…。最初に登場するんですけど、見た感じ「ラスボスやん」って思ってもらえたら嬉しいですね。

ゲームは造形と違って立体として成立することや複製や生産のコストを考えなくていいので、浮いているものが付けれたり、自立や強度を意識しなくていいので結構自由に表現できましたね。でもやっぱり、ユーザーがどう倒すかだったり、どうやったら楽しくプレイができるかっていうのが前提にあるので造形とは別の縛りはあるのでとてもやりがいがありました。

——関わっている仕事が全部自分のデザインというのはすごく憧れだと思うんですが、その最短の方法とは何かあるんでしょうか?

やっぱり自分の好きなデザインラインでオリジナルデザインを発表し続けることかなと思います。あと何が得意なのか好きなのかが第三者から見ても明確だとよりいいかもしれません。

もちろん運やタイミングなんかもある思いますが。
ワンフェスだけでなく、デザインフェスタなどいつもと違う客層のいるイベントに出展してもいいかもしれないですね。正攻法というのが存在しないので明確な答えはないですがやはり地道にコツコツと自分の好きを発信するのが一番じゃないかなと思います!

僕も最短知りたい!!(笑)。

——ゲームを楽しみにしているファンの皆さまに一言お願いします。

僕がこのタイトルに関わりたいなと思った一番の理由は「クライマキナ」の世界観や物語がめちゃくちゃ面白いなと思ったからなんですよね

物語が衝撃的で熱い展開もあって、それを彩る主人公たちの儚いデザインや音楽を含めた世界観が素晴らしいのでそこをやっぱり楽しんでいただきたいです。

敵デザインも「本当にこうしたい」っていう要素を全て取り入れていただいているので、そういう意味で「紡ギ箱」のデザインラインが好きな方も楽しめるものになっていると思います。フォトモードが楽しくてとても捗りますよ!!
Nintendo SwitchとかPlayStation 5 4などでいろいろな媒体で発売されているので、お手元にあるハードで遊んでいただけたら嬉しいです。

© FURYU Corporation.

Profile

Yoshi.
ゲーム会社を退職後、フリーの造形作家、キャラクターデザイナーとして活動。『ツムギバコ』という自身のコンテンツを個人、商業ともに展開しており、現在はツムギバコゲーム化プロジェクト「IZON.」を鋭意開発中。

X(旧Twitter):@Yoshi6054

 

『クライマキナ/CRYMACHINA』あらすじ

人類が滅亡した未来。
機械の少女たちが「本物の人間」となるために戦う――
完全新作アクションRPG

 

奇病の蔓延する現代。
病によって死の淵にたつ少女レーベン・ディステルは声を聞く。

「あなたは選ばれた。」

そして訪れる死。
しかしレーベンは再び目を覚ます。

人類滅亡後の未来。
エノアと名乗る機械の少女に迎えられて。

そこはエデンと呼ばれる構造体のなか。
エデンでは機械たちが人類再生のために
「本物の人間」を創造しようと稼働をつづけていた。

レーベンはエノアに導かれ、
「本物の人間」になるための戦いに巻き込まれていく。

 

 

© FURYU Corporation.