魚と猫に姿を変えた、トト子とにゃーのつくり方 『おそ松さん』3期エンディングムービー撮影現場・2

テキスト:神武団四郎 撮影:長尾真志 メイキング解説協力:伊藤大樹(㈱xpd ドワーフ)

現在絶賛放送中のTVアニメ『おそ松さん』第3期。この大ヒット作のエンディングムービーは、シリーズを通してドワーフ(http://www.dw-f.jp/)が制作を手がけている。前回に続いて、その撮影現場を紹介。今回はトト子&にゃーをフィーチャーした第3期1クールのエンディングについて、演出の青松拓馬さん、アニメーターの溝口広幸さん、加藤 鳳さんにお話を伺った。

INTERVIEW

――本エンディングムービーの発想はどのように生まれたのですか?

青松:エンディング曲「Max Charm Faces 〜彼女は最高♡♡!!!!!!〜」の主役がトト子とにゃーということからの発想です。アニメの中で、アイドル時のトト子の衣装が魚、にゃーは黒猫なので、そこから魚と猫でふたりのイメージを作れるんじゃないかと。トト子は名字が弱井なので、魚偏に弱いでイワシにしました。にゃーは扮装から黒猫のイメージで作ってもらいました。

本物の魚を動かすことで「おそ松さん」らしいインパクトやばかばかしさが出せればと。普通は生の魚でアニメはしませんからね。

 

トト子のプレートは、白いアクリル版をレーザーカッターでくり抜き、転写シートで絵を載せ、つや消しクリアーを少し噴いて完成。固定用の白い線はデザインワイヤー。にゃーは硬質のチャームに転写シートで画像を載せ、表面をUVレジンでアールを付けて仕上げた。どちらも作画はぴえろのアニメーター、小泉孝司さん。

6つ子の値札は、本編からチョイスした原画をもとにドワーフの小川 育さん、塩田茉利衣さんがデジタル上でマジック風のタッチに加工、透明の転写シートで載せたもの。魚の値札はアニメーターの根岸純子さんがマジックで書き込んだ。値札は手板で、材質はスプルース。

魚屋の店先をイメージした俯瞰ショットは、動かしやすいよう別々にアニメート。撮影時は、モニターにレイヤーを重ねて表示して位置を確認しながら動かしていく。

――演出にあたり苦心したことは?

青松:魚が並んだところは魚屋さんをイメージしたので、実際に売っていそうな魚を幅広く集めました。たくさんの魚を動かすのをポイントにしたので、数を集めるのと魚の温度管理、鮮度を保つのが大変でした。そのあたりはプロダクションマネージャーの岩崎将典くんががんばってくれました。生ものなので、同じようなサイズを揃えるのも苦労した点です。

青松監督による「欲しいお魚リスト」。スタジオ近くにある魚屋さんと相談し、この中から予算と時期的(11月)に入手可能な魚介類を揃えてもらった。

 

――実際のアニメーションにあたって心がけたことは何ですか?

青松:黒猫は見た人が一瞬「あれっ本物?」と思ってもらえるようなリアルな動きになるようお願いしました。魚は動くことが大事なので、とにかく生の魚でできることをお願いした感じです。

溝口:黒猫のすべてのアニメーションと、黒猫がくわえたイワシのアニメーションを担当しました。キャラクターは黒猫と魚ですが、同時に黒猫は橋本にゃー、イワシはトト子でもあるんです。アニメートにあたっては、擬人化された側面と、それぞれの動物らしさが自然と融合できるよう心がけました。

加藤:私は黒猫に接触していないイワシと、その他の魚介類のカットを担当させていただきました。ラストカットの飛びあがる6つ子の値札のアニメーションもやらせていただいています。心がけたのは、イワシの新鮮さとピチピチ感が出るよう大胆に動かすこと。尾っぽやひねりではなく、身体全体で大きく動かしました。

 

黒猫のアニメートを担当したスタジオプラセボの溝口広幸さん。黒猫の動きは、猫らしさに加え橋本にゃーのキャラクターが感じられるよう心がけた。
黒猫の人形造型はスタジオプラセボの下井孝司さん、骨格(アーマチュア)はアーマチュア作家の川村徹雄さんが担当。毛並みはフェルト、骨格は肩や足の付け根などはボールジョイントを使用し、しなやかな動きが求められる手足や尻尾には針金(ヒューズ線)を使用した。

魚介類や値札のアニメートを担当したアニメーター加藤 鳳さん。はじめての魚のアニメートに戸惑いながら、5日がかりで多くのキャラクターを動かした。

ブロック塀の上でイワシを追いかける黒猫のカットは、イワシ、黒猫、ブロック塀、背景(実写)を別々に動かして合成。逃げるイワシのアニメート中、黒猫の動きをチェックする加藤さん。

――どんな点に苦労しましたか?

溝口:生魚をアニメするチャレンジに尽きますね。黒猫とイワシが絡むシーンでは、生魚に触れるためひとコマ動かすごとにビニール手袋の着け外しが必要で、それがとても大変でした。

加藤:生魚をアニメーションしたことがなかったので苦労の連続でした。どう扱ったらよいかも試行錯誤で、動かし初めは要領がつかめず、予定の倍ほどの時間がかかってしまって。最終的に5日かけて撮影しました。

魚介類を並べたブルーの背景シートは、4.8m×2.4mの板にサウスシーブルーの背景紙を水張りし、水分が染みないようその上に厚さ3mmの塩ビフィルムと梨地ビニールを交互に重ね合わせたもの。青松監督は、魚を並べた時おしゃれに見えるよう爽やかな海のイメージで色をチョイスした。

生の魚介類を使用するため、スタジオの一角に持ち込まれた巨大な冷凍ショーケース。撮影は11月に行われたが、鮮度を保つためスタジオ内の温度も低めに保たれた。

 

――「おそ松さん」のエンディングならではの楽しみや苦労は何ですか?

青松:毎回、何をやるかは悩みますが、今まで自分の中でやってなかったことにチャレンジできるのが楽しみです。ただ撮影時間があまりとれないので、スタッフのみなさんには苦労をかけていますが(笑)。毎回のことですが、何案もボツは出てます。今回は6つ子のダンスの企画やお酒を使ったものなどがボツになりました。それらも、いつか日の目を見ることがあるかもしれませんね。

TVアニメ『おそ松さん』第3期

放送情報

テレビ東京:10月12日(月)から毎週月曜日 深夜1時30分~放送

テレビ大阪:10月12日(月)から毎週月曜日 深夜1時30分~放送

テレビ愛知:10月12日(月)から毎週月曜日 深夜1時30分~放送

※放送日時は変更となる場合がございます。

AT-X:初回放送:10月15日(木)から毎週木曜日21時00分~放送

リピート放送:毎週土曜 13時00分/毎週火曜 29時00分

イントロダクション

日本一有名な6つ子の伝説、3度目の開幕!!!!!! 今度はかつてない新展開が待ち受ける!?
2015年、赤塚不二夫生誕80周年記念作品として、赤塚不二夫の名作ギャグ漫画「おそ松くん」を原作に、6つ子が大人になった姿を描いたTVアニメ「おそ松さん」。20歳を過ぎてもクズでニートで童貞。でもどこか憎めない松野家の6つ子が繰り広げる日常を描き、社会現象を巻き起こした。
あれから5年―。TVアニメ第2期、劇場版「えいがのおそ松さん」を経て、待望のTVアニメ第3期が2020年10月より 放送決定!
お馴染みの冴えない6つ子たちは、今作でも色々間違った方向に大暴れ!?
そして、松野家に新たな変化も訪れる…?
あの問題作が今、再び!

©️赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会