【スカルプターズ・ムービー】映像に落とし込む。『映画 ギヴン 柊mix』橋本能理子監督インタビュー!

シリーズ続編映画2部作の前編として現在公開中の『映画 ギヴン 柊mix』。本作は、佐藤真冬の幼馴染み・鹿島 柊と八木玄純のバンド「syh〈シー〉」がデビューを果たし、さまざまな出来事を経て成長していくストーリーとなっている。今回監督を務めたのは、TVアニメ『ギヴン』で各話演出も担当した橋本能理子氏。TVアニメ『ヒロインたるもの!~嫌われヒロインと内緒のお仕事~』などを手がけている橋本監督に『ギヴン』の魅力やこだわりをお聞きしました!

 

映画 ギヴン 柊mix

2024年1月27日(土)より絶賛公開中
配給:アニプレックス
©キヅナツキ・新書館/ギヴン製作委員会

 

 

 

STORY

「これは淋しかったこどもたちが大人になる途中の話」

高校生の上ノ山立夏は、佐藤真冬の歌声に衝撃を受け、中山春樹、梶 秋彦と組んでいるバンド「ギヴン」にボーカルとして真冬を加入させる。真冬加入後初のライブを成功させ、立夏は真冬への想いを自覚し、ふたりは付き合い始める。

その後も活動を続ける「ギヴン」はフェス出場をかけたコンテストに出場し、惜しくもライブ審査に落ちたものの、ますます注目を集めていた。

その頃「ギヴン」が落ちたコンテストに受かった真冬の幼馴染み・鹿島 柊と八木玄純のバンド「syh〈シー〉」はデビューが決まっていた。柊は、「syh」に不在のギターの一時的なサポートとして立夏に白羽の矢を立てる。

さらに柊は、立夏に「お前とやってみたいことがあるんだ」ともちかけ……。

 

 

INTERVIEW 橋本能理子

――TVアニメでは第10話の絵コンテ・演出としてご参加されていますが、監督を務めての心境をお願いします。

原作やアニメシリーズのファンの方々の熱量が高い作品だともちろん知っていましたが、公開後にSNSの反応を読ませていただいたり、映画やイベントに直接足を運ぶことで改めて実感を伴って理解したという感じです。

――立夏が、真冬の元恋人で今は亡き由紀に対して抱いている感情を、映像化する上でどのように落とし込まれたのでしょうか?

このシーンに限らずですが、原作にある描写をなるべくそのままの印象で再現できるように心掛けたつもりです。立夏が音源を聴いているときに「壁掛け時計」が見える描写があるのですが、それは由紀の部屋にも同じものがあったと真冬から言われたものなんです。誰かの持ち物や縁があるものが、自分にとってプレッシャーだったり、追い立ててくる気分になることってあるよなと思っていて。そういう気分を演出できたらと思い。映像では秒針の音を入れたり、時計から見たアングルを使うなどして少し強調しています。

――橋本監督から見た、柊と玄純の二人の印象を教えてください。

柊は多面的で、そのどれにも嘘がないところが魅力的な人だなと思っています。
その場にいる相手や場面によって対応やテンションが変化するのは人間らしさだなと思っていて、それが柊を好きな人が好きな部分かなと思ったので、掴みやすいところは掴みやすいまま、複雑なところは複雑なまま、扱わせてもらいました。

玄純は初めて原作を読んだ時から「この人の言っていることは分かるな」と思って、共感を得やすい人物なんじゃないかと捉えています。後半表出する言動が「酷い」「柊がかわいそう」という印象に寄ってしまうともったいないので、柊への思い入れを映像でも根拠あるものに見えるようにしっかり描写してあげたいなと思って臨みました。

――柊と玄純の関係性について、映像化する上で意識したところとは?

原作でもそうである通り、柊は玄純と二人でいるときが一番素直で、気を許しきった感じの振る舞いに見えるように留意しています。

玄純はできるだけ逆光になるように、なるべく光源の手前に居てもらうことが多かったです。誰かと同じ空間にいるのに内面的には一人隔たっているという雰囲気、孤独感が伝われば、と思っています。

――柊と玄純のシーンの演出について。

【柊の独白のシーンについて】
モノローグと台詞が並行して聞こえる方法は、過去のシリーズから採用されているのでそのまま踏襲しました。現実的に考えると「このモノローグの間、実際の時間では何が起こってるの?」と不思議に思えるかもしれないのですが、そこは柊役の今井さんが間が持つよう上手に演技してくださっているので、あまり気にならずにお芝居を楽しんでもらえるようになったのではないかと思っています。

【後半、玄純が柊に対して感情をぶつけるいくつかのシーンについて】
玄純はいずれのシーンも基本的には「自分はずっとさみしかった」ということを言っているのだと思っていて、表情が豊かでない分、間や少しの表情の変化で苛立ちや傷ついた心情が表現できたらなと思って取り組みました。また、言葉が少ない分、こちらも玄純役の坂さんの的確なお芝居に助けられた部分です。

――印象に残っているシーンがありましたら教えてください。

原作を読んで印象に残ったという意味では、金色の折り紙のシーンです。現在の柊と玄純の関係性にも繋がっていて、かつ象徴的なシーンなので本作でも柱になるシーンとして、大事に思っています。

金色の折り紙のうつくしさはもちろんなのですが、玄純の手元の黒い折り紙はコントラストを出すためにアニメではあまり使わない数値的にぎりぎりまで純度の高い黒を、色彩設計さんとご相談の上使っています。「スクリーンに穴が空いているみたいに見える黒色」を一緒に目指してもらいました。

――MV撮影シーンの演出について。

「パレイド」は原作に数コマ出ている「syh」のMVらしき絵を手掛かりにしています。
原作での扱いは、おそらく第1週目の特典映像で描かれた弥生たちと撮影するMVがそれにあたるのかなと思うのですが、演奏している三人に描写を絞るために映画では別物として扱わせてもらっています。今思うと「本当に大それたことを言ったなあ」と思うのですが、今までアニメの『ギヴン』でやっていない演奏シーンということで、MVシーンを提案させてもらいました。
 

「ストレイト」は序盤の見せ場として、かつ映画のOPになってくれればというのと、「syh」というバンドの佇まいや立夏との関係性を端的に見せるというたくさんのタスクを負っているシーン・楽曲でした。「パレイド」は劇中のいろいろな出来事を経た彼らの総括として見せられればと思って、なによりセリフでも言及されているように「ストレイト」と歌い方や表情が違って見えればと意識しています。具体的には視野がちょっと広くなった感じ、あと清濁併せ呑んだうえでの清らかさみたいなものが出せればと思いました。どちらの演奏シーンも光の具合や色の変化のタイミングは撮影監督さんが大きく担ってくれていまして、本当に効果的に、一緒に演出をしてくださっています!

――演奏シーンのモーションキャプチャについて。

モーションキャプチャは劇中歌を手がけるセンチミリメンタルさんたちが、自らアクターをしてくださっています。ご本人たちの動きのニュアンスをかなり忠実に生かしつつも、アニメ的に映えるよう3D監督さん及び3D部署のみなさんが整理してくださっています。

TVアニメの頃からですが、弦を押さえたり弾いている手指やドラムの手元だけのアップ部分は、3Dで引き受けてもらっています。顔が映っているカットは、少し専門的な話になりますが、3Dさんが整理したモーションを2コマないし3コマおきに連番で出してもらい、それを下敷きに、作画の方にさらに芝居の整理をしてもらいながらアレンジをしつつ描いていただいています。

――劇中歌「ストレイト」「パレイド」について。楽曲が上がってきた際の心境を教えてください。

どちらの曲もいかにも柊が書きそうな曲と歌詞だったので、すぐに腹落ちというか、納得!という感じでありがたく思いました。特に「ストレイト」はタイトルからして、まさに柊!って感じですよね。

「パレイド」は3〜4色の場面を用意することと、漫画に出ているあるコマを再現することだけは事前に決めていたので、それを曲にどうはめ込んで物語を用意していこうかと、曲が届くまでは緊張して構えていたのですが、既にしっかりとストーリーのある楽曲で、あとはそれに上手に乗っかっていけばよかったので、本当に助けられました。感謝しています。
 

――橋本監督から見た『ギヴン』の魅力とは。

原作の魅力のお話になってしまうのですが、絵がとにかく洗練されていていつも新しいところ、登場人物たちの個性と強い感情、切れ味の鋭い言葉の使い方、映像的でスタイリッシュな演出、シリアスとコミカルのバランスのよさ、など数えきれません。
そのなかでも一番私が素晴らしいなと感じているのは、原作者のキヅナツキ先生が登場人物を扱うときの品のよい手付きです。たとえばその人物があまり撮られたくなさそうな表情や、人物同士の間だけで見せる表情、起きる出来事に対して、きちんと「不躾にならない距離をとる」「見せ過ぎない」選択をされているのが素敵だなと思っています。

――最後に、映画『ギヴン』の今後の意気込みをお願いいたします!

本当にありがたいことに、後編もお任せ頂けることになり感謝しています。彼らの「今」を惜しみつつ、大事に描いていきたいです。引き続き愚直に頑張ります。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

Profile

橋本能理子(はしもと・のりこ)

主な参加作品に「ヒロインたるもの!~嫌われヒロインと内緒のお仕事~」、「トモちゃんは女の子!」、「アイ★チュウ」、「うちタマ?!~うちタマ知りませんか?~」、「さらざんまい」などがある。

CAST

佐藤真冬:矢野奨吾
上ノ山立夏:内田雄馬
中山春樹:中澤まさとも
梶 秋彦:江口拓也
鹿島 柊:今井文也
八木玄純:坂 泰斗

 

STAFF

原作:「ギヴン」キヅナツキ(新書館「シェリプラス」掲載)
監督:橋本能理子
脚本:綾奈ゆにこ
キャラクターデザイン:大沢美奈
総作画監督:山形孝二/二宮奈那子/永田陽菜/大沢美奈
美術設定:伊良波理沙/須江信人/斉 婉廷
美術監督:劉 洋/関口静夏
色彩設計:加口大朗
撮影監督:中川せな
CG監督:水野朋也
編集:伊藤利恵
音響監督:菊田浩巳
音楽:未知瑠
アニメーション制作:Lerche
主題歌:センチミリメンタル「スーパーウルトラ I LOVE YOU」(EPICレコードジャパン)
劇中歌:syh「ストレイト」「パレイド」(EPIC レコードジャパン)
配給:アニプレックス

©キヅナツキ・新書館/ギヴン製作委員会