【ZBrush最初のつまづきQ&A】フィギュア原型をドッジボールくらいの顔の大きさに作ってしまう

ZBrushを買ったけれど、トラブル発生で進めず放置している……そんな人へ、スカルプターたちが最初のつまづきとその解決方法をリレーで答えます。今回は榎木ともひでさんに、最初の最初のつまづきをお聞きしました。

ZBrush最初のつまづきは?

2014年にZBrush を導入しました。当時周りに誰も教えてくれる人がいなかったので、ハウツーDVD-ROMを買ってやっていました。これはすごくわかりやすかったです。とりあえず「ラオウ」を作ってみました。

…ですが2ヶ月ほどさわって、そのあと5年ほどZBrush を放置することになります。

粘土からの移行は比較的すんなり。
そもそも粘土もしくはパテでの作り方が「削り派」(ナイフで削って形にしていくタイプ)ではなく「盛り派」(粘土を盛ってヘラで形にしていくタイプ)だったのでブラシでモリモリやっていく分にはなんの抵抗もありませんでした。

しかし当時のZBrush はブーリアンが難しく、僕はほぼ失敗。その原因も何度試してもわからない、成功してもなぜ成功したのかわからない…。当時はフォルダもなくブーリアンに失敗すると元のパーツが結合してしまって元に戻らない…。だから、複製をとっておかなければならない。フォルダがないからぐちゃぐちゃになっていく。そうそう当時は全部英語だったのもハードルが高かった…。
そうこうしてるとメッシュを細かく貼りすぎたり、サブディビジョンレベルを上げすぎたり(初期にありがち。等身大フィギュアを作ってるのかと思うくらい細かくしてしまう)で、とうとうまともに動かなくなってしまいました。あと、クイックセーブをアンドゥ履歴ごと残していてセーブにやたら時間がかかったり、はてはセーブ中に落ちたりして僕の心をポキポキに折ったのでした…。

(単純にメモリが8ギガしかないのが原因でしたが…)

当時の苦悩をリアルタイムでブログに書いているが今でも残っています(笑)。
解決してくれたのは時間です。寝かせている間に「ライブブーリアン」「ブーリアンフォルダ」などおそるべき便利な機能が付いていたのです。あと、日本語にできるようになってる〜〜。

大まかにはそれで解決しましたが、それに気づくための出会いがありました。周りにZBrush に詳しい人が増えてきたのです。僕が心を折っている5年間、めげずに奮闘してきた人たちが台頭しはじめたのです。みんな年下ですが僕より遥かに知っているので困った時すぐ聞きます(笑)。そしてすぐ教えてくれます。

そういうZBrush の「使い方」の面ではほぼ解決できました

 

ドッジボールくらいの顔の大きさに作ってしまう

造形の根幹は「立体を作る」ということです。

3D画像は立体に見えますが、「絵(2D)」です。当時個人での出力は夢のまた夢だったので実際の立体を見れないのはモチベーション的にも感覚的にも虚しいものでした。

「僕は立体を作りたいのであってCG画像を作りたいのではない」
この葛藤に苛まれます。

そもそも僕は実際の原型のそれぞれ違う大きさに合わせたディテール、パース、見せ方を独自の感覚で立体にすることを得意としてきたタイプ。そのスキルを全て奪われるようなものなのです。死活問題です。

そんな時、等身大フィギュアの雛型制作の仕事がタイミングよく舞い込みます(結局等身大自体の造形にも関わることになりますが)。まず粘土で1/7程度の原型を作り、それをCTスキャン(これがとんでもなくすごかった。普通の3Dスキャンは「こんなもん細部は作り直しやん」ってなるところを粗めに入ったヤスリがけのスジまで拾っていた)。

粘土原型をスキャンすることで実際の原型がZBrush 上でどのように見えるかがわかったのだ。
これは大きな収穫だった。それをデジタル上でディテールアップ。そして1/4程度に仮出力してもらう……なるほど、こうなるのか。などと、なんとなくの感覚を掴みつつ。

どうやら僕は粘土造形では作る大きさ(1センチくらいの顔だったり5センチくらいの顔だったり)に合わせてモールドを計算しているがデジタルではドッジボールくらいの顔の大きさに作ってしまっていることがわかった。

本来ここで自分の作るべき小さなサイズのフィギュアの感覚に修正するところだが、作っているのは「等身大フィギュア」。思う存分ドッジボールで作ったのであった。

その等身大の出力品を見るとデジタル画面で制作した物とほぼ変わりないイメージのものだった。僕はデジタルの中で大きく作りすぎていると再確認。とにかく僕にとってデジタル造形をするには出力が必須であると悟った。

長々と語ってしまったが結局のところ

3D画像からでは「立体の感覚」を読み取れない悩みの解決策は「3Dプリンタを買う」である

のちに格安(3万5千円)の3Dプリンタを2台手に入れ出力しまくる。1年間は休むことなく毎日出力しまくった。
造形の探究とは関係ない(ないことはないが…)3Dプリンタで何ができるかの探求が異常に面白くてハマった。そうやってるうちにデジタル造形とちょっとは親和性を高められた気がします。

とはいえ前述の「奪われた感覚」は失ったまま…
模索中です。


自ら着色したレジンで作ったキット
 

キョダイ パグミミ少女ゼロ

 

榎木ともひで

1974年生まれ。美少女からバイオレンス系、リボルテック「ダンボー」など、あらゆるジャンルをこなすオールラウンダーな造形作家。eyewater主宰。漫画家志望から造形へと転向した経歴を活かし、キャラクターを徹底解析して「アニメ絵」特有の歪みから作風の魅力、癖に至るまで立体物に再構築する唯一無二の技術を持つ。キャラクターデザイン的なデフォルメや、空間構成力を駆使したヴィネットも得意技。近作は「SNOOPYMUSEUM TOKYO ピーナッツヴィネットコレクション Vol.2」「アヤナミレイ(仮称)第3村Ver. 」など。今年、造形師デビュー25周年を迎えTwitterなどで「#造形師デビュー25周年」でまとめた25年分(1998~2023年)の造形作品が全て見れるようになっている。オリジナル作品はWebショップなどで購入可能。eyewater-enoki

Twitter:@eyewater_e

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