【セミナーレポート】クリエイターのための生物アナトミー連続講座 第1回:キバとツノの話 路上博物館・森健人 × クリエイター・片桐裕司

2023年2月17日(金)、骨格博士で路上博物館館長・森健人先生による「リアル・フィクション クリエイターのための生物アナトミー講座 」が開催されました!第1回目のゲストは映画監督、スカルプターの片桐裕司氏が登壇しました!

 

当日持ち込まれた頭骨の数は約20種類、23個!本物の骨やツノで重さや質感に驚いたり、スキャンしてそのまま3D出力した骨を自由に動かして関節のしくみを実体験できる、とても貴重なセミナーでした。

シマウマの頭骨

たくさんの種類の頭骨も登場しました!

人気の「博物館の骨格標本ガチャ」も!

参加者は3DCGの学校の生徒さんからCG会社勤務、採掘師、そしてジュエリーデザイナーまで様々!みなさん自然のデザイン美を実感していました。

 

 

登壇者紹介

 

映画監督だけではなく、誰でも参加できる「彫刻セミナー」を主催する片桐さん。実は本セミナー前にも講義をしてきたそうです。

 

①これはなんの動物の骨?

最初は頭骨をみて、生前の姿を描いてみます。「これは何の動物でしょう?」(路上博物館3DCGより)

片桐さんも頭骨を触りながら考えます。

皆さんも手で触りながら、どんな動物なのか考え中…。

参加者全員になんと、パンダの頭骨のミニチュアがおみやげとして配られ、喜びの声が!ちなみにこのパンダは3種類。(左からホァンホァン・フェイフェイ・トントン)

皆さんの予想はパンダやクマ系が多かった印象がありました!

正解は……………ジャイアントパンダ!!!!皆さん、観察力と洞察力がすごいです!

この2頭のパンダは親子ですが、骨格が微妙に違います。
お母さんのホァンホァン(右)は元々野生のパンダ、トントン(左)がその子どもで動物園で生まれて育ったパンダ。違いはどこ?そしてなぜ?あなたはわかりますか?


ツキノワグマ(右)とジャイアントパンダ(左)の側頭筋(人間で言うとこめかみ)が入る部分を比べてみるとジャイアントパンダの方が大きい。理由は「噛む力が強い」から。噛む強さを重視しすぎて、逆に目が筋肉で圧迫されて小さくなってしまった。

 

②骨は「てこの原理」と一緒

例えば「アゴ」の部位をてこの原理で示すと…

【支点】あごの骨
【力点】口を動かす筋肉
【作用点】歯

のように、「頭骨」を見るだけで、動物によって筋肉力が異なることがわかりました!


ライオンver.「てこの原理」図(路上博物館より)

 

③陽圧呼吸

カエルの骨格をみると「肋骨」がないのが分かります。ではどうやってカエルは呼吸をしているのでしょうか…。

実は、口の中に空気を入れる⇨鼻を閉じて首を押し込む⇨肺に空気がいき動く⇨鳴き声がする構図になっている。
内側に圧力をかけて呼吸することを「陽圧呼吸」という。

④歯の役割の違い 異形歯と同形歯

奥歯・前歯が同じ形をしているのが同形歯。哺乳類以外大体同形歯が多いと言われている。
歯の特徴としては、ポロポロとすぐに取れてしまう。

異形歯は前歯も奥歯も異なる歯をしており、場所によって機能を使い分けをする。
歯は、あまり取れないが歯の入れ替えがあまりないので大切に使われている。

 

哺乳類のイルカは、捕食する際に口の中で魚を閉じ込めたあと、海水を吐き出す工夫をして捕食をします。

 

番外編

森先生と森先生の頭をCTスキャンして出力した頭骨。生きた本人と頭骨を比べられる機会は滅多にありません!片桐さんもご自身の頭骨スキャンに興味津々。

ちなみに歯がかけている理由は、頭骨を落としてしまったそう…。

最後

セミナー後では、集まって頭骨を撮影したり触ったり片桐さんや森先生と一緒に楽しくお話しをしていました!

 

 

登壇者プロフィール

【ゲスト・クリエイター】
片桐裕司(かたぎり・ひろし)

東京生まれ。ハリウッドの映画、テレビのキャラクターデザイナー、彫刻家。
スティーブン・スピルバーグやギレルモ・デル・トロ、サム・ライミなどの著名監督の映画作品に多数参加。主な代表作は『パシフィック・リム』『マン・オブ・スティール』『バトルシップ』『エルム街の悪夢』『パイレーツ・オブ・カリビアン/ 生命の泉』『ハンガー・ゲーム』『キャプテン・マーベル』など。
近年、日本において若手アーティストを育成するための彫刻セミナーを各地で開催。造形家のみならずCGアーティストを始め様々な分野のクリエイターに影響を与え、2000人を超える参加者が片桐氏に造形を学ぶ。
また氏の著書である『アナトミー・スカルプティング 片桐裕司 造形テクニック』は美術書としては異例のベストセラーとなっており、『アニマル・モデリング 動物造形解剖学』も唯一無二の動物造形本として好評発売中。
長編監督デビュー作「GEHENNA〜死の生ける場所」は全米10都市で公開され、北米Netflixで配信中。日本では2019年に未体験ゾーンの映画館で上映。DVDレンタル・販売中。

Twitter:@chokokuseminar

森健人 (もり・けんと)

1984年、東京都出身。2007年福井県立大学海洋生物資源学科を卒業、2015年に東京大学大学院理学系研究科を卒業。博士論文のテーマは「比較解剖学的アプローチによるラッコの股関節の可動性と遊泳適応について」。
博士号取得後は博物館自然史標本の3Dモデル化による文化的活用の促進をメインテーマに据えている。2015年から2019年3月まで国立科学博物館動物研究部支援研究員。2019年4月から2020年5月まで同館科学系博物館イノベーションセンター特定非常勤職員。2020年5月から一般社団法人路上博物館を創業し館長兼代表理事に就任、現在に至る。
これまで、写真測量(フォトグラメトリー)による博物館自然史標本の3Dモデル作成実績は200点以上。趣味のコスプレから解剖学の世界に足を踏み入れた。

Twitter:@rojohaku