【スカルプターズ・データベース】目の見えない『形』の部分まで一切妥協しない美少女造形 原子和臣

フィギュア、ゲーム、CM、映画、そしてアートのジャンルで最も造形力のあるスカルプター・原型師を集めた、最新データベース創刊!

ひとつひとつの作品に人間性と空気感を意識する
原子和臣Profile


原子和臣とその利き手

はらこ かずおみ

1999年生まれ。
東京造形大学で彫刻を専攻し、在学中に出展した「新世代造形大賞2018」をきっかけにオリジナル造形を始める。卒業後はゲーム会社でキャラクターモデラーとして働きながらオリジナル作品を中心に発表している。

新世代造形大賞2018 大山竜賞
新世代造形大賞2019 浅井真紀賞

Twitter:@_kazuomi_09
Instagram:@kazuomi_harako

 

作品

Etoile Violette


Ignis


Vanity

D.C.

Garbera

オリジナの場合のワークフロー

①アイデア出し、テーマ決め
何気なく思いついたイメージや、この顔が作りたいというところから作り出すことが多い。

②資料集め(1日)
実在のものは特に、なるべくイメージに近い資料を探す。

③ラフモデル(1〜2日)
可動フィギュアでポーズを検討しながらざっくりと要素を出す。

④ハイモデル作り込み(7〜10日)
布にはMarvelous Designer、ハードサーフェスは3ds Maxを使う。

⑤分割、出力(2〜3日)

⑥複製(3〜4日)
粘土埋めが大変。

⑦塗装(2〜3日)
エアブラシをベースにエナメルやラッカー塗料、水性塗料で細部を詰める。

使っているPC、ソフト、ペンタブ

【PC 】
raytrek ZF
OS:Windows 11 Home 64ビット
CPU:Intel(R) Core(TM) i9-12900
メモリ:32G DDR4 SDRAM(PC4-25600/16GB×2/2チャンネル)

【メインソフト 】
ZBrush、3ds Max

【メイン以外 】
Marvelous Designer、Blender、CLIP STUDIO PAINT

【ペンタブ 】
Wacom Intuos Pro Small

INTERVIEW

——小さい頃なりたかったものは?

大工です。
大工だった祖父の道具が家にあった影響で木刀とかを作っていました。

——最初に造形したのはいつですか?

記憶にある最初の造形は幼稚園のときの粘土です。
幼少期は粘土、ブロック遊び、段ボール工作をひたすらやっていました。

——出身校と、学生時代にはまっていたものを教えてください。

神奈川工業高等学校デザイン科卒業後、東京造形大学彫刻専攻に入学しました。
大学時代にはまっていたものはバイクです。
先輩の影響もあって「バイクに乗りたい!」と思い立ち、免許取得中にバイクを購入しました(笑)。
免許を取ってから大学へはバイクで行くようになりました。

——いつ頃から造形作家を目指しましたか?

「新世代造形大賞2018」にて大山竜賞をいただいてから作家を意識し始めました。
当時大山竜さんに教えていただいたことが現在の作家活動の基盤になっています。
ちゃんと作った最初の作品は、そのときに出展した『Ignis』です。
深く考えずに人体×ドラゴンを作ったのですが、表情や服装など、今思えば好きな要素がたくさん詰まっています。

——オリジナルキャラクターのモデルはいますか?

特定の人物に似せる事はしないのでモデルはいないと思います。
作品ごとに作りたい顔のイメージに近い資料を探して参考にしていたり、鏡で自分の顔を見ながら作ることが多いです。ただ、声優の内田真礼さんの顔がとても好きで、顔のパーツやバランス、表情の研究をしていて、どんな作品を作るときでも大抵参考にしています。そういう意味では内田さんがモデルかもしれません。

顔の造形を褒めていただくことがあるのですが、実は“自分の作風”みたいなものを意識したことはほとんどありません。むしろ自分にとっての普通だったり、グッとくる表情を突き詰めたいと考えています。実際の人物を参考にしてもそのまま作るのではなく、自分の中で解釈してからアウトプットすることを大切にしています

——造形するとき一番こだわられていることは?

空気感を作ることです。
実在性や雰囲気を演出するために、作品が存在する周囲の空気感まで作ることを意識しています。
作品は目に見える形がありますが、作品の周囲には目に見えない空気があります。
そういった目に見えない部分にまで意識を向けて形を作ることで、テーマやコンセプト以上に、見た方なりに何かを感じてもらえるように心がけています。

もう一つはギャップを取り入れるようにしています。
笑ってるけど悲しさを孕んだ顔、着飾っているが空虚な人間性など。
そういったどこか不完全な多面性を表現することが私の創作の根源のように思います。
常々完璧でありたいと考えていますが、人間は完璧な存在にはなれません。
完璧になれない自分を許して受け入れるために、そのもどかしい思いを作品に投影しています。

——落ち込んだ時に聞く音楽、もしくは見る映像は?

映像ではありませんが、LM7氏の画集を見ます。
元気が出ます。

——現在、メインでお仕事されているジャンルは?

キャラクターモデラー(ゲーム会社勤務)

——今後の野望を教えてください。

最強の作家になる! 
幽霊の友達を作る!
 
でも、残念ながら幽霊を見たり不思議な現象に遭遇したことはありません
見えないから憧れているんだと思います。
 
幼い頃は心霊番組が好きでよく観ていました。
自分には見えない存在がいるかもしれないというワクワク感が好きなんです。
そういう存在は関わらないほうが良いだとか、人間を害する存在という話を聞きますが、「なかには意思疎通の取れる友好的な個体もいるのでは!」という好奇心からこの野望を抱きました。
 
その気持ちは中学生くらいからあって、夜の伏見稲荷大社を散策したり、真っ暗で人気のない場所とか出そうな雰囲気の場所に行ったりしましたが一向に出会えません(笑)。もし友達になれたら生前の話とか、死因とか、今は何をして過ごしているのかとか、いろいろなことを聞きたいです。

 

Data

作業スペース


作業場

作業棚

最近はまっているもの

『ちいかわ』、海鮮料理

影響を受けた(大好きな)映画・漫画・アニメ

LM7氏『LAVENDER QUARTZ』
『ブラック★ロックシューター』、『アイカツ!』シリーズ、『バカとテストと召喚獣』、『D.C.』シリーズ、『ドラゴンボール』
『シン・ゴジラ』

1日に造形する平均作業時間

8時間