【原型師INTERVIEW】土台には実際に作品に登場する悪魔が!?大迫力の出血表現と世界観の作り込みでチェンソーマンを完全再現 チェンソーマン原型制作インタビュー!

集英社「週刊少年ジャンプ」にて連載され、2022年10月からアニメ放送がスタートする話題作『チェンソーマン』。そんなチェンソーマンが1/7スケールフィギュアとなって登場!手がけたのは、(株)eStreamが展開するフィギュアブランド「SHIBUYA SCRAMBLE FIGURE」。今回は担当フィギュアディレクター・E.ANIKIさん、原型制作・Design COCOさんに制作秘話を伺いました。

INTERVIEW フィギュアディレクターE.ANIKI・Design COCO

——チェンソーマンをフィギュア化するに至った経緯を教えてください。

E.ANIKI:原作が連載されていた時から、社内でもファンが多くて常に話題になってました。そんな中でキャラデザや戦闘描写などフィギュアと相性が良さそうでかっこいいものになりそうってところから、別作品でMAPPAさんとお仕事させていただいていたこともあって「うちで最高のチェンソーマンを作らせてください!」というのがきっかけでした。

——なぜ今回、チェンソーマンのポーズや装飾をこのようにしたのでしょう?

E.ANIKI:今回はコミックス1巻の書影を再現しているのですが、『チェンソーマン』の作品の世界観や良いところがこの一枚で色濃く表現されているのではないかと企画チームで案が出ました。今連載されている作品でここまで肉片や血が飛び散るものは珍しいと思うので、そういうところの強みやチェンソーマンらしさをダイナミックに表現できるのが1巻の書影かなということでこの絵を立体化しようと思いました。

——血や肉片の残酷描写について、どこまで再現するか話し合いはされましたか?

E.ANIKI:原作の書影だとチェンソーマン自体が返り血を浴びているという表現は描かれていないんですが、デンノコで悪魔をぶった切っているので実際の戦闘シーンだったらこうだよねと想像を膨らませながら付け加えました。あと、フィギュア全体の彩色も1巻の書影みたいに噴き出てる血を藤本タツキ先生らしい蛍光色感強めでいくか、血として赤く表現するかというところを社内やDesign COCOさん、MAPPAさんとも話し合って、かなり迷ったんですがリアルを追求して血の色にしました。

——実際に1巻の表紙では蛍光黄緑ですもんね。

E.ANIKI:僕も原作からずっと読んでいるんですけど、独特の世界観に惹かれました。デンジは悪魔でも人間でもない存在。だけど人間臭いところもあるし、人間では到底できないような残酷なことも平気でできちゃうところがキャラクターとしての魅力かなと思います。自分の本能とか感情に忠実ですよね。

——出血の表現がとてもダイナミックですが、血をクリアパーツで表現しようと思った理由を教えてください。

E.ANIKI:ここはDesign COCOさんの方で良くアレンジしてくださったところではあるんですけど、僕個人の感覚としてはSHIBUYA SCRAMBLE FIGUREが今まで作ってきたものは割とクリアパーツが目立っているというかそれがいい仕事をしているものが多いと思っていまして。過去に弊社が作ってきたフィギュアは美少女系のフィギュアが多くて、ドレスきらびやかなエフェクトにクリアパーツが使われていたりって感じだったんです。男性キャラもやったことがないわけではないんですが、ここまである種グロテスクな方向に寄ったものっていうのは初めてだったので、そびえ立つ出血のエフェクトをクリアパーツにすることによって、僕の思う「渋スクフィギュアらしさ」に通ずるものがある形にできたかなと思います。

——土台のデザインについて、人の手や顔のようなものがありますが、どのようなイメージで構成されたのでしょうか?

E.ANIKI:1巻の書影イラストでは大きな肉の塊に人の要素がちょっと見えるくらいの描かれ方なんですが、立体化する上で土台には実際に作品に登場する悪魔を差し込んでいます。ファンの方が見た時に「これあの悪魔じゃない!?」と思ってもらえると嬉しいです。

Design COCO(CG担当):原作の戦闘シーンの一部を切り取ってみたり、主人公と対峙してきた悪魔などをちりばめることで、フィギュアを観た方々がいままでのストーリーを思い返せるようなイメージでデザインしてみました。人間ベースでデザインされている悪魔が多いのもあってか、手や人の顔が目立つ印象を与えているかもしれません。

——一番再現が難しかったところはどこですか?

Design COCO(CG担当):特に首から上の部分が難しかったです。ディテールが複雑でパーツの位置関係を捉え難かったり、よく観察しないと気が付かない微妙なカーブのある部分が多かったのがそう感じさせた原因だと思っています。首のチェーン部分は特に細かく、本数が多いので作業量的にも大変でした。

Design COCO(彩色担当):血の色の表現です。血の色はその状態(血の量、乾燥度など)によって変わるため、塗装する前にどのような場面なのか、頭の中でシミュレーションしなければなりませんでした。どの状態の血か、敵を切った瞬間の返り血なのか、大量の血が溜まって流れてきたものか、その血が付着している物体の材質は何か、染み込むのか、撥水するのか……など。このように場面を考える際は、いつもリアルな場面の画像を参考にしますが、チェンソー+血の写真はないので、ホラー映画のシーンを大量に観て研究しました。1/7スケールフィギュアでは一番現実に近い状態を表現できたかと思います。

——服とチェンソーの刃で付着した血の質感が異なりますが、違いを表現するコツは?

Design COCO(彩色担当):塗料の濃度、筆やスポンジを活用して彩色しました。服の真ん中部分は大量の血の未乾燥状態を表現したかったので、使う塗料はやや薄めで、鮮やかな赤です。ここは筆でランダムに塗りました。塗れば塗るほど色が濃くなるので、各所血の量の差を重ね塗りの差で表現しました。チェーンソーの刃の部分は乾燥した血を再現したかったので、使った塗料は濃いめで、暗めの赤です。スポンジで塗れば、色が点状になるので、この特長を活用することで小さい血の塊が再現できます。使った手法はこの2種類で、あとは場所によってどちらの方法を多めに使うのかを決めました。

——後頭部や首周りの構造について、参考にされた資料はありますか?

Design COCO(CG担当):基本的には、アニメのキャラクター設定画に合わせて作りました。設定画でわからない部分は、アニメのPVから情報を拾っています。首のチェーンは断面も設定に合わせて全て調整しています。

——血がついて錆びた刃やチェンソーのボディ、歯、持ち手、首のチェーン部分など異なる質感表現について。

Design COCO(彩色担当):チェンソーは大まかに4種に分けて考えました。ボディの光沢プラスチック、持ち手周りの黒い部分、刃、チェンソーのガイドバーです。ボディの光沢プラスチックは、大量のクリアーを塗って、研磨もして光沢感を強めに出しました。持ち手周りの黒い部分もプラスチックですが、本物の写真を見ると光沢とつや消しの両方がありました。今回はチェンソーのボディと差をつけたかったので、つや消しの黒系にしました。ガイドバーの部分はイラストでは青系なので、シルバーの上にアイスシルバーを塗りました。クリアブルーでも試して塗りましたが、金属感が出なかったのでやめました。最後はつや消しを吹いています。刃はシルバーをメインカラーにし、メタルブラックでシャドーを吹きました。本体色完成後、スポンジで錆びや血をつけました。首のチェーン部分と刃はどちらも黒系の金属ですが、微妙な差があります。首は少し赤系なので、シャドーの部分はガンメタルで塗りました。

——立体化する上でアレンジされたところがあれば教えてください。

Design COCO(CG担当):アニメが比較的細身なのに対して、フィギュアポーズのもとになっている原作1巻の表紙は体格が良さそうでしたので、うまい具合に両方の特徴を出せるように調整しました。台座は、ゾンビの悪魔や肉塊、血しぶきなど有機物で造形する指定があったのですが、見栄えが単調になるのが怖かったので、人工物などを加えて画的なアクセントを持たせています。

——チェンソーマンは機械的で人間離れしていますが、腕の筋肉や筋、浮き出る血管でデンジも元は人間だということが実感できてとてもいいですね。身体の造形でこだわられた点があれば教えてください。

Design COCO(CG担当):迫力を出すために、胸部や背中のボリュームを際立たせるように工夫しております。シャツの上からでも、体の筋肉の形状がなんとなく分かるようにしたり、エッジの効いた腕の筋肉の造形を心掛けました。首についても、ただチェーンを配置するのではなく、首周りの筋肉の流れを意識して制作しました。

——原型制作に使用されたPCのスペック、ソフトとよく使用されるブラシ、仮出力・原型出力に使用された3Dプリンタを教えてください。

Design COCO:PCスペックに関しては、CPUはIntel Core i7-7700、メモリ32GBです。
使用ソフトはZBrushで、ブラシはMoveブラシ、SK_Clothブラシ、SK_Slashブラシをよく使用しています。
3DプリンタはFormlabs社のform3を使用しています。

——一番の見どころを教えてください。

E.ANIKI:360°こだわり抜いているので、ここ!というポイントを出すのが難しいのですが、1巻の書影かつチェンソーマンとはどういうものなんだろうっていうところを徹底的に考え、フィギュア全体で表現できたなっという思いがあって、チェンソーマンをよく知らない人、これから原作を読んだり、アニメを見始める人もこのフィギュアをぐるっと見ればどういう作品なのかがわかってもらえると思います。なので、見どころは360度フィギュア全体で作品の世界観をバッチリ表現できているところです!

商品情報

商品名:『チェンソーマン』チェンソーマン 1/7スケールフィギュア
サイズ:1/7スケール PVC製塗装済み完成品
大きさ:高さ281mm×幅241mm×奥行256mm
予約期間:2022年7月5日(火)15:00~2022年11月7日(月)23:59
原型:Design COCO(Art Director:CHIGA)
彩色:Design COCO(Art Director:CHIGA)
ディレクター:E.ANIKI
製造:(株)アルファサテライト
販売元:(株)eStream
価格:46,200円(税込)

©藤本タツキ/集英社・MAPPA

 

Profile

フィギュアディレクター E.ANIKI

株式会社eStreamに所属。SHIBUYA SCRAMBLE FIGUREの企画営業を担当。広島の離島で生まれ育ち一度大阪に進出。その後上京しモノ作りに勤しむ。ディレクターネームの由来は社内で『アニキ』と呼ばれ始めたことがきっかけ。

SHIBUYA SCRAMBLE FIGUR

㈱eStreamが展開する「スケール感」と「躍動感」を意識した高品質高級フィギュアブランド。世界に誇れるIPで世界に誇れるプロダクト(フィギュア)を生み出すことを目指しています。ブランド名には渋谷から世界に文化を発信することに思いを込めています。通称「渋スクフィギュア」。

URL:https://shibuya-scramble-figure.com/

Design COCO

アニメキャラクター等のハイクオリティな等身大・スケールフィギュアの制作を手掛ける制作会社。宮城県仙台市に本社を置き、3D制作から彩色まで社内一貫生産しています。工学的手法を駆使して、常に新しい技術を追い求め、3Dプリンターの開発・販売も行っています。