【原型師INTERVIEW】大迫力のエフェクトとそれに劣らないキャラクター造形『ダイの大冒険』「ARTFX J ポップ」原型制作インタビュー!

スカルプターズ・ラボ注目のフィギュアの原型制作について紹介する【原型師INTERVIEW】!

1989年に連載を開始し、現在も多くのファンに愛されている『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』。主人公「ダイ」とともに旅する大魔道士「ポップ」がコトブキヤ「ARTFX J」シリーズより発売開始!「ARTFX J ポップ」の原型制作について担当原型師・服部達也さんにお話を伺いました。

 

INTERVIEW

——ポップのフィギュア制作決定時はどんな気持ちでしたか?

一言でいえば「やったーーーーーっ!!!!!!!!」です。
『ダイの大冒険』は、ある意味ポップの成長物語という側面もあり、みんなが大好きなキャラクターですから、立体化したいという夢は常に持っていたと思います。それが実現できるのか⁉︎という気持ちでいっぱいでした。社内で事前に企画ミーティングをした時には、ぜひ作りたいです!ということは言っていたと思います。スケジュールとかあるので、かなうかどうかは別ですけど(笑)。

——一番再現が難しかったところはどこですか?

最初からLEDで光る要素は使いましょうということになっていたのですが、どう使うかは決まっていなかったんです。当初はダイと同様、腕から足まで配線して手まわりを光らせる、ということも考えていました。それで制作を進めていきながら企画担当と相談し、LEDは台座へ入れましょう、ポップ単体でもきちんと見れるものにしましょう、と固まっていきました。それでメドローアの接続保持も、当初は腕からだったり次には台座のほうから保持させたり。それで一回台座でメドローアを支えるパターンで版元さまの監修にも提出して、これはなんか違いますよね、というご指摘をいただき(笑)。それでまた悩みながら、データをこねこねしている時に左脚接続がイケるんじゃないか??というゴールに辿り着きました。
ぱっと見だとメドローアという巨大なパーツがどこで支えられているかがわからないし、目立たなくなっているかと思います。本体のほうはさほど悩んだ部分はなかったと思います。

——メドローアの造形について、迫力の出し方やバランスで工夫されたところがあれば教えてください。

こういうフィギュアをつくる時、エフェクトがもはや本体?みたいにもなりがちなんですが、あくまでも主体はキャラクター本体。そこから逆算していって出来上がっていきました。当初メドローアの造形表現もデータ上ではもっと派手に作っていて、今よりもトゲトゲさせていたり、左手側だけでなく右手側にも効果表現を入れていたり、光の尾っぽもかなり変遷しています。あとはエフェクトの隙間をねらい、ポップの顔がちゃんと見えるように、とか計算したり。それで何回データを作り変えていったか(笑)。
でもそのエフェクト表現がトータルで邪魔に見えてしまったら負けなので、ほどよく迫力あるカタチを目指せたと思います。手から放たれたメドローアの瞬発力と迫力を感じていただければ良いのですが。

——傾斜のある台座に片足立ちしていますが、バランスをとるコツは?

これは原型のことだけを考えるとだいたい成立してしまうものなので、企画担当と開発担当とバランスを見ながら調整していった感じです。あ、でもいざ出力してみると、なんか角度が傾きすぎていたりとかはしていたので、そういう調整は最後のほうに手作業でかなり細かく行いましたね、そういえば。出力した原型をノコギリで切ったりして傾斜バランスを微調整しています。

——歯を食いしばっている表情表現のコツは?

いわゆるヒーローキャラクターを作る上では、食いしばり表現は避けられない大事な造形ですので、作り慣れるしかないんです。自分もまだまだですが、口と歯の両方の組み合わせでデータをこねこね調整していく感じでした。あと、ポップに詳しい方ならわかると思うのですが、上唇がぷくっとする独特の表現があるのですが、それも入れこんだつもりです。やりすぎるとおかしくなってしまうので控えめかもですが……。伝わるかな。

——企画・デザイン~立体化までのワークフローと、それぞれにかかったお時間を教えてください。

企画・デザイン、いわゆるポーズ案とか製品イメージみたいな仕様部分は企画担当が手がけます。それを元に原型着手したのは2021年春頃で、原型を工場に納品したのは2022年の春過ぎ。ですから丸1年は確実に使っていることになります。原型制作に使った時間だけでも正味4ヵ月くらいはしっかり使っているのではないでしょうか。その昔、データでつくると原型制作は早くなるはずだ、と思われていた節もありましたが、まったく逆で。やること・やれることが増えすぎてトータルでの時間はかなりかかりますね。目のデカールデータなども今は自分で作っていますし。

——手の表情がとても豊かですが、参考にされたシーンなどがあれば教えてください。

これは原作のシグマ戦を参考にしています。制作している時はまだアニメでは放映されていない場面でした。手の表情は顔の表情と同じくらいとても大事ですから、原作で描かれている細かいニュアンスを丁寧に拾って追っています。気になる方はぜひ原作のコマと見比べてみてください。あと手袋のシワ表現もがんばっています。

——衣服のシワがとてもリアルですが、工夫された点があれば教えてください。また、参考資料などはありましたか?

自分の場合はシワの資料は頭の中に入れ込んでいます。日常的にシワ観察というか。シワの資料を直接参照しながらつくることはあまり無いです。リアルと感じていただけるのはとても嬉しい反面、実はリアルじゃないですよと思っています。
また、イラストや設定画に入っているシワ表現は確実に追っているつもりです。あとはやっぱりフィギュアですので、“映え”るシワになるように、ということは常に心がけています。

—— 制作に使用されたツール、ソフトとよく使用されるブラシ、3Dプリンタを教えてください。

ソフトはZBrushのみ。よく使うブラシは「Move Topological」、榊馨さん作の「SK_Slash」「SK_Cloth」です。この3つが自分にとっては超大事です。仮出力にはForm2も使いますが、今回は全てProJet MJP 3600と同2500で出力しました。社内で毎日稼働させているすんごいマシンです。

——仮出力は何回ほど行われたのでしょうか?重点的に修正された部分などがあれば教えてください。

仮出力は自分の場合はミニサイズでまず1回出します。10cmとかのいわゆるミニチュア版で。材料も食わないし小さくてもかなり精巧に出るので助かっています。全体の把握もできますしプリンタさまさまです。後は基本、実寸サイズの仮出力を1回やってから本出力なんですが、ポップ本体はそこでパーツを分割済みにしていきなり本出力をしたような……(それでもいくつかのパーツは再出力したりしますが)。エフェクトと台座の出力はもうちょっとやってたと思います。もう回数はあまり覚えていません(笑)。

——一番の見どころを教えてください。

一番かどうかはわからないのですが、実は通常版の髪型と限定版の髪型は反転した形になっているんですよ。よくアニメやマンガで見る、髪型のキメ角度がカメラアングルでぱっと反転しちゃうやつ。それをひそかに再現してみました。反転が作りやすいデータ制作ならではかもしれません。そしてまたポップのフィギュアの決定版となるように挑んだ商品です。ダイやヒュンケル、マァムと合わせて並べたり、ハドラーと対峙させたりすることでダイ大の世界観がしっかり見えてくるようにしてあるのもとても大きなポイントです。

——購入をご検討中のみなさまに一言お願いします。

今回触れられていない泣きのゴメちゃんもしっかり作っています(泣きのしずくの飛び散り方がいいんですよ)ので、ぜひコトブキヤ限定版もチェックしていただきたいです。そして今回のインタビューがみなさまのご購入につながるととても嬉しいです!

商品情報

製品名:ARTFX J ポップ
価格:17,600円(税込)
仕様:PVC塗装済完成品フィギュア
サイズ:全高約350mm(台座含む)
原型制作:服部達也
発売予定:2022年10月予定

©三条陸、稲田浩司/集英社・ダイの大冒険製作委員会・テレビ東京 ©SQUARE ENIX CO., LTD.

 

Profile

服部達也(はっとり たつや)

神奈川県出身。2004年壽屋入社。以降同社のワンコインフィギュアシリーズ、esシリーズ、ARTFXシリーズ、ARTFX Jシリーズなどディフォルメからリアル系まで多数手掛ける。『ダイの大冒険』ARTFX Jシリーズでは「ポップ」のほか、「ダイ」と「バラン」の原型製作を担当。

Twitter:@Tatsuya_Hattori