藝祭2025で注目を集め、6冠に輝いた『藝大門担ぎ蛙」、制作舞台裏を公開!

毎年、9月の最初の週末に行われる東京藝術大学の学園祭、「藝祭」。

そのこけら落としが、初日の朝に始まる「藝祭御輿」の練り歩きだ。さかのぼること明治時代というこの伝統の御輿制作は、新一年生全員参加が必須。
美術学部と音楽学部が協同でチームを組み、ひと夏をかけて制作される。御輿だけでなく、名物の法被や幟もデザインから染め、縫いまで手作りで競い合う。今回、この藝祭御輿でひときわ注目を集めたのがレンガひとつひとつまで再現した藝大門をかつぐ、

藝大門担ぎ蛙

この御輿は藝祭開口一番で、岡倉天心・北茨城市長賞、江戸川区あーとtoともに賞、マケット賞、サイバーエージェント賞、法被課賞、ゐの市賞の6冠に輝いた。こちらを制作した「デザイン・芸術学・作曲・弦楽器」チームの広報・原作・副隊長の足立心玲さんに、メイキング工程をうかがった。

 

左:広報・原作・副隊長の足立心玲さん(デザイン科1年生)、右:隊長の押部真成さん(デザイン科1年生)。

インタビュー

今回、御輿の制作に携わったのは50名ほど。デザイン/芸学/作曲/弦楽学科で118人ほどいるチームを、御輿係と法被係の半分に分けて担当した。御輿の造形はデザイン科とか芸学科がメインだが、作曲弦楽も手伝って制作。

 
開口一番の最初を飾った登場シーン。

 


完成度を比較するために一時的に置いただけなので点字ブロックや動線の心配はなかった。

——藝大御輿は学科を超えたチームで作成されていますが、デザイン科ならではの強みは?

デザイン科はオールマイティーにこなせるのが結構強みかな。デザイン科は立体も色相などの色の勉強もしますし、あとはデザインなのでどうやったら人によく見せられるかという研究もしていて、それが結構良かったんじゃないかなって思います。

——「藝大門担ぎ蛙」のテーマを教えてください。

「蛙」は自分たち藝大生を表しています。藝大生が藝大門という歴史や伝統をひっくり返してやろうという。コンセプトは実はもう一つあって、それが「上野」なんです。この蛙はアズマヒキガエルですが、藝大の周辺によくいて、だから主人公という感じで。不忍池の蓮、藝大門、アズマヒキガエルという全てが上野の街で収まるというのがもう一つのコンセプトです。

——このテーマを考えたのは?

自分です。神輿のデザインをチーム内で募集して、60種類くらい案が出たんですけど、そこから投票で決まりました。

——ワークフロー・デザインについて。

まずデザイン画を描きます。これはアクリル絵の具でアナログに描いたものにデジタルでブラッシュアップをしています。清書みたいな感じで描いたので6時間ぐらいかけて描きました。

デザイン科足立さんによるデザイン画。

——マケットについて教えてください。

本マケットと仮マケットがあって、仮マケットは水粘土です。色々な形を試してどういう形がカッコよく見えるか、光に当たった時に一番美しく見える立体を探すためにまず水粘土で設計をします。マケットが基準となるため、きちんと完成予定の形まで作ろうとなっていたので、制作には1ヶ月くらいかかっています。
その後にそれと全く同じ本マケットを石粉粘土で作りました。水粘土だと固まって収縮して保管が難しいので。石粉粘土で同じものを作り、着色して本マケットを作りました。サイズは1/10です。


デザイン科足立さんによる水粘土の仮マケット。

石粉粘土でできた本マケット。

——全く同じものを作るのですね。

結構難しかったんですけど、水平器を使ってどの高さにどれがあるというのを細かくやって正確に写しとって作りました。藝大には「マケット室」という部屋があって後世にちゃんと残してくれるので、それはちゃんと作ろうという決意で作っています。
本物を見たほうが観察できるからいいんじゃないかと、カエルをそのへんで3匹捕まえて、みんなで名前をつけて1ヶ月くらい大きい水槽で飼っていました。名前はゲデオ、ケツマロ、シャアです。


本物の蛙との比較。乗っているのはケツマロ。

——入学当初からマケットを学校に収蔵するぞという心意気があったのですか?

神輿の作り方は入学時は知らなかったので、そういうふうには思っていなかったですけど、御輿には深く関わりたいなと思っていました。

——マケットの藝大門も水粘土ですか?

藝大門はスタイロフォームや紙で作っています。スタイロフォームを切り出して模様をつけて、「東京藝術大学」部分はレーザーカッターでMDFを加工して作り、粘土の色にまとめて塗っています。藝大門も仮・本マケット用に2個作りました。


スタイロフォームを切り出した藝大門(左)、本マケットと仮マケットの比較(中)、藝大門上部のマケット(右)。

 

——設計について。

御輿は3メートルという高さ制限があるので、この御輿も藝大門の一番上の先端までで3メートルちょうどです。仮マケットの時に高さ制限を超えないように、細かく設計をして。
実際の発泡スチロールは1800×900×450cmですが、これも1/10にカットして、どう切ったら一番早く、かつ低コストで進むか、強度が増すかというのを緻密に計算しながら考えて設計し、実際に組んで見て必要な数を割り出しました。17個ぐらい使っています。

 

緻密な計算による設計図と、1/10にカットされた発泡スチロールを組んで作られた設計モデル。

——人が乗ることも考えて作られてるんですか?

最終的に隊長が乗るので、カエルの背中あたりに足掛けになるような窪みを作ったり、藝大門に棒を刺して持ち手になるように作っています。

——御輿の制作について。

最初にテントを作って鉄パイプを組んでクランプとかで止めていって。
発泡スチロールを運び込み、大まかに切る必要があるところは最初にざっくりとカットし、あとは設計モデルに合わせて個別に切ったものを組んでいます。

   
かつぎ棒と心棒づくり(左)、発泡スチロールを運ぶ。設計モデル通りに積み上げられた発泡。


発泡スチロールの切り出し。

——テクスチャーはどう作りましたか?

発砲は削ってもつぶつぶが残るので、パテで処理をしました。ゴムのパテや水洗のパテなど色々使ってみてツルツル感が欲しいところはゴムパテでツルツルさせ、ざらざらしたいところはスーパーパテXを塗った後に発泡スチロールなど面があるもので叩いて立たせて質感を出しています。

——塗装の順番を教えてください。

まず発泡スチロールコートをしてから、下地を発泡スチロールに塗る専用の塗料をデカいエアスプレーみたいなもの塗ります。浅井塗料のボタンカラーという塗料ですね。
デザ芸の下地は特殊で、いろんな色で塗っているんです。生物は半透明なので、光が透過して出てくるところが一番彩度が高い色になり、色相は影面にいくと青にふれる現象があるのでそれを利用しながら上面が黄色っぽく、立面が赤っぽく、影面は青っぽくなるように最初の段階で大雑把に色を載せます。立面は光が垂直に当たるところ、光と影の境目みたいなところです。
その上から基本色のちょっと青っぽい色をスポンジでペタペタしていって下地がちょうどよく残るくらいで塗りました。若干影側と光側で色は変えていますが、ほぼ同じ色で全体を塗っています。基本的には制作は隊長が仕切りますが、色に関しては自分が担当していました。

下地(上)の上から本番の色を塗っていく。 

——仕上げ

基本色が塗れたら耐水クリアみたいなコート材を全体的にかけて、ツヤっとしているっところにはツヤあり、影のところには艶消しで引き込ませて立体感を強めてやりました。藝大門に感じては全部艶消しでやって質感に差ができるようにしたり。目はクレオスの水性のニスでコーティングして、ツルツル感がもっと増すようにしています。


藝大門の制作と塗装(上)、目の仕上げ(下)。

——それぞれかかったお時間を教えてください。

スタート(仮マケット作り)は7月に入ってからだったと思います。仮マケットが1ヶ月、本制作が1ヶ月くらい。仮マケットがしっかりできたので、本マケットと本制作は並行しながらやってました。削り出しは8/17〜8/27で、そこから塗装です。塗装は1週間もないくらいで。ひと夏まるまるかけて、1日20人くらいのシフトを組んでローテーションしてやっていました。

——制作エピソードなどお聞かせください

普段はしないグループワークを協力してやるということで、結構ぶつかりはありましたね。口論みたいなのはちょっと(笑)。形を合わせるのにどこが間違っていてどこが合っているかの判断が、ものが大きくて遠目で見ないと分からないため、難しくて。あとはコンセプトがみんなバラバラになっちゃいけないんですけど、それが人によって解釈が違うので「これを入れたほうがいい」というのがあったりして。
最終的に隊長が決定したり、みんなの案どういう思いでそういう案なのかをまとめてみんなが納得する形になるか、一つになるかを隊長、副隊長3人、会計2人の幹部6人でずっと会議していました。
ただ、ぶつかることでお互いの信頼関係が結構芽生えましたし、どういう人がどんなことが得意なのか、結果的にうまくプロデュースできたのがすごくよかったなと思います。それぞれの人の熱意も結構違うから、それもうまく一つの方向に向かってよかったなと思っています。

——出来上がった時の感想は?

すごいいいものができたな、と感慨深いものがありました。自分たちのかっこよくない?って。この神輿で、ものを作ることの楽しさが伝わればいいかなって一番に思います。

——このお御輿は、引き取り手がいない場合、壊されるそうですね。

はい。自分たちの御輿は、一夏かけて全員が全力を尽くして作ったもので、この形を残したいという気持ちが大きいのです。
どなたか引き取ってくれたら嬉しいです!

 

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問い合わせ先:

東京藝術大学デザイン科 学部1年 押部真成
✉️s1125143@fa.geidai.ac.jp