映画の中の人が作るとこうなる!「ハリー・ポッター」の“本物世界”に没入できるメイキング・オブ・ハリー・ポッター開幕

テキスト・神武団四郎/写真・岡本麻衣

「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京— メイキング・オブ・ハリー・ポッター」が6月16日(金)、豊島園にグランド・オープンする。本施設は、『ハリー・ポッター』や『ファンタスティック・ビースト』シリーズの映画制作の舞台裏を体験できる、ウォークスルー型エンターテイメント施設。6月6日に行われたプレス向け撮影会のレポートをお届けする。

としまえん遊園地の跡地に建てられた「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京— メイキング・オブ・ハリー・ポッター」。シンプルだがセンスのよい外観で、見た目以上に内部は広い。

 

 

REPORT

“メイキング・オブ”の名前の通り、展示されているのはセットや小道具、衣装、ミニチュアなど魔法ワールドを彩ったアートワークの数々。ホグワーツ魔法魔術学校の大広間から男子寮、魔法省、ダイアゴン横丁からキングス・クロス駅9と3/4番線など名場面の舞台裏が、実際にシリーズを手がけた映画スタッフたちにより再現されている。カメラに映らなかった別アングルから名場面を味わえる、ということだ。撮影現場のほかにもクリーチャー造形、編集やVFXなどポスプロまで映画作りの現場を紹介。『ハリー・ポッター』『ファンタスティック・ビースト』ファンはもちろん、映画ファンならぜひ押さえておきたい施設である。

ホグワーツ魔法魔術学校 大広間

入口からシアターを抜けツアー会場に入ると目の前にそびえ立つ巨大な扉。荘厳な“オックフフォード・アーチ”の扉が開くと、そこに広がるのがホグワーツ魔法魔術学校の大広間だ。映画の中では祝宴やパーティー、魔法対決などさまざまなシーンに使われたホグワーツ城を象徴する場所である。部屋の両側には食器類が置かれた長テーブルが並び、正面奥の壇上にはダンブルドア校長はじめ教職員たちのマネキンたち。広さはもちろん、圧倒されるのはその高さで、柱を見上げると上部には寮を象徴する動物をかたどった燭台が設置されている。ホグワーツの歴史や威厳が漂う、セットや調度品の作り込みやエイジングに映画スタッフのこだわりが伺える。


ツアーの最初の展示はホグワーツ魔法魔術学校の大広間。石畳の床や細長い窓、木製の羽目板の壁などは英国オックスフォード大学のクライスト・チャーチ・カレッジからインスピレーションを得てデザインされた。

 

教檀にはホグワーツの教職員たちに似せたマネキンに衣装を着せて展示。左からマクゴナガル先生、ダンブルドア校長、スネイプ先生。他にもハグリッド、フリットウィック先生、トレローニー先生、マダム・ポンフリーが並んでいる。ダンブルドア校長の演台は長年の使用により溶け固まったロウに覆われているという設定で、本物の金でコーティングされている。

 

重厚な大広間の入口の扉(広間側から撮影)扉のデザインもオックスフォード大学がモデルで、オックフフォード・アーチと呼ばれるデザインが採用された。

 


大広間の柱の上部に取り付けられた大燭台は、4つの寮グリフィンドール(ライオン)、ハッフルパフ(アナグマ)、スリザリン(ヘビ)、レイブンクロー(ワシ)を象徴する動物をかたどったもの。

 

グリフィンドールの談話室&男子寮

ダーズリー家の居候として肩身の狭い思いをしてきたハリーが「人生で初めて体験する家」というコンセプトでデザインされた、グリフィンドール寮生のための談話室。照明は温かな色合いで統一し、居心地のよい空間として完成した。 談話室の横には男子寮のセットが展示されている。談話室から伸びたらせん状の階段の上にある設定で、就寝前にベッドに入ったハリーがロンたちと語り合う姿はシリーズを通し何度も描かれてきた。面白いのがベッドのサイズ。第1作『ハリー・ポッターと賢者の石』(01)の撮影時、当時10〜11歳だったダニエル・ラドクリフ(ハリー)やルパート・グリント(ロン)たちに合わせて作られたベッドがその後もシリーズで使われた。シリーズを重ねるごとに身長が伸びるキャストに合わせ、カメラアングルを工夫しながら撮影が行われた。

ホグワーツ魔法魔術学校にはグリフィンドール、ハッフルパフ、スリザリン、レイブンクローの4つの寮があり、生徒たちは組み分け帽子によって所属する寮を割り振られる。それぞれの寮の制服も展示されている。写真は上からグリフィンドール、ハッフルパフ、スリザリン、レイブンクロー。

 


談話室のセットは華やかさより家庭的な快適さを優先。ポイントは大きな暖炉(上写真右側)と使い古された家具類。赤いベルベットのソファーはバネを叩いてダメにして、数十年も使い込んでいるような風合いを作りだした。セットはシリーズを通し使用され、はげた部分の塗装など最小限の修正の他は手を加えていない。談話室の横にあるらせん状の階段が寮の各部屋に繫がる設定になっている。

 


ベッドが並ぶ男子寮のセット。箱形の四柱式ベッドにカーテンを付けて包み込むようなデザインになっている。ハリーの避難場所であることを示すため、広大なホグワーツとは対照的に意図的に狭い空間にされた。

 


寮の入り口。

 

クィディッチエクスペリエンス

魔法界のスポーツ、クィディッチのコーナーには、ホグワーツ城の書き割りの前に観客スタンドが設置されている。ここは体験型展示スペースになっており、ツアー客が選手たちに声援を送る姿をカメラで撮影。映画の中の試合シーンに組み込んだ映像がモニターに表示される。またクィディッチのユニフォームや小道具類も展示されている。他にもグリーンバックの前でほうきに乗り、背景を合成した映像を楽しめる“ブルームエクスペリエンス”や、ホグワーツの動く肖像画になった写真が撮れる、“ホグワーツの動く肖像画”などの体験スペースもある。

 


ホグワーツ城の書き割りの前に設置されたクィディッチの観客スタンド。競技場じたいは巨大に設定されたため、ほとんどのシーンがCGで作成、必要に応じて部分的にセットが作られた。ツアー客がこのスタンドから声援を送る姿を撮影し、本篇映像に組み込んだものを壁のモニターで観ることができる。

 

バックロット

施設の裏にあるバックロット(撮影スタジオの屋外撮影スペースの意味)には大型のセットが並んでいる。まず目をひくのが、プリベット通り4番地にあるハリーが育ったダーズリー家。室内に入ることができ、映画のワンシーンを再現したリビングや、階段下にあるハリーの部屋も見学できる。『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(04)で初登場したホグワーツ橋のセットは、映画ではCGで描き足した部分も再現され、実際に橋の上を渡ることが可能だ。ほかにも『ハリー・ポッターと賢者の石』の巨大な魔法使いのチェスの駒、3階建ての夜の騎士バス、ハリーがウェズニー兄弟と乗った空飛ぶフォード・アングリアやハグリッドのサイドカーも置かれている。


バックロットに設置されたホグワーツ橋のセット。初登場は『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』で、撮影の際は橋の一部のみが建設され、ほかの部分はCGで制作された。展示されているのは拡張したもので、橋を歩くこともできる。

 


『ハリー・ポッターと賢者の石』に登場した巨大な魔法使いのチェスの駒。チェス盤のマス目は約1.8メートルにも及んだ。

 


ハリーにとっての唯一の親戚であるダーズリー家のセット。階段下の物置を改造したハリーの部屋のセットが見られる他、たくさんの封筒が舞い飛ぶ『ハリー・ポッターと賢者の石』、マージおばさんが風船のように膨らんで宙に浮く『ハリーポッターとアズカバンの囚人』の1シーンが再現されている。

 


『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』に登場した紫色の夜の騎士バス。どんな狭い場所も通り抜け可能で、迷子になった魔法使いを乗せる。高さは約7メートル、ロンドンの2階建バスを3台分のパーツをつなぎ合わせて制作された。

 

9と3/4番線ホグワーツ特急

このツアーの目玉のひとつがキングス・クロス駅9と3/4番線ホームに停車しているホグワーツ特急だ。車体はイギリスの蒸気機関車を改造したもので、白い煙をあげながらホームにたたずむ姿は大迫力。停車した列車の横のレンガの壁には壁を通り抜けようとするカートが飾られ、そんな遊び心も雰囲気を盛り上げている。車内の見学も可能で、毎回のようにオープニングのひと幕を飾る6人席の各コンパートメントには、キャストの衣装を着たマネキンが飾られている。


キングス・クロス駅9と3/4番線ホーム のセット。展示されているホグワーツ特急は1929年に制作された蒸気機関車を改造したもの。本物ならではの重量感が味わえる。煙突や車輪付近の排気管から白い蒸気を吹き出す仕組み。壁には「通り抜け途中」のカートを設置という遊び心が楽しい。

 


3人がけの座席が向かい合ったコンパートメント。『ハリー・ポッターと賢者の石』の製作時、クリス・コロンバス監督は大好きな映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』に出てくるのと同じコンパートメントにというリクエストを出した結果生まれたデザイン。

 


9と3/4番エリアには、「スタジオツアー東京」オリジナルのセットとして『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』に登場する列車グレート・ウイザーディング・エクスプレスの車内セットが展示されている。

 

魔法省

圧倒的スケール感が味わえる魔法省のオフィス棟は、「スタジオツアー東京」にしかない大型セット。19世紀ビクトリア様式の建造物をモデルにデザインされ、壁に緑や赤のタイルが敷きつめられた美しい外観を持っている。セット中央には噴水と魔法は力なり(Magic is Might)と刻まれた銅像がそびえ立ち、その横には『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(07)に登場した、お菓子が並んだ“アトリウムの売店”も。魔法省の職員たちが通勤に使う3メートルの暖炉も設置され、スモークや照明効果を効かせた体験写真や動画を撮影できる。魔法省の展示スペースは照明が抑えられ、幻想的な美しさが際立っている。


『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』のセットを再現した魔法省の巨大なセット。高さ約9メートルで、職員たちの部屋まで再現されている。19世紀に建てられたビクトリア様式の建造物がモデルで、壁に貼られた赤と緑のタイルはラッカー塗装木製。シリーズを通してもっとも手間がかかったセットのひとつだった。魔法省の中央に立つ「魔法は力なり」と書かれた巨大な銅像は、スチロール材を彫り手作業で色づけされた。

 


魔法省の職員が移動に使う巨大な暖炉は高さ3メートル超。スモークや照明効果の仕掛けがある記念撮影スポット。

 


魔法省が重要な舞台になるファンタスティック・ビースト』の衣装も展示されている。左からリタ・レストレンジ、ニュート・スキャマンダー、テセウス・スキャマンダー、パイアス・シックネス、ドローレス・アンブリッジ、コーバン・ヤックスリー。

 


魔法使いのニュースを扱うイギリスの日刊予言者新聞のスタンド。イギリス在住の魔法使いはみんな読んでいる?

 


『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』に登場した、おいしそうなお菓子が並ぶアトリウムの売店。

 


魔法省で使われている書類ファイルの山。

 

ダイアゴン横丁

世界観に浸れるという意味では、ロンドンのパブの裏口から出入りできるダイアゴン横丁も見どころ。さまざまな商店がひしめき合う横丁は、壁の位置や店の並び、建物全体の角度を微妙に変えることで完全な街並みになった『ハリー・ポッターと謎のプリンス』(09)の背とを再現。石畳の床や狭い路地まで作り込まれており、魔法界に迷い込んだ気分が味わえる。


グリンゴッツ銀行横からダイアゴン横丁の展示スペースがはじまる。突き当たりから逆に進むと『ハリー・ポッターと賢者の石』のハリーの動線が再現できる。

 


ゴブリンが経営するグリンゴッツ銀行。ハリーの口座も作られていた。


「杖が魔法使いを選ぶ」魔法使いの杖の専門店、オリバンダーの店。

 


ペンやインク壺など筆記用具を扱うスクリブルス筆記道具店。

 


不気味な原料が並ぶ薬屋さんスラッグ・アンド・ジガーズ アポセカリーとミスター マルペッパーの薬問屋。

 


思わず入ってみたくなるワイズエーカー魔法用品店。

 


ハリーも御用達のフローリアン・フォーテスキュー・アイスクリームパーラー。

 


ハグリッドがハリーにヘドウィグをプレゼントしたイーロップのふくろう百貨店。

 


ハリーたちが教科書を買っていた魔法使いのための本屋さんフローリシュ・アンド・ブロッツ書店。

 


口から延々と吐き続けるゲーゲートローチはウィーズリー・ウィザード・ウィーズで元気に稼働中。

 


普段着から式服、魔法使い用のローブまで何でもそろうマダム・マルキンの洋装店。

 


ちょっぴり不気味な魔法動物専門のペットショップ。

 

ほかにもダンブルドアの校長室やスリザリンの談話室、ハグリッドの小屋などセット類、『ハリー・ポッターと賢者の石』の撮影時に制作されたホグワーツ魔法学校の巨大なミニチュアセット、クリーチャー作りの舞台裏を紹介したクリーチャーショップ、クリーチャーFXやVFXを中心にした『ファンタスティック・ビースト』のメイキング映像など、多彩な展示コーナーが用意されている。


グリーンバックの前でほうきにまたがり、ロンドンの街やホグワーツ城のまわりを飛び回る合成映像が楽しめるブルームエクスペリエンス。映画の映像と合わせて編集した映像はお土産にできる。

 

展示以外にも、7,000以上のグッズが並ぶ世界最大規模のハリー・ポッターショップ“スタジオツアーショップ”が設けられ、「スタジオツアー東京」限定アイテムも販売される。魔法ワールドをイメージしたスイーツが味わえるチョコレートフロッグカフェ、英国の伝統的な料理が楽しめるフードホール、魔法ワールドを代表する飲み物バタービールを提供するバタービールバーも。ちなみにバタービールのジョッキ風マグカップはお土産にできる(USJとは別のデザイン)。


世界最大のハリー・ポッターショップ“スタジオツアーショップ”。映画の小道具で飾られた14のテーマ別セクションに7,000以上の関連商品が並んでいる。ダイアゴン横丁のお店をモチーフにしたレイアウトも楽しい。

 


東京限定アイテムのひとつ、ヘドウィグがデザインされた杖。

 

魔法ワールドファンや映画ファンなら時間を忘れて楽しめる本ツアー、イマジネーション豊かなその世界に魔法ワールド未経験者もきっと魅了されるはず。体験すればもういちど映画が観たくなる、映画を観るともういちどツアーに行きたくなる、魔法ワールドをより深く味わえるエンターテイメント施設だ。

施設概要

ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 – メイキング・オブ・ハリー・ポッター

オープン日:2023年6月16日(金)
住所:〒179-0074 東京都練馬区春日町1-1-7
西武豊島線「豊島園駅」から徒歩2分、または都営地下鉄大江戸線「豊島園駅」から徒歩2分

<チケット情報>
予約方法:公式WEBサイト
※事前予約制
価格:大人 6,300円、中人(中・高校生) 5,200円、小人(4歳~小学生) 3,800円
※日時指定予約制

 

‘Wizarding World’ and all related names, characters and indicia are trademarks of and © Warner Bros.
Entertainment Inc. – Wizarding World publishing rights © J.K. Rowling.

 

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