【原型師INTERVIEW】歴史に残るような巨大レギオンを造る。「幻の究極造形シリーズ」制作秘話インタビュー!

映画『ガメラ2 レギオン襲来』ポスターをイメージして立体化された巨大レギオンが、「CCPJAPAN 幻の究極造形」シリーズより登場!本作は「ガレージキット」と「塗装済み完成品」の2種類を展開予定。さらに全60パーツ中、約50個が磁石内蔵・軸打処理済みとなっているため接着剤無しでも組み立てが可能に。今回、原型師・峠野ススキさんとCCPJAPANの企画&塗装担当・田尻和也さんに制作秘話を伺いました!

 

INTERVIEW

——制作の経緯を教えてください。

企画&塗装担当・田尻和也(以下、田尻):もともと、僕とススキさんがガレージキットフィニッシャーと原型師というところで個人的な繋がりがあり、その流れで「CCPJAPANで“幻の究極造形”の原型を担当してみませんか?」と声をかけさせていただきました。せっかくであれば「歴史に残るような巨大レギオンを造りたい。」そんな目標を掲げてこの企画はスタート致しました。

——映画『ガメラ2 レギオン襲来』ポスターイメージで制作されたのでしょうか?

田尻:本企画の最初の打ち合わせの際に、ススキさんからイメージスケッチを頂きました。そのポスター再現のポージングが斬新で格好良く、こちらのスケッチをもとに進行させて頂くこととなりました。

原型師・峠野ススキ(以下、峠野):最初原型のお話をいただいた際は、ポスターバージョンではなく『ガメラ2』のレギオンの原型の依頼だったんです。アレンジを加えて欲しいということもあって、割と自由に作らせていただくことになりまして。僕の好きなポスターバージョンにしようかなと思い、思い切って全体の雰囲気をポスターに寄せて作りました。

レギオン デザインイメージ

——ポーズ案はたくさん出されていたんですか?

峠野:ポスターバージョンにしようと決めて作り始めたので、そこまでポーズ案は増やしませんでした。アレンジを加えると加えただけそのキャラクターらしさから離れてしまうので、そこから行きすぎないためにも馴染みのあるポスターのポーズにしました。

——オリジナルデザインとアレンジの両立について、ファンが納得するデザインアレンジにするためにどのように考えていますか?

峠野:とても難しくデザインアレンジの面白いところでもあるんですけど、「ここがレギオンらしさだろう」という譲れないポイントがいくつかあります。その部分は押さえつつ、オリジナルのファンに拒否反応を抱かせることのないようなデザインに自分なりに考えて落とし込んでいます。例えば、胸にある赤い卵はほぼ変えずにそのまま使っています。

田尻レギオンをアレンジするにあたり、初期段階における上半身と下半身の大きさのバランスから、頭部をもう少し長くした方がより劇中に近い雰囲気になるのではないかといった細かい部分まで、都度ススキさんと話し合いながら進行させて頂きました。本編のスーツの印象から乖離し過ぎず、かつススキさんらしさを前面に押し出せる、そんなレギオンを目指して制作しました。

——ひとつひとつ作られたんですか?

峠野:ZBrushなので複製しながら、ひとつずつ形状を調整して作りました。

——特に峠野さんらしさが出ているところは?

田尻:本来のレギオンスーツの前足は靴をはいたようなデザインになっているのですが、ススキさんはあえて逆関節にし、甲殻類のようにしています。理由をお聞きすると、「ナポレオンの肖像画の、馬の振り上げている足部分を参考にしました。」とのお答えがあり、そういった説得力あるエピソードをお聞きし、このデザインにて決定させて頂くこととなりました。そういったススキさんならではの造形が各部に詰まっているので、是非発見して頂けると嬉しいですね。

——お腹の造形について。

峠野卵の部分と足が生えている部分の二箇所に分かれていると思うんですけど、卵の部分は劇中の形に寄せていて、そこから下は甲殻の間に毛が密集している形になっています。ポスター版には下半身が描かれていないので、そこを想像で作るしかなかったのが難しかった点ですね。原作のスーツを参考にしながらいい感じに融合させた造形を意識しました。お腹部分は「王蟲」みたいな感じですかね。腹部には結構昆虫の要素を入れています。

——卵は何個ありますか?

峠野:数えていたんですけど忘れちゃいました(笑)。映画とほぼ同じ数だと思います。

——背中側もアレンジを加えている?

峠野:うしろも結構アレンジを加えてイメチェンして作っています。背中のトゲトゲも原作のスーツにはないし、わりとツルッとしていたんですけど、昆虫や甲殻類を意識してトゲトゲを増やしました。一見ツルツルした表面もあったりするんですが、拡大すると毛が密集していたりするので、肉眼では見えにくいところを拡大して可視化させて、パっと見でわかるようなゴツさをアレンジで加えました。

——テクスチャがすごく入っているのにシルエットもかっこよく仕上がっていますね!

峠野:ディテールは結構入れていますが、ポスターのシルエットをなるべく崩さないように意識しました。その辺を崩してしまうとレギオンらしさも薄れていってしまうので…。

——一番こだわられたところを教えてください。

峠野:全部なんですけど、ポージングとレギオンのバランスですね。全体のバランスがポスターではわからないので、違和感が生じないように作らなければいけないのが難しく、こだわったポイントですね。あとはポスター版が煽りの構図なのでフィギュアでもそう見えるように、ポスター版より若干上向きに作りました。オーバーにうしろに下げてのけぞった形にしたことで、ちょっとポスターイメージに寄せられたのかなと思います。
 
田尻:元が平面のイラストですので、立体化した際のバランスには悩みました。初期段階は下半身がもう少し大きい印象もありましたね。そういったときに、もう少し下半身を縮めた方が上半身の迫力が出て良いのではないか、そういったお話を都度させて頂きました。
 
峠野:田尻さんと試行錯誤しながらバランスを整えていきましたね。

——峠野さんの造形は頭が小さいイメージがありますが……。

峠野:最近、僕のトレンドが頭が大きめなので…好きですね(笑)。顔は命なので大きめにしています。

——今回のレギオンを作るときに意識したことは?

峠野レギオンの造形物って今までそこまでアグレッシブで動きのあるフィギュアは少なくて、そういった意味で差別化を図るために躍動感とか生きている生物感を意識しました。それもあって表面のディテール的要素もふんだんに詰め込みました。

——台座について。

峠野:台座の部分は『ガメラ2』の足利市決戦の舞台をイメージしました。劇中に登場する工場や建物を配置して、臨場感のある仕上がりにしました。
 
田尻:台座に関してもエピソードがありまして。本来、台座を製作する予定はありませんでした。けれども、データ上で透明の台に置く仕様で進めていた際に、ただ台に乗せているだけのような印象が出てしまい…。今回のレギオンは浮き上がっている雰囲気が肝ですので、そういった悩みをススキさんと相談した際に「せっかくですし台座を作りましょう。」という話になりました。工場にのしかかるようにしたら自然ではないか、側面を平らにせず崖のようにしたらより映えるのではないか、そんな案もお互いに出しながら進めさせて頂きました。結果としては、ススキさんのおかげでとても迫力のある仕上がりになったのではないかと思います。

——峠野さんの案で60パーツにされたのでしょうか?

田尻:ススキさんにデータ上で丁寧に分割して頂き、それをそのままガレージキット分割に流用させて頂きました。製造工場様も素晴らしい技術を持っておりますので、部分的に一体にし、パーツ数を減らすことも考えました。けれども、非常に複雑な造形のため、買って頂くお客様のことも考慮し、塗り易さを優先した分割とさせて頂いております。

峠野:なかなか複雑な造形をしていたので、工場でも無理なく複製できるようにというのは考えながら…。あとは商品を購入してくださった方が塗装しやすいように分割してあるっていうのも理由の1つです。

——目は別パーツを使用している?

田尻:目はクリアパーツを使用しています。デコマスを塗装する際は目の裏側からハイライトの塗装を行い、本当に光っているかのような印象に仕上げております。こちらは、CCPJAPANがウルトラマンを塗装する際に行う伝統の手法でもあります。

——大きさはどれくらいあるのでしょうか?

田尻:全高が40cm、横幅は45cm、奥行きは30cmです。
以前CCPJAPANより販売させて頂いた「AMCシリーズ ガメラ(1996)ポスターカラーVer.」が全高約20cmで、そちらに合わせたスケールとなっております。ただレギオンは尻尾などがなく四方に広がったフォルムのため、見た目で感じるボリュームに対し、意外とコンパクトに収まるサイズ感になっているのではないかと思います。

——この大きさが塗れるといいですよね!

田尻:ほぼ全てのパーツにマグネットや軸を内蔵しており、下地処理済み・バリやパーティングラインも処理済みと塗りやすい仕様となっているため、是非ガレージキットを購入された方には楽しんで頂ければと思います。僕がデコマスを担当させて頂いた彩色版も発売予定ですので、完成品ユーザーの方々にも喜んで頂ければ嬉しいです。

——資料を見て作成されたのでしょうか?

峠野レギオン自体は資料が少なくて既存の販売されているフィギュアを参考にしたり、制作当時は「特撮のDNA展」が行われていたので、そちらに資料集めに行ったりしました。あとは映画をひたすら見ていましたね。台座は版元さんから情報をいただいたり、当時の建築物の情報もいただけたのでそれらを参考に作りました。

——監修について。

田尻:版元様の監修は台座の形状等について何点か修正させて頂きましたが、そこまで大幅なものはありませんでした。こういった作家様のアレンジテイストの入ったモデルでも、快く許諾して下さるのでとても感謝しております。

——ワークフローを教えてください。

峠野:制作期間は4ヵ月くらいです。ご依頼を受けからラフイラストを描いて打ち合わせ。そこで方向性を決めてから1ヵ月くらいでラフモデルを提出して、ラフの段階で出力してそこからパテや粘土を使って作り上げていきました。普段はデータ上で完成状態まで持っていって出力して表面加工なんですけど、今回は50%データ、50%手作業を行ったので、少し時間がかかりました。表面のテクスチャは全部手作業で制作しています。原型は今回はちょっとやり方を変えて、ほとんど完成ではないところから手で作っています。最初に大まかな形を作り、割とぬるい段階で出力して、細部のひび割れたところはあとからディテールを入れています。

ZBrushデータ

——手作業の際に使用した粘土とは。

峠野:エポキシパテですね。あとはリューターでゴシゴシ削っていきました。高精度になっているとはいえ、3Dプリンタだとシャープ感はなかなか出しにくいので…。また「幻の究極造形シリーズ」の第一弾が大山竜さんで、第二弾が茨木彰さんでおふたりとも粘土やパテを主材にしていたので、じゃあ僕も手で……と(笑)。
 

最終原型

——塗装と期間について。

田尻:ポージングがポスター準拠ですので、塗装もポスターを意識したものにさせて頂きました。レギオンの真下に光源を感じるようにグラデーションをつけながら爆発の照り返しを表現し、ススキさんのハードディテールを感じられるように体表の汚し塗装も強めにしています。

実は、ポスターを意識し過ぎたあまりに体表の青みを強くし過ぎてしまい、一度レギオンからかけ離れたオレンジと青の怪獣に塗ってしまいました。あくまでもレギオンらしさを求め、塗装を綺麗に落とし、再度塗装を行った結果今のデコマスになりました。スーツとポスターの両方の雰囲気を感じられる、良い塩梅に落とし込めたのではないかと思います。

塗装期間は丸々2日で、1日目は前述のように塗装落としを行うこととなりました。キットが洗浄済みでパーティングライン・軸打ち・マグネットが処理済みでしたので、非常にスピーディーに完成させることができました。

——怪獣好きな子どもたちもすごい好きそうですよね!

田尻:そうですね。子供たちが見た瞬間に「格好良い!」と思うような、そんなレギオンになっているのではないかと。比較的こういった企画に携わる中では若い2人で主導させて頂いた企画でしたので、今までにない雰囲気のレギオンが作れたのではないかと思います。とにかく「格好良い」怪獣が好きですので。

峠野:そうですね!

田尻:ディテールが激しくてバキバキしているような。

峠野:派手さとか(笑)。

——怪獣造形において一番大事なこととは?また、かっこよくなるための怪獣の定義を教えてください。

峠野:巨大感とそこに畏怖の念が備わっているかどうかがとても大事だと思うんです。僕が小さい頃に本能的に怪獣が好きになったのも理由があると思っていて、ただ歩いているだけで人々が恐れ慄くような存在感、無敵感。何物も寄せ付けない強者のような存在、だからライオンは怖いけど動物として人気の理由なのかなと思っていたり…。怪獣造形は存在感や実在感をフィギュアに宿らせることが大事かなと思っています。そういったものを自分なりに落とし込んでフェチを入れつつ、試行錯誤していくことがかっこよくなる定義かなと思います。

——購入を検討している皆さまに一言お願いいたします。

田尻:「怪獣フィギュアの歴史に残るようなレギオン」を目標にスタートした本企画ですが、「幻の究極造形」というタイトルの名に恥じないレギオンを、峠野ススキ様はじめ多くの方々の協力により製作させて頂きました。その造形だけでなく、マグネット使用により10分ほどで組み上げられる「ガレージキット」としても良いものが仕上がったと思います。アレンジモデルではありますが、その根底で大切な全身のバランスなどがしっかりと「レギオン」らしさにあふれているのがこだわりでもあります。ぜひ1人でも多くの方にこの大迫力の造形を楽しんでいただけたらと思います!

峠野:本作は「幻の究極造形」と言っても差し支えない完成度になっていると思います。組み立てもパーツは多いですがとても組みやすいものになっていて、CCPJAPANさんや工場の方、監修のKADOKAWAさんにも非常に助けられてこのクオリティになっています。ぜひ、興味がありましたらよろしくお願いします!

 

企画&塗装担当・田尻和也氏(左)と原型師・峠野ススキ氏(右)

 

 

商品情報

幻の究極造形 CCPJAPAN×ススキガレージ(峠野ススキ) 巨大レギオン

ガレージキット版:定価¥121,000(税込) ¥110,000(税抜)
彩色版:定価¥178,200(税込) ¥162,000(税抜)
 
作品:『ガメラ2 レギオン襲来』
サイズ:全高約400mm×全幅約450mm×全長約350mm
素材:キャスト製(PU/PS)
対象年齢:15歳以上
原型製作:ススキガレージ(峠野ススキ)
発売元:CCPJAPAN株式会社

予約開始日:2024年1月16日(火)18:00〜

 

 

Profile

峠野ススキ

1994年10月4日生まれ。2017年のワンダーフェスティバルで大山竜さんの造形実演を見たことでフィギュア造形の世界に魅了され、創作活動を開始する。当初は粘土を使用していたが徐々に製作ツールはZBrushへ移行。2019年に「ススキガレージ」というディーラー名でワンダーフェスティバルへ初参加。その後はオリジナルドラゴンやクリーチャーを始めとした空想生物や、既存の怪獣を独自にアレンジしたものを造形している。

X(旧Twitter):@SUSUKI_Garage

 

CCPJAPAN 田尻和也

CCPJAPAN社内工房のチーフ、特撮企画担当、彩色師。
社内工房製造ラインの管理業務と並行し、「幻の究極造形」「1/6特撮」「AMC」「ミドルサイズ」など各特撮シリーズを中心に企画・原型監修・デコマス製作・撮影・広報などを務める。SNS上では「さるタジラ」というペンネームで、怪獣ガレージキットのフィニッシャーとして活動。

X(旧Twitter):@sarutajira

 

CCPJAPAN株式会社

日本を代表するPOPカルチャーである漫画やアニメ・特撮作品などの、常にハイクオリテ
ィな商品を目指し続けるフィギュアメーカー。東京に本社を置き、各地の国内工場・海外
工場はもちろん、本社内にも組立・彩色などの製造を行う社内工房を設けている。

X(旧Twitter):@ccp_official_jp