【原型師INTERVIEW】歴史に残るような巨大レギオンを造る。「幻の究極造形シリーズ」制作秘話インタビュー!
映画『ガメラ2 レギオン襲来』ポスターをイメージして立体化された巨大レギオン
INTERVIEW
——制作の経緯を教えてください。
企画&塗装担当・田尻和也(以下、田尻):もともと、
——映画『ガメラ2 レギオン襲来』ポスターイメージで制作されたのでしょうか?
田尻:本企画の最初の打ち合わせの際に、ススキさんからイメージスケッチを頂きました。そのポスター再現のポージングが斬新で格好良く、こちらのスケッチをもとに進行させて頂くこととなりました。
原型師・峠野ススキ(以下、峠野):最初原型のお話をいただいた際は、ポスターバージョンではなく『ガメラ2』のレギオンの原型の依頼だったんです。アレンジを加えて欲しいということもあって、割と自由に作らせていただくことになりまして。僕の好きなポスターバージョンにしようかなと思い、思い切って全体の雰囲気をポスターに寄せて作りました。
レギオン デザインイメージ
——ポーズ案はたくさん出されていたんですか?
——オリジナルデザインとアレンジの両立について、 ファンが納得するデザインアレンジにするためにどのように考えて いますか?
峠野:とても難しくデザインアレンジの面白いところでもあるんで
——ひとつひとつ作られたんですか?
峠野:ZBrushなので複製しながら、ひとつずつ形状を調整して作りました。
——特に峠野さんらしさが出ているところは?
田尻:本来のレギオンスーツの前足は靴をはいたようなデザインになっているのですが、ススキさんはあえて逆関節にし、甲殻類のようにしています。理由をお聞きすると、「ナポレオンの肖像画の、馬の振り上げている足部分を参考にしました。」とのお答えがあり、そういった説得力あるエピソードをお聞きし、このデザインにて決定させて頂くこととなりました。そういったススキさんならではの造形が各部に詰まっているので、是非発見して頂けると嬉しいですね。
——お腹の造形について。
峠野:
——卵は何個ありますか?
峠野:数えていたんですけど忘れちゃいました(笑)。映画とほぼ同じ数だと思います。
——背中側もアレンジを加えている?
峠野:うしろも結構アレンジを加えてイメチェンして作っています。背中
——テクスチャがすごく入っているのにシルエットもかっこよく仕上がっていますね!
峠野:ディテールは結構入れていますが、ポスターのシルエットをなるべく崩さないように意識しました。その辺を崩してしまうとレギオンらしさも薄れていってしまうので…。
——一番こだわられたところを教えてください。
——峠野さんの造形は頭が小さいイメージがありますが……。
峠野:最近、僕のトレンドが頭が大きめなので…好きですね(笑)。顔は命なので大きめにしています。
——今回のレギオンを作るときに意識したことは?
峠野:レギオンの造形物って今までそこまでアグレッシブで動きのあるフ
——台座について。
——峠野さんの案で60パーツにされたのでしょうか?
田尻:ススキさんにデータ上で丁寧に分割して頂き、それをそのままガレージキット分割に流用させて頂きました。製造工場様も素晴らしい技術を持っておりますので、部分的に一体にし、パーツ数を減らすことも考えました。けれども、非常に複雑な造形のため、買って頂くお客様のことも考慮し、塗り易さを優先した分割とさせて頂いております。
峠野:なかなか複雑な造形をしていたので、工場でも無理なく複製できるようにというのは考えながら…。あとは商品を購入してくださった方が塗装しやすいように分割してあるっていうのも理由の1つです。
——目は別パーツを使用している?
田尻:目はクリアパーツを使用しています。デコマスを塗装する際は目の裏側からハイライトの塗装を行い、本当に光っているかのような印象に仕上げております。こちらは、CCPJAPANがウルトラマンを塗装する際に行う伝統の手法でもあります。
——大きさはどれくらいあるのでしょうか?
田尻:全高が40cm、横幅は45cm、奥行きは30cmです。
以前CCPJAPANより販売させて頂いた「AMCシリーズ ガメラ(1996)ポスターカラーVer.」が全高約20cmで、そちらに合わせたスケールとなっております。ただレギオンは尻尾などがなく四方に広がったフォルムのため、見た目で感じるボリュームに対し、意外とコンパクトに収まるサイズ感になっているのではないかと思います。
——この大きさが塗れるといいですよね!
田尻:ほぼ全てのパーツにマグネットや軸を内蔵しており、下地処理済み・バリやパーティングラインも処理済みと塗りやすい仕様となっているため、是非ガレージキットを購入された方には楽しんで頂ければと思います。僕がデコマスを担当させて頂いた彩色版も発売予定ですので、完成品ユーザーの方々にも喜んで頂ければ嬉しいです。
——資料を見て作成されたのでしょうか?
峠野:レギオン自体は資料が少なくて既存の販売されているフィギュアを
——監修について。
田尻:版元様の監修は台座の形状等について何点か修正させて頂きましたが、そこまで大幅なものはありませんでした。こういった作家様のアレンジテイストの入ったモデルでも、快く許諾して下さるのでとても感謝しております。
——ワークフローを教えてください。
峠野:制作期間は4ヵ月くらいです。ご依頼を受けからラフイラストを描いて打ち合わせ。そこで方向性を決めてから1ヵ月くらいでラフモデルを提出して、ラフの段階で出力してそこからパテや粘土を使って作り上げていきました。普段はデータ上で完成状態まで持っていって出力して表面加工なんですけど、今回は50%データ、50%手作業を行ったので、少し時間がかかりました。表面のテクスチャは全部手作業で制作しています。原型は今回はちょっとやり方を変えて、ほとんど完成ではな
ZBrushデータ
——手作業の際に使用した粘土とは。
最終原型
——塗装と期間について。
田尻:ポージングがポスター準拠ですので、塗装もポスターを意識したものにさせて頂きました。レギオンの真下に光源を感じるようにグラデーションをつけながら爆発の照り返しを表現し、ススキさんのハードディテールを感じられるように体表の汚し塗装も強めにしています。
実は、ポスターを意識し過ぎたあまりに体表の青みを強くし過ぎてしまい、一度レギオンからかけ離れたオレンジと青の怪獣に塗ってしまいました。あくまでもレギオンらしさを求め、塗装を綺麗に落とし、再度塗装を行った結果今のデコマスになりました。スーツとポスターの両方の雰囲気を感じられる、良い塩梅に落とし込めたのではないかと思います。
塗装期間は丸々2日で、1日目は前述のように塗装落としを行うこととなりました。キットが洗浄済みでパーティングライン・軸打ち・マグネットが処理済みでしたので、非常にスピーディーに完成させることができました。
——怪獣好きな子どもたちもすごい好きそうですよね!
田尻:そうですね。子供たちが見た瞬間に「格好良い!」と思うような、そんなレギオンになっているのではないかと。比較的こういった企画に携わる中では若い2人で主導させて頂いた企画でしたので、今までにない雰囲気のレギオンが作れたのではないかと思います。とにかく「格好良い」怪獣が好きですので。
峠野:そうですね!
田尻:ディテールが激しくてバキバキしているような。
峠野:派手さとか(笑)。
——怪獣造形において一番大事なこととは?また、かっこよくなるための怪獣の定義を教えてください。
峠野:巨大感とそこに畏怖の念が備わっているかどうかがとても大事だと思うんです。僕が小さい頃に本能的に怪獣が好きになったのも理由があると思っていて、ただ歩いているだけで人々が恐れ慄くような存在感、無敵感。何物も寄せ付けない強者のような存在、だからライオンは怖いけど動物として人気の理由なのかなと思っていたり…。怪獣造形は存在感や実在感をフィギュアに宿らせることが大事かなと思っています。そういったものを自分なりに落とし込んでフェチを入れつつ、試行錯誤していくことがかっこよくなる定義かなと思います。
——購入を検討している皆さまに一言お願いいたします。
田尻:「怪獣フィギュアの歴史に残るようなレギオン」を目標にスタートした本企画ですが、「幻の究極造形」というタイトルの名に恥じないレギオンを、峠野ススキ様はじめ多くの方々の協力により製作させて頂きました。その造形だけでなく、マグネット使用により10分ほどで組み上げられる「ガレージキット」としても良いものが仕上がったと思います。アレンジモデルではありますが、その根底で大切な全身のバランスなどがしっかりと「レギオン」らしさにあふれているのがこだわりでもあります。ぜひ1人でも多くの方にこの大迫力の造形を楽しんでいただけたらと思います!
峠野:本作は「幻の究極造形」と言っても差し支えない完成度になっていると思います。組み立てもパーツは多いですがとても組みやすいものになっていて、CCPJAPANさんや工場の方、監修のKADOKAWAさんにも非常に助けられてこのクオリティになっています。ぜひ、興味がありましたらよろしくお願いします!
企画&塗装担当・田尻和也氏(左)と原型師・峠野ススキ氏(右)
商品情報
幻の究極造形 CCPJAPAN×ススキガレージ(峠野ススキ) 巨大レギオン
予約開始日:2024年1月16日(火)18:00〜
Profile
峠野ススキ
1994年10月4日生まれ。2017年のワンダーフェスティバルで大山竜さんの造形実演を見たことでフィギュア造形の世界に魅了され、創作活動を開始する。当初は粘土を使用していたが徐々に製作ツールはZBrushへ移行。2019年に「ススキガレージ」というディーラー名でワンダーフェスティバルへ初参加。その後はオリジナルドラゴンやクリーチャーを始めとした空想生物や、既存の怪獣を独自にアレンジしたものを造形している。
X(旧Twitter):@SUSUKI_Garage
CCPJAPAN 田尻和也
CCPJAPAN社内工房のチーフ、特撮企画担当、彩色師。
社内工房製造ラインの管理業務と並行し、「幻の究極造形」「1/6特撮」「AMC」「ミドルサイズ」など各特撮シリーズを中心に企画・原型監修・デコマス製作・撮影・広報などを務める。SNS上では「さるタジラ」というペンネームで、怪獣ガレージキットのフィニッシャーとして活動。
X(旧Twitter):@sarutajira
CCPJAPAN株式会社
日本を代表するPOPカルチャーである漫画やアニメ・特撮作品などの、常にハイクオリテ
ィな商品を目指し続けるフィギュアメーカー。東京に本社を置き、各地の国内工場・海外
工場はもちろん、本社内にも組立・彩色などの製造を行う社内工房を設けている。
X(旧Twitter):@ccp_official_jp