【原型師INTERVIEW】『モンスターハンター』シリーズ20周年記念「CFBクリエイターズモデル 煌黒龍 アルバトリオン」原型制作・東 誉之インタビュー!

カプコンより『モンスターハンター』シリーズ20周年記念「CFBクリエイターズモデル 煌黒龍アルバトリオン」が予約受付中!今回は「モンスターハンター」シリーズのディレクター・藤岡 要さんと、原型担当・東 誉之さんに制作の裏側についてお聞きしました!

INTERVIEW 藤岡 要

——アルバトリオンの完成品を見たときのお気持ちを教えてください

アルバトリオンは荒ぶった攻撃性と王者のような風格を併せ持っているモンスターです。一見相反する要素なのですが、炎の燻る中、翼を大きく広げ凛とした佇まいで天を見上げる事でアルバトリオンの風格を見事に表現してくれているなと思いました。まさに「天をつらぬく角」ですよね。

——藤岡さんが最も気に入っているポイントはどこになりますでしょうか。

東氏は過去、ゴア・マガラやブラキディオスなどでこのプロジェクトに参加頂いているのですが、いち早く3Dデータをベースに制作する手法に取り組んでいて、彼の作る造形は3D特有の緻密で繊細な表現が特徴だと思っています。アルバトリオンは全身が逆立った鱗で覆われているモンスターなのですが、触れるだけで身をえぐられるような攻撃的なイメージが見事に表現されているなと感じました。この質感はお気に入りポイントです。

——購入を検討されている方やファンの方に一言お願いいたします。

全身が細かい刃で覆われている攻撃的な風貌を、彼らしいアプローチとテクニックで存分に表現してくれていると思います。見れば見るほど発見のある緻密な造形に仕上がっていると思うので、是非手にとってじっくり鑑賞して欲しいです。

INTERVIEW 東 誉之

——東さんは今までクリエイターズモデルで数々のモンスターを制作されていますが、今回はどんな気持ちで臨まれましたか?

今回は『モンスターハンター』の20周年記念ということで、モンスターの種類的にも15周年のミラボレアスと並ぶようなモンスターだったので、並べた時に引けを取らないものにしたいという思いで制作しました。

——ポーズ案は事前に「こんなイメージで」などリクエストがありましたか?

特になかったので、最初に4案出してその反応を見て、さらにブラッシュアップしていきました。


最初の4つのポーズ案イラスト

——具体的にどのようにブラッシュアップしましたか?

15周年のミラボレアスがプレーンなポーズだったので、アルバトリオンに関してもアクロバティックよりはシンプルなポーズのほうがいいと思ってポーズ案を出しました。その方向性に関しての反応は悪くなかったんですが、ただおとなしいだけのポーズに見えてしまう、という印象でした。もう少し派手に……というのとも少し違っていて、まとまりが悪いという感覚です。ニュアンスが難しいんですが、シンプルな構図にしてもキマっている感じのシンプルさというか……。最終的には頭を上に向けてツノが天をつくようなシルエットになりました。構図としてはおとなしく四肢をどっしり構えているだけなんですが、頭上に向けてツノを突き出すようなポーズは王者の風格を表しています。


ブラッシュアップ後のポーズ案イラスト

——歩きのポーズの俯瞰から見たイラストも体のうねりを想定されて?

そうですね。でも特別意識はしていないです。上からのイラストは常に描くわけではなく、シンプルなポーズで横から見た時にS字があまりない場合には上からはこう見えますよと提示するために描いています。どうしてもイラスト一枚だと構図の立体感はなくなってしまうので。


上から見たポーズ案イラスト

——マグマも2種類ありますが……。

ゲーム内の背景をベースにしているのでマグマを入れようと考えていて、表現としてどんな感じがいいのかもし反応があるんだったらそれを聞こうかなと思い、2種類描きました。


2種類のマグマデザイン案

——ディテールの監修をポーズなしの状態でされていますが、それはどうしてですか?

自分の場合はZBrushでディテールを入れたモデルにBlenderでポーズをつけているので、いつもポーズの前にディテールの確認をお願いしています。まず、ディテール監修の方向性としてディレクターの藤岡(要)さんからはクリエイターズモデルにゲームモデルの印象そのままではない独自の表現を求められることがあるのですが、現場のモデラーの方にはゲームモデルから外れている部分を指摘されることが多いんです。


ディテール監修用のデータ

作業的にはディテールをアレンジしたものをあとからゲームモデルに近づけるほうが難しいと感じるので、最初にゲームモデルに忠実なイメージを用意して、藤岡さんにアレンジすべき点を指摘されたらそこを調整するようにしているのですが、私は原型制作の作業工程を

1:ZBrushでディテールを入れる

2:Blenderでローポリゴンモデルにポーズを付ける

3:ZBrushに戻りポーズを付けたローポリゴンモデルをハイポリゴンモデルにインポートする
4:ポーズ付けによってゆがんだディテールの修正

と分けていて、ポーズ付け以降にその前段階のディテールに修正が入ると作業工程に手戻りが発生し非効率的ですので第一段階としてディテールだけでの監修をお願いしているという感じです。


Blenderでポーズをつけたローポリゴンモデル

——ディテールをある程度つけた上でBlenderに移行されているんですね。

そうですね。Blenderでポーズ付けをしたローポリゴンのモデルをZBrushにもう一回持ってきて、ハイポリゴンのものにそのポーズを切り替えています。

——ディテール監修で具体的にどんな修正を?

具体的には鱗のトゲトゲの深さが変わっていて、特に尻尾の部分は大きく変化させています。初回監修時のディテールでは平らなところに溝を彫ったような鱗がゲームモデルに近かったのですが、立体映えという観点でそれだと物足りないということで、ディテールの深さやトゲトゲ具合を強調しました。


ディテール監修前のデータ


ディテール監修後のデータ

——ディテールの強さは全て画面上で判断を?

自分の場合はずっとそのようにやっています。プリンタを持っている方は出力して確認していると思いますが、自分の場合はプリンタがないので。基本的にそれで問題ないですね。

——今までの経験値でこのくらいと判断されているんですね。

経験値である程度想定できるのと、画面上で背景に1mm・1cmなどが分かるようにグリッドを表示して造形しているので、背景のグリッドを見ながら具体的なディテールの深さを調整しています。

——足の筋は何を参考に?

基本的には実在する動物を参考にしています。後ろ脚は犬と人間を組み合わせたイメージです。犬って脚の後ろ側、太ももと脛のシルエットが筋肉によってスムーズにつながっている印象があるんですが、人間は太ももとふくらはぎの段差がくっきりしていて、アルバトリオンの太ももとふくらはぎは人間の印象に近い。特定の動物を参考にしただけのデザインではないので色々と組み合わせる感じです。前脚についても、人間のような上腕二頭筋の印象がはっきりと表現されています。犬とかライオンなど四足動物の筋肉とシルエットの取り方が違う部分ですね。


出力前の原型データ

 

——制作中によく参考にする資料やサイトは?

動物の資料を調べることが多いですね。デザインとはちょっと違うところなんですが細かいディテールの詰め方が実際の動物から引用されているデザインが多いので、その動物をちゃんと調べて作ったものとそうでないものでかなりクオリティに違いが出てきます。資料集めはPinterestを使うことが多いですね。関連したものがたくさん出てくるので探しやすいです。

——再現が一番難しかったところを教えてください。

どのモンスターも鱗が全身に入っているので似たような大変さなんですけど、アルバトリオンの鱗は形が一枚一枚特徴的で、蛇のように三角形の鱗が並んでいるだけじゃないんです。単純な鱗だったらZBrushのツールでやりやすいんですけど、一枚一枚が特徴的なので他のモンスターと比べるとかなり調整をしないといけない部分が多くて結構大変でした。

——一枚一枚作られたんですか?

モデルで一枚の鱗を用意してそれを並べました。いつもなら溝を彫って……で可能なんですが、今回はその作り方ができなかったので。


出力前の原型データ

——その場合は先端と根本どちらから並べていくんですか?

どっちからというのは決まっていないんですが、まず一列作ってその一列を配置していく感じです。尻尾の周りに並べていく感じ。一回同じサイズで並べてZBrush上で片方をつぼめる作業をします。それを並べながら微調整しています。

——翼にも鱗のようなテクスチャが入っていますよね?

そこも結構大変でしたね。だいたい翼の膜の部分って特徴的なデザインがないものが比較的多いんですが、今回は翼の腕の生え際から末端に向けてグラデーションで鱗がなくなっていくようなデザインになっています。尻尾の鱗などと似ていてブラシの機能で簡単にできるわけではなく特徴的なデザインだったので、そこは一枚一枚調整しながら彫っていくという作業をしていました。

——デザイン〜完成までどのくらい?

着手は今年の1月で原型が終わったのは7月でしたけど、シンプルに作業日数だけだと66日でした。月に20日だとして3ヶ月くらいですね。

——特に見てほしいところを教えてください。

今まで自分が担当したクリエイターズモデルでは炎とかは入れたことはなかったんですけど、今回は炎が吹き出しているマグマのようなものを入れたので見てほしいポイントの1つです。モンスターももちろんなんですが自分はベースの表現の方が気になることが多いというか、本体とベースのバランスが完成度を左右していると感じることが多いので。

——購入を検討中の皆さんに一言お願いします。

モンスターハンターの20周年記念の作品ということで相当気合を入れて作っていて、完成品もかなり完成度が高いのでぜひご購入お願いします!

 

 

 

 

商品情報

カプコンフィギュアビルダー
クリエイターズモデル 煌黒龍アルバトリオン

販売元:カプコン
本体素材:PVC、ABS、鉄
サイズ  :約H335×W305×D230mm
パッケージ:紙箱(窓付き)
原型製作 :東 誉之
価格   :33,000円(税込)
お届け開始日:2024年3月12日〜

※商品画像はイメージです。実際の商品とは若干異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
※内容・仕様は予告なく変更になる可能性があります。
※諸般の状況によりお届け日が変更となる場合がございます。

©CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

 

Profile

「モンスターハンター」シリーズ  ディレクター 藤岡 要

1993年、ゲーム開発職としてカプコンに入社。グラフィックデザイナーを経て、2004年発売のシリーズ第1作『モンスターハンター』の開発に参加。ディレクターを務める。以降も「モンスターハンター」シリーズのナンバリングタイトルのディレクターとして、主に世界観の監修を担当した。
「モンスターハンター:ワールド」シリーズにおいてはエグゼクティブディレクターとアートディレクターを兼任した。
2024年発売予定「クリエイターズモデル 恐暴竜 イビルジョー」に続き、「カプコンフィギュアビルダークリエイターズモデル 煌黒龍アルバトリオン」も監修を担当。

原型制作 東 誉之

原型師、デザイナー。
7年間のゲーム会社勤務でモンスターのデザイン・3Dモデル制作を担当。
その後はフリーランスの原型師として活動中。
原型制作はZBrushで行い、モンスターなど生物モチーフを得意とする。
クリエイターズモデルでは「砕竜 ブラキディオス」より原型を手掛け始め、直近では、「迅竜 ナルガクルガ」「冰龍 イヴェルカーナ」を制作。
モンスターと台座が生み出す空間のバランスで奥行を感じられる事を意識してデザインしている。
X(旧Twitter):@HIGASHI_Taka