【スカルプターズ・データベース】ファンを飽きさせないフィギュアの追求 服部達也

フィギュア、ゲーム、CM、映画、そしてアートのジャンルで最も造形力のあるスカルプター・原型師を集めた、最新データベース創刊!

デフォルメからリアル系まで幅広く活躍中
服部達也 Profile


服部達也とその利き手

はっとり・たつや

神奈川県出身。2004年壽屋入社。同社のワンコインフィギュアシリーズ、esシリーズ、ARTFX Jシリーズ、ARTFXシリーズなどデフォルメからリアル系まで多数手掛ける。2012年頃まではたつまき名義、以降は現在の名義にて。最新作はARTFX Jシリーズ『ダイの大冒険』の「ダイ」「ポップ」「バラン」。

Twitter:@Tatsuya_Hattori

作品


コトブキヤ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』「ARTFX J ダイ」©三条陸、稲田浩司/集英社・ダイの大冒険製作委員会・テレビ東京 ©SQUARE ENIX CO., LTD.


コトブキヤ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』「ARTFX J ポップ」©三条陸、稲田浩司/集英社・ダイの大冒険製作委員会・テレビ東京 ©SQUARE ENIX CO., LTD.


コトブキヤ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』「ARTFX J バラン」©三条陸、稲田浩司/集英社・ダイの大冒険製作委員会・テレビ東京 ©SQUARE ENIX CO., LTD.


コトブキヤ『劇場版トライガン Badlands Rumble』「ARTFX J ヴァッシュ・ザ・スタンピード リニューアルパッケージver.」©内藤泰弘・少年画報社/トライガン製作委員会


コトブキヤ『劇場版トライガン Badlands Rumble』「ARTFX J ニコラス・D・ウルフウッド リニューアルパッケージ」©内藤泰弘・少年画報社/トライガン製作委員会


コトブキヤ『劇場版トライガン Badlands Rumble』「ARTFX J ヴァッシュ・ザ・スタンピード -The Gunman in Black-」©内藤泰弘・少年画報社/トライガン製作委員会

■お仕事の場合のワークフロー

今は基本全てデータ制作で、最初にいわゆる“素体”という衣装設定込みの「気をつけ」状態の全身を作ります。この段階でもかなり見れるものを作っていると思います。そこからポーズづけをしていって、というのが現在の私個人の必須フローです。


素体状態のデータをミニサイズで出力したサンプル

■使っているPC、ソフト、ペンタブ

造形ソフトはZBrush、デカールデータはPhotoshopで、会社では支給のデスクトップPC、家ではWacomのMobile Studio Proです。会社では板タブ、家では液タブという感じにして、またどんな環境でも一定に作れるよう、あまり特殊なもの、手に入りにくいようなデバイスツールは使わないようにしています。

INTERVIEW

——小さい頃なりたかったものは?

『ハイスクール!奇面組』の一堂零くんの家がおもちゃ屋さんだったんですよね。小さい頃は個人店のような街のおもちゃ屋さんに憧れてて。プラモデルとファミコンソフトが所狭しと並んでいるような。だから小さい頃は売る側のおもちゃ屋さんがよかったですね。いつのまにか作る側を目指していましたけど。

——最初に造形したのはいつですか?

最初の造形開始はコトブキヤ入社する前の2002年頃から。社会人になってからですから、だいぶ遅いですよね。人には見せられないようなヘタな造形はいろいろとやって。それから見せられるとなったのは1年後くらい。『テイルズ オブ シンフォニア』の「ロイド」という主人公キャラクターで。それで2004年冬のワンフェス出まして。当時あさのまさひこさんにも会場で声をかけていただいたんです、いいねぇ!って名刺をもらって。ワンダーショウケースかもしれない!ってひとり浮かれてましたが選ばれませんでした(笑)。 写真は小さーくですが、モデルグラフィックスさんの記事にも載ったりしました。

——学生時代にはまっていたものを教えてください。

青山学院大学の経済学部の出身です。びっくりするくらい造形とは無縁の世界ですね。テニスサークルに所属していましたが、テニスも下手だしだいたい端っこのほうで。でも『新テニスの王子様』のフィギュアを作った時にテニスの経験が非常に役に立ったんでよかったですね。小中高でサッカー、バスケ、バレーボールをやってるんで、そういう動きのあるフィギュアもいつでも作れますよ(笑)。

——いつ頃から原型師を目指しましたか?また、本格的に造形した最初の作品を教えてください。

上記の「ロイド」で少し自信を持ちましてコトブキヤに持ち込んだんです。それで運よくアルバイトとして入社できることにはなりましたが、当時のコトブキヤの技術レベルにはとても及んでいないので、入ってからも塗装や複製や造形を幅広く学びました。1,2年は完全に武者修行というか。いろんな方の原型も改修しましたし、自分の造形も仕事終わらせてからやっていました。それでほぼ毎日終電です。そうして出来た商業デビュー作はワンコインフィギュアシリーズ『OVERMANキングゲイナー』の「ゲイン・ビジョウ」でした。

——使っている粘土や3Dプリンタ

手作業ではポリパテ(ロックポリパテ【細目・仕上用】)とエポパテ(ウェーブの軽量タイプ)。
プリンタは会社にあるProJet MJP 3600と同2500。あとForm2とZortraxです。


手作業で使用している工具類

——落ち込んだ時に聞く音楽、もしくは見る映像は?

TM NETWORKがいわゆる「推し」というやつです、人生ずっと。今年から再活動してくれているので感謝しながら応援するという。80年代と90年代のJ-POPも大好きです。名前をあげるとキリがないくらいいろいろ聞きます。CD時代の音楽ですよね。

——造形するとき一番こだわられていることは?

見てたのしく触ってたのしく、ずっと飾っておきたくなるような、を目指しています。設定どおりの上手い造形は今本当にたくさんありますよね。ですが、良いものでもどんどん流されていってしまうような状況も感じていて。だから飽きられないような工夫がある造形にしないとと思っています、なるべく気づかれにくいようにして。それでSNSとかで気づいてもらったりした時にはニヤリですよね、こちらも。あとは肉体賛美というかプロポーション重視の造形は好きですね。

——現在、メインでお仕事されているジャンルは?

コトブキヤのARTFX Jシリーズと海外系のARTFXシリーズです。得意なのは男性キャラですが、ワンコインシリーズのような小さな造形、あるいはかわいいディフォルメ系であったり、「綾波レイ」や「両儀 式」といった女性キャラも作ったり。なんでも作ります。意外とそういう原型師さんは少ないかもしれません。

——今後の野望を教えてください。

TM NETWORKのフィギュアを作りたい!なんですけどもっと言うと日本のミュージシャンをフィギュア化したいんですよ。今のお姿であれば3Dスキャンが早いですけど、そうではなくて‘あのライブの時のあの衣装をあのポーズで’みたいな当時の姿を原型師が立体でよみがえらせる。アナログ造形だと相当大変なんですけどデジタル造形ならいくぶんかは作りやすい。商品化となると権利のこととかハードルはいろいろと高いと思うので、今のところは個人的な夢です。

Data

最近はまっているもの

80年代ロボットプラモデル。幼少期まともに組み立てることもできなかった旧キットも今なら作れる!といった感じで。昼休みなんかにサフ使って組み立てていくだけなんですけど、継ぎ目を消したりヒケを均したりしていると何日もかかる(笑)。 でも完成するとなんかやり残した昔の宿題が終わった感じがしてたまらないです。

影響を受けた(大好きな)映画・漫画・アニメ

『グーニーズ』、『グレムリン』、『ゴーストバスターズ』、『ネバーエンディング・ストーリー』、『ダイ・ハード』、『ロボコップ』、『ターミネーター2』、『ぼくらの七日間戦争』、『機動戦士ガンダム』、『幻魔大戦』、『AKIRA』、『あしたのジョー』、『キャプテン』、『キン肉マン』、『北斗の拳』、『シティーハンター』、『魁!!男塾』、『ドラゴンボール』、『ジョジョの奇妙な冒険』、『まんが道』、『21エモン』、『ダッシュ!四駆郎』、『HELLSING』、『トライガン』、『血界戦線』……。基本は80年代です。

1日に造形する平均作業時間

仕事だと5~6時間以上とれるとラッキーですね。会社の社員なので自分の造形作業だけでなく、いろいろ別件も進行させたりしています。