【スカルプターズ・データベース】記憶に眠る憧れと畏怖———造形詩人、植田明志

フィギュア、ゲーム、CM、映画、そしてアートのジャンルで最も造形力のあるスカルプター・原型師を集めた、最新データベース創刊!

【2023/07/21更新!】国内外から注目される、気鋭の造形作家
植田明志 Profile


植田明志とその利き手

植田明志

Akishi Ueda、1991年生まれ。 記憶や憧れをテーマに、どこか切なさを感じさせる作品を制作。 幼少のころから美術、音楽、映画に色濃く影響を受け、ポップシュルレアリスムの属性を主軸に、かわいらしいものから、奇妙な巨大生物まで、様々なスタイルやモチーフで表現している。 日本での活動をメインにしていたが、2019年に世界アートコンペ「Beautiful Bizarre Art Prize」の彫刻部門で1位を受賞、その後英語圏での活動も本格化し、さらにアジア圏での美術館個展「祈跡」(中国北京)を成功させる。 2021年に脳血管が破裂して入院。目に少し障害が残るが復活。

最新作

【商業作品】
実は初めて商業作品手がけたんです。最近。あれを‥。
いやなんでもないです!うそです!!!

 

【オリジナル作品】
 
 
オリジナルのほうの最新作は記念展『DECAGON』のメインビジュアルのものですね。
タイトル、物語、設定などすべて決まっていますが、まだ何もいえません。
うそです!!少し言っちゃうと、この10年でのひとつのセーブポイント、というものです。

2023年上半期で一番変化したこと

犬を飼いまして。アトリエの柵の前でくんくん言うんですよ。あまーい声で。心を鬼にして制作を続けるんですが、夜にはもう我慢できてませんね。
あ!そういえば、ギレルモ監督に映画『パシフィック・リム』のファンアートをプレゼントすることになりました。最近はそれでモチベが上がってます。

2023年上半期で一番良かった資料

『アドベンチャー・タイム :遥か遠い世界で』の第3話『ずっと一緒』という回。

2023年上半期で一番感動した作品

上記と同じです。
マジでみんなに観てほしい。

2023年上半期でこれは使える!と思ったマイブームのツール

そんなものはありません!!僕は古いタイプの人間なので。粘土とヘラと、絵の具と…たまにZBrash‥

 

作品


「花束」撮影:イシカワタカト


「底の王」撮影:森田直樹


「星神」撮影:森田直樹


「虹の人」撮影:森田直樹


「流星を喰らう双子」 撮影:植田明志

 


「オリジンの肖像」撮影:Keiichiro Natsume【SPINFROG】

 

INTERVIEW

——小さい頃なりたかったものは?

漫画家→食品サンプル職人→イラストレーターを経て、高校生からはバンドマンになりたかったです。

——最初に造形したのはいつですか?

物心つく頃にはすでに何かを作っていた記憶があります。形を作るという意味では幼稚園くらいのときのお菓子の箱を使った工作ですね。
粘土造形で覚えているのは小学生の図画工作で作った油粘土のサンタクロースかな…
高1くらいで初めてファンド(石粉粘土)を使ったときのことは良く覚えています。初めてファンドを触ったときは感動しましたから。何より匂いが良いです。
宇宙人を作ったんですが、手足をパーツごとに作って、まだそれを結合させる術を持ってなくて、どうすればいいかわからずバラバラのまま捨ててしまいました。

 

——出身校と、学生時代にはまっていたものを教えてください。

三重県で唯一の美術を選択できる高校の、三重県立飯野高等学校 応用デザイン科出身です。彫刻コースを選択して、木彫、石彫、水粘土、FRP、色々やらせてもらって面白かったです。
当時はバンドブームで音楽にどっぷりハマっていました。バンドをずっとやっていましたね。ステージで暴れてぶつけて頭から大量出血したりしてました。

——いつ頃から造形作家を目指しましたか?また、本格的に造形した最初の作品を教えてください。

美術で食っていこう。と本気で考えたのは大学2年のときバンドが解散したあとでした。
当時の自分にとっては深刻で、目の前の道がすっぽり崩れた感覚になりましたね。そして自分ができることは何だろう。と、初めて本気で自分と向き合って、ずっとやってきた美術を〈ちゃんと〉やってみよう。と。
それから本格的に粘土を触りだして、完成したのが「月を訪ねて」という作品です。この作品が人生のターニングポイントとなりました。

——使っている粘土の種類、塗料の種類、愛用のツールなど

粘土はニューファンド。塗料はアクリルや油彩。以前は細かさに命を懸けていたのでエッチング版画を描画するニードルというツールを、少し曲げたものでちまちまやっていました。
最近は細かさよりもディテールの流れやタッチ重視のため、一般的な使いやすいスパチュラ2本を使い分けることが多いです。

——落ち込んだ時に聞く音楽、もしくは見る映像は?

「BUMP OF CHICKEN」。映像なら「水曜どうでしょう」。

——造形するとき一番こだわられていることは?

表面的なディティールにしろ、内面的な表現にしろ、自分の立ち位置を理解しながら作るということです。造形をやっている人は山ほどいて、僕よりも上手な人なんていくらでもいるし、同年代で評価されている人も沢山いる。このSNS大時代においてはなおさら色んなことが目に入ります。
その中で隙間としての自分をいかに保っていられるか。埋もれてしまわないか。
焦らず、自分の役割を見失わないように作る。それが個人的に一番大事です。

 

——今後の野望を教えてください。

僕の作品を好きでいてくれる人たちを巻き込みながら、色んなものごとを共有していきたいです。

Data

作業スペースと本棚

影響を受けた(大好きな)映画・漫画・アニメ

『千と千尋の神隠し』『アドベンチャータイム』

最近はまっているもの

日本酒(オススメ教えて下さい!)

 

1日に造形する平均作業時間

4時間くらい

 

作品集『COSMOS 植田明志 造形作品集』発売情報

 
 
発売日:2021年12月22日(水)
B5変型判(上製)/192ページ/フルカラー
定価:本体3,400円(+税)
発売・発行:玄光社