【ウルトラ怪獣ホビー列伝】第一回「ビリケン商会 ウルトラマン」

テキスト:藤本圭紀

突如始まったコラム・ウルトラ怪獣ホビー列伝!
物心ついた時からのウルトラファンとして、そして原型師・造形作家として、私・藤本圭紀が選りすぐりのウルトラホビーを掘り下げていくというコーナーだ。記念すべき第一回は「ビリケン商会 リアルモデルキットシリーズ ウルトラマン」。早速その魅力を探っていこう。

 

 

ビリケン商会初のウルトラマン・リアルモデル

ビリケン商会が贈る最初のウルトラマンのソフトビニールキットで、発売は1986年、今から40年近くも前である。
1983年、メタルナ・ミュータントのソフビキットで業界に衝撃を与え、その後次々と海外キャラクターをキット化。そんなビリケン商会が満を持して発表したウルトラマン。ビリケン商会にとってはウルトラシリーズとしてはもちろん、日本国内のキャラクターとしても最初に発売したのがこのウルトラマンなのである。

 

これだけのものがたった2000円で手に入るという、当時としても衝撃的な価格設定である。
©️円谷プロ

 

ハマハヤオの造形哲学

原型制作はハマハヤオ。ビリケン商会のほとんどの作品を担当している。氏の造形は、リアルさやシルエットの美しさはもちろん、カンチャク可動の処理やソフビ成型に生じる制約の中での創意工夫が、ある種の美しさにまで到達している。

特に80年代の作品は「リアルであそべるソフビ人形」として既に完成しており、2025年時点においても他の追随を許していない領域に達していると思う。

そんなハマ氏でも、当時のモデルグラフィックス掲載の製作記事にあるように「ウルトラマン」を造形する際はかなりのプレッシャーを感じたようだ。興味深いのはスーツのシワとカラータイマーを造形するかどうか悩んだというところである。現代では当たり前のように取り入れられているそれらの要素であるが、氏の抱くウルトラマン像が少し垣間見えるようだ。

キット状態。比較的シンプルなウルトラマンであるが、先ずはこのパーツひとつひとつを手に取り、味わいたい。それがビリケン・キットの嗜み方である。
©️円谷プロ

 

 

 

ビリケン流“ウルトラマン像”の体現

そして発表されたこのウルトラマン。このキャラクター本来の美しさを存分に味わえる、奇をてらわない堂々とした立ち姿での立体化である。モチーフはご覧の通りBタイプ。登場話数はA,Cタイプを超え、特にリアルタイム世代にとっては最もポピュラーなウルトラマンと言える。

パーツ数は全9パーツで、ドライヤーとデザインナイフがあればものの10分で組みあがるだろう。これこそソフビキットならではの手軽さである。成型色はラメ入りのグレー。ウルトラマンという彫刻的表現を突き詰めた存在であるキャラクターに、これ以上ふさわしい成型色があるのだろうかと思えるほどマッチしている。

成型色のままでも十分にこのモデルの持つ品のいい“シワ“を味わうことが可能である。ハマ氏の造形の魅力の一つに、徹底的に取捨選択されたシワ表現がある。全体の中で調和を保ちながら導き出されたモールディング、“味”や“自己表現”に甘んじた安易なアレンジでは到底たどり着けない、氏のセンスによって厳選された美しさがそこにはある。

考え抜かれた成型色、手軽に組める設計と程よく遊べる可動性。「ソフビキットはかくあるべし」。情景王・山田卓司が残した、ビリケンブランドへの信頼が垣間見えるコメントだ。

 

あっという間にこれだけのものが組み上がってしまう。嫌みのないシワの造形、神々しくすらある立ち姿。キラキラと輝くラメが石像を思わせるような不思議な質感となっていて、まさに「ノアの神」のごとき様相である。
©️円谷プロ

 

 

 

引き算の塗装で活きる造形美

もちろん塗装を施すことによって、モデルの魅力を引き出したいのもモデラ―の性だろう。

このウルトラマンの魅力は写実的リアリズムではなく、取捨選択されたフォルムの美しさにある。故に過度なシャドウや高密度なテクスチャー表現は似合わない。ハマ氏自ら手掛けた塗装にならい、落ち着いた銀色と赤色でシンプルに仕上げたいところだ。

目の塗装は「控えめな金色」に纏めるのが80年代的でこのモデルにマッチしている。やみくもにクリアー化したところで、このウルトラマンは生きないだろう。トイ的なムードを外さずに色味で勝負する、これが本モデルに最もふさわしいアプローチではないだろうか。

モデルグラフィックスに掲載されたハマ氏本人による塗装。このウルトラマンにはこの彩色以外考えられない。
©️円谷プロ

 

このキットが持つ永続性の魅力

このウルトラマンは私自身、常にそばに置いているアイテムである。先述の造形的魅力はもちろんのこと、洗練されたスタンダード・ウルトラマンのソフビ人形を、机の上にポンと置ける……というポップさが最大の魅力かもしれない。
飾って楽しみ、40年経過しても思わず手に取ってしまいたくなる飽きの来ない魅力はハマ氏の、そしてビリケン商会の矜持があればこそだろう。
そしてこのウルトラマンを語るうえでハズせない、兄弟のようなアイテムがある。その話はまたいずれ……フォッフォッフォッフォッ……

色褪せない魅力。これこそビリケン・スタンダードである。
©️円谷プロ

 

 

 

藤本圭紀 Yoshiki Fujimoto Profile

ふじもと・よしき

1983年、大阪市生まれ。千葉県在住。大阪芸術大学彫刻科の在学中より、本格的に造形活動をスタート。卒業後、商業原型師として株式会社エムアイシーへ入社。2012年から創作フィギュアの制作を開始する。2015年、豆魚雷の主催する「Amazing ArtistCollection第三弾」に選出。2017年にフリーランスとなり、商業フィギュア原型と創作フィギュアの制作を中心に、キャラクターデザインや映画作品『シン・仮面ライダー(2023)』への造形参加など、多方面で活躍している。2022年、東京・高円寺にて初の個展「LITTLE GARDEN」を開催。オリジナルフィギュア作品集『BLINK』が大日本絵画より発売中。

X:@YOKKI_munchkin_

 

 
 
 

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