【スカルプターズ・ムービー】世界が注目する コマ撮りアニメーター・篠原健太、『Fall Guys』制作裏側インタビュー!

フィギュアやおもちゃのコマ撮りで世界中の視聴者を楽しませているコマ撮りアニメーター篠原健太さん。

YouTubeチャンネルAnimistの登録者数は100万人を突破し、総再生回数は1億7千万回以上!思わずクスッと思わず笑ってしまう動画やキレキレのダンス、アクション動画など何度見ても面白い作品ばかり!

今回は、YouTubeで173万回再生された(※2022年10月20日時点)動画『【コマ撮り】フォールガイズの競争を家の中で再現してみた』の制作の裏側についてお話を伺いました!

 

 

INTERVIEW 篠原健太

——業界を目指したきっかけを教えてください。

アニメーションの仕事がしたいなと思ったのが小学3年生の頃です。テレビで放送されているアニメ番組やスタジオジブリ作品を見て「こういう作品を作る仕事につけたらいいな」、ジブリみたいな作品が作れる環境に行きたいな、とぼんやり思ってましたね。

——アニメーターになった理由とは?

通っていた専門学校がアニメーションについて幅広く学ぶ学校で、コマ撮りの授業がありまして。そこで体験したのが初めてです。当時はまだコマ撮りアニメーターを目指すとまでは思っていなかったですが、卒業後にドワーフに入社して本格的にコマ撮りをするようになって、自分に合っているなと感じてそのまま続けているという感じですね。

——ドワーフに入社された際、どなたについて一緒にお仕事をされたのでしょうか。

峰岸裕和さんというコマ撮りアニメーターの大先輩のもとでアシスタントをしながら、現場のことを学びました。峰岸さんはコマ撮り業界を牽引してきた、業界ではみんな知っている人ですね。ドワーフではアシスタントからアニメーター・デビューしてたくさんの経験をさせていただきました。

——その後、独立をされた?

ドワーフを退社しまして、今は株式会社LuaaZというところに所属しています。そこでコマ撮りアニメーションを作りながら、主にYouTubeチャンネルでの配信活動に力を入れています。

——1人でコマ撮りをやろうと思ったきっかけは?

タイミングと言いますか。コマ撮りアニメーターって仕事があるときはたくさんあるんですけど、仕事がないときは結構無かったりする。この職業の将来を考えたときにあんまり明るくないなと思っちゃいまして。
「自分自身がもうちょっと知られたり、影響力を持っておけばコマ撮りをもっと続けられるんじゃないかとか」と悩んだ時期があって、そのときにたまたま今の会社の人が「YouTubeで発信したら世界中に発信できるから結構面白いですよ」と声をかけてくださって、いいタイミングかなって思い、思い切って退職してYouTube発信をやり始めました。

 

ーFall Guysの動画についてー

——今回の仕事のオファーがきた際の心境がありましたら教えてください。

世界的にもすごく人気なゲームのキャラクターということで、僕らが掲げている「日本だけではなく、世界に発信しよう」というテーマと非常に相性が良く、頑張ろう!と思い受けさせていただきました。僕一人では制作が難しかったのですが、ちょうどスタッフを増やしたタイミングだったので受けることができました。

——制作時間はどれくらいかかったのでしょうか。

撮影だけでも確か20日以上かかっています。キャラクターの数も6キャラと多かったので、時間がかかりましたね。準備や編集も合わせるとトータルで2ヵ月以上かかっています。

——タイムシートは書かれているんでしょうか。

書いたり書かなかったりしますね。タイムシートって1コマ単位で動きの設計を書いていくんですけど、カメラを置いてフィギュア置いてみて、そのとき初めて見えてくる部分というのがあって。絵コンテでは気づかなかった部分が出てきて、そのときによって現場で変わったりするので、大抵はアドリブと言いますか、現場で考えてその場で決めていきました。

本作では僕がコマ撮りをした部分もあるんですけど、メインアニメーターはスタッフで僕はディレクション。だから絵コンテをもとに尺何秒を決めて、スタッフと「このカットは何秒、こういう動きでお願いします」って打ち合わせしながら撮っていった感じです。言葉で伝えたり、自分で体を使ってこんな感じとか、動きで伝えたりしますね。

——撮影場所は篠原さんのスタジオで?

そうですね。普通の住宅の賃貸なんですけど、機材とかは本格的です。センチュリーを何本も購入したり、カメラのスタンドは普通の三脚ではなくて、もうちょっとしっかりしたスタンドを使用したりしています。

今のアトリエはあんまり広くないので、Fall Guysの撮影の際もなかなか大変だったと言いますか、アトリエ中を使って撮影したので編集室に使っていた部屋もパソコンをどかして撮影に使っていました。

——撮影した機材や使用したソフトを教えてください。

カメラ:Canon EOS RP
レンズ:RF24-105mm F4 L IS USM、RF24-240mm F4-6.3  IS USM、RF35mm F1.8 MACRO IS STM×2
ソフト:Dragonframe

——「このシーンは結構大変だった」というエピソードなどがあれば教えてください。

やっぱり、序盤の走っているシーンですかね。走るカットが2カットあるので、ここだけで4日くらいかかったと思います。

冒頭で6キャラ登場して、後半につれてどんどん脱落していくので撮影もラクになっていくんですけど(笑)。前半は6キャラ全部を走らせないといけないのと、カメラワークもコマ撮りで撮らなきゃいけないので、カメラも動かしながら6体を動かして、撮っていくっていうのに時間がかかってました。

——カメラワークもコマで撮影するんですね。

そうですね。コマ撮りですからね。
手で動かすというか機材を使うんですけど、1コマ1コマ人の手で動かしてって感じで撮影しました。

——絵コンテに「着地したあと、そのまま走る」と書いてありますが、動画を拝見したところ「構え」のシーンが追加されている。

掲載の絵コンテは第一稿で、最終稿はそこから少し変わっているんですね。クライアントさんから「Fall Guysのゲームのスタート場面に少し似せて欲しい」と言われまして。ガイズたちが並んでいるところをプレイヤーが後ろから見ている描写になっていて、一斉に走り出すんですけど、それに似せて欲しいということで、スタートするときに一度キャラクターが着地したあと、後ろにカメラを置いて走り出すカットを追加しました。


絵コンテ 
©︎ 2022 Mediatonic Ltd; Licensed by Devolver Digital, Inc

——Fall Guysのキャラクターの動きについて意識した部分がありましたら教えてください。

もちろんゲーム中の動きをスタッフがよく研究して動かしていますが、ゲームはCG映像なので柔らかい感じなんです。体が変形したりとかで柔らかさを出しているんですけど、フィギュアになると素材が硬いものなので変形ができないんですね。そこでどうやって固くならずに、ゲームみたいに柔らかくできるのかなっていうところは研究というか注意しましたね。

——障害物にゴミ箱やレコーディングなどが登場してきますが、これは篠原さんのアイディアですか?

はい。ゲームだともちろん出てこないんですが、僕らのYouTubeチャンネルの動画も「日常の世界でフィギュアが動いている」というのをコンセプトとしてやっていまして。その世界観をクライアントさんが気に入ってくださって今回も「日常の世界観でいこう」ってなりました。

障害物はゲームを見ながら、日常のものに置き換えたら何になるのだろうって考えて出していった感じですね。

——本作のワークフローを教えてください。

①打ち合わせ
クライアントさんと打ち合わせ、大体の大枠と大筋が決まります。

②企画の絵コンテを制作する

③絵コンテを二重チェックしてもらう
フィギュアは、クライアントのコトブキヤさん、キャラクターの監修は権利元や開発元だったりするので二重チェックをします。

④美術などを用意
撮影に使うものをフィギュアも含めてフィギュアもクライアントさんから送ってもらったり、どういうものを使うのかとかということを考えながら集めたりします。

⑤撮影/編集
撮影しながらも裏で編集もスタート。編集スタッフもいるので、撮影が終わったら同時に編集も進めていきます。

⑥編集作業
フィギュアを支えている道具など、写ってはいけないものが写った場合にバレ消しをしてもらいます。

⑦仕上げ編集
効果音や音楽を載せたり、尺・色味を調整をして完成に近づける編集をします。

⑧納品

——編集から仕上げまでどれくらいかかりましたか?

丸1日ずっとやっている日が何日かあって、だいたい1ヵ月くらいやってたと思います。

——納品した際、クライアントさんの反応はどうでしたか?

メールのやりとりだったんですけど「さすがとしか言いようがないほど滑らかでかわいらしい動きに仕上げていただき社内でも大満足の声ばかりです」(コメント読み上げ)って非常に喜んでいただけました。

——コマ撮り映画などの予定は?

映画っていうフォーマットはあんまり考えたことがありませんでした。たくさんのお金がかかるので…。

今思っているのは映像作品を販売するっていうよりも、おもちゃを作ってコマ撮りをする方が新しいし面白いんじゃないかな。

コマ撮りって映像手法の一つだし、コマ撮りテイストの映像が作れるCGも出てきているので、「コマ撮り」の映像表現だけを売りにしていると厳しいと思います。CGでやるかコマ撮りでやるか、となったとき予算の都合でCGになりましたっていうのはよく耳にします。そうすると仕事がなくなる状況で、「コマ撮りを続けるために映像作品を作るっていうのはちょっと難しいんじゃないかな」と。「コマ撮りを続けるためにはどうしたらいいんだろう」とを考えてみると“物質”と言いますか、コマ撮りって“モノ”が必須なんですよね。

なので、先に“モノ”を作っちゃえばいいんじゃないかなって思って。ゲーム全盛ですが、子どもはまだおもちゃで遊びますし、この先おもちゃがなくなるって考えづらい。おもちゃ文化は無くならないだろうと思いまして、そういうおもちゃに結びついたのをコマ撮り作品でやってみたいなって思います。

——今後について

今、いただいているお仕事をどんどん頑張って行きたいのですが、スタッフがまだ足りない。人手が足りなくてYouTube動画とクライアントワークの同時ができないんですよ。本当はどっちもやりたいんですけど、なかなかできなくて…。スタッフを探しつつ、今の撮影場所ももうちょっと広いところで引っ越ししたいな、と。

 

Profile

コマ撮りアニメーター 篠原健太

 

1989年愛媛県生まれ。小学生の頃にアニメーターを志し、パラパラ漫画を描き始める。大阪芸術大学附属大阪美術専門学校 キャラクター造形学科アニメーション専攻 在学中に制作した「ニワトリ物語~育む時の中で~」が第9回飛騨国際メルヘンアニメコンテストで子どもメルヘン大賞を受賞。その後コマ撮りアニメーションの制作を始める。2014年アニメーションスタジオ「ドワーフ」にアニメーターアシスタントとしてアルバイトで入社、2016年にはアニメーターとして正式参加。26thキネコ国際映画祭日本作品短編部門グランプリ作品『モリモリ島のモーグとペロル』、Netflixオリジナルシリーズ『リラックマとカオルさん』、トンコハウス『ONI』のpilot filmほか、多数コマ撮りアニメーションを担当。現在は株式会社LuaaZに所属しYouTube発信に力を入れている。 

Twitter:@shinohara_kenta

STAFF

【コマ撮り】フォールガイズの競争を家の中で再現してみた【コトブキヤ】

フィギュア:Fall Guys(コトブキヤ)
ディレクター:篠原健太
アニメーター:山中みさき、篠原健太
編集:Kasubuchi Rio

Animist
Animistとは全てのものの中に霊魂が宿っているという考え方『Animism』を信じている者という意味です。
これは、生命のない動かないものに命を与えて動かすクリエイターのチャンネル

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