2021.07.02

MSIノートPCを使って木村俊幸氏がオリジナルビジュアルを制作!

 

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様々な作品がデジタルで制作される世の中で、アナログな技術を今も取り入れながら活躍するアーティストがいる。最先端のVFX界隈に身を置きながら美術家としても活躍する木村俊幸氏に最新のグラフィックスボードが搭載されたMSIノートPC「GF75 Thin 10U」を使ってオリジナルビジュアルを制作してもらい、作品づくりにおいて重要な考え方を伺った。

 

TEXT_神山大輝/ Daiki Kamiyama(NINE GATES STUDIO
PHOTO_竹下朋宏/Tomohiro Takeshita
INTERVIEW_阿部祐司/Yuji Abe(CGWORLD)

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木村俊幸氏Toshiyuki Kimura
コンセプト・マットアーティスト・VFXスーパーヴァイザー・美術家

岩手県出身。マリンポストプロダクション、イマジカ特撮部を経て独立。美術家としてVFX studio LOOPHOLEを活動の中心とし、コンセプトデザイン、マットアートを用いた絵画的なVFXを打ち出し続けている。VFXと現代美術を結ぶ同ギャラリーでの個展、MATIMシリーズを世界に発信する他、若手作家の展覧会をオーガナイズする。平成ゴジラシリーズ、SPAWN THE MOVIEで早くからデジタルマット画を導入、CASSHERN(第10回 記念 AMD Award ’04Best Visual Designer賞)、映画「ブルーハーツが聴こえる/人にやさしく」ではダンボール宇宙船を単独造形しVFX-JAPAN アワード2017 優秀賞を獲得。最新作 『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』・ドラマ 機界戦隊 ゼンカイジャー(concept /matteart)、光/ヒカキン&セイキン(VFXsupervisor/Concept/matteart/enviromentCG/miniature)、Marty Friedman :「負けないで」/ The Perfect World(feat.+α/あるふぁきゅん。)(VFX dir./Concept design/ Matte Art/vfx )、体験型複合施設: 羽田出島 | DEJIMA by 1→10『The Heart of ZIPANGU』・縁日・『Earth &Human』(Concept design)、僕だけがいない街 / Netflix (Concept design)etc 画集「MATIM-SAY YES-」(東京都現代美術館/金沢21世紀美術館/府中市美術館)、OJUNとの合作viny bon(東京都現代美術館図書、所蔵)背景ビジュアル資料集1~14(監修/イラスト) スチームパンク東方研究所(巻頭イラスト)

 

——木村氏はマットペイントをベースとしながら、ミニチュア制作や3DCG制作全般など、長い業界歴の中で幅広い分野の知見を身に付けて来ていると思います。特に3DCG制作については、非常に早い段階から活用されていました。現在、DCCツールとしては普段なにをお使いでしょうか。

木村:いまはPhotoShopとCinema4D、After Effectsをメインに使っています。最近ではUE4も使用するようになりました。どんなツールを使おうともビジュアルエフェクトワークの基本概念は変わらないですが、特にリアルタイムエンジン時代ではワークフローが変革するとともに撮影スタイルも変わるはずです。今までは技術監督と背景美術と綿密に打ち合わせをして作っていた背景を3DCGで制作できて、さらにバーチャルカメラでブレなく撮影できるというところは利点でもあります。もちろん、リアルタイムでなくても良いシーン、実際の撮影で面白みが出るシーンもありますよ。

——その意味では、実際に制作したミニチュアと3DCGを組み合わせた作風というのも、非常に独特であると感じます。

木村:この歳になると一生懸命CGを勉強していても眠くなるというか、デジタルワークの中の「萌えないポイント」みたいなものが個人的に出てくるんです。目が覚めるような表現ってなんだろう、と自問自答した中で、たまたま以前の案件で宇宙船を制作するときに、段ボールなどを集めてきて、自分が楽しむためにミニチュアをつくってみたんですね。ほかにも他案件のビルの背景など、特徴的なシーンにはミニチュアを取り入れてみたのですが、これが評判が良くて。このミニチュア…見方によってはゴミかも知れませんが、普通の監督なら「何を作ってるんですか?早く3DCGモデルで作り直してください」と切り捨ててしまうところ、一度すごく褒めてもらって、面白がってもらうという経験があって。アーティストとしては褒められると嬉しくて、「やったー!」という感じで、そこからどんどんつくるようになりましたね。


木村氏自宅にあるアトリエ。現代美術を中心に様々な作品が生み出されている

——アナログなものをあえて取り入れることで、3DCGだけでは成し得ない表現をしようとしているのでしょうか。

木村:ミニチュア制作は釣り糸やテグスでバランスを取って、グルーガンでパーツをくっつけてと、3D的な視点は必ず必要にはなります。ミニチュアは3DCGと違って「劣化」する、それがすごく面白い。素材によっては作る前から壊れていってしまう場合もあって、お化粧が取れちゃう女優さんみたいに、一番美しい時間を過ぎるとどんどん疲れが出てくる。紙のような素材を使うと、いきなり形が崩れたり、エイジングのようなものが始まるんです。撮影中も「今ここが一番綺麗です!」「右側の部分がオススメです!」なんて言いながら撮るんですけど、しばらくしたら本当にゴミみたいになってしまうんですね。

——なるほど。その瞬間の一期一会のような物体としての面白みがあるんですね。

木村:はい、これがCGと明確に違うところです。CGは次の日でも数年後でも、1回開こうが何回開こうがデータは変わりません。それと異なり、どんどん形が変わっていくのがひとつの可能性のように感じるんです。ノイズや破壊、そういう有機的なもの、複雑なものが既にそこで起きているんですよね。その複雑性とリアルなライティングによる光の影の関係性、そういった要素がモノとしてのリアリティを醸し出してくれるんじゃないかと思います。

——この考え方は非常に面白いですね。今回の作品も様々な要素が組み合わさっているとお伺いしておりますが、改めて本作について詳しく教えてください。

木村:コンセプトとしては分かりやすいでしょう、いわゆる「良くあるやつ」という感じですが、こちらもミニチュアとマットペイント、3DCGモデルを組み合わせて制作しています。


木村氏がMSIノートPCを使い制作したビジュアル

tool :C4D / Photoshop CC/ miniature (2021)

Miniature works by
Dumn・Board ・Learns
Arincyu (GENMODELS )
meguro-yatume-unagi /Asian small-clawed otter

Omnidirectional camera advisor
Takahiko Akiyama (4D brain Inc.)
Thanks for SHIROGUMI INC. @ ToeiZukunLab

——どこがモデルでどこがミニチュアか、一見すると分からないくらい綺麗に合成されていますね。

木村:ある程度は分かりやすくなっているとは思います。合成の考え方もハリウッド映画だと「全てを馴染ませて美しくトリートメントをして、トーンを全部合わせる」ということが美しいとされていますが、そういう概念ではないところもたくさんあります。合成というより、コラージュのようにデザイン性やキッチュな感じを取りまとめて画作りをしても良いんです。そんなことを考えながら、今回は全天球の画と全天球の前のマットペイント、2枚を用意してみたんですが。例えば右側、左側のオブジェクトは、段ボールで作ったミニチュアで、手前もミニチュアワーク。中央下の円形の建物は水切りザルですね。で、真ん中にCinema4Dで制作したモデルが入ってきて、奥の方はすべてマットペイントというかたちになっています。

——要素の切り分けはどのように考えましたか?例えば、ある部分にミニチュアを用いようとしたのはどういった理由だとか、その辺りはいかがでしょうか。

木村:ひとつ言えるとしたら、ビル群でしょうか。最近だとアセットを持って来てくっつけただけで、すぐにちゃんとしたビルに見えるようになるじゃないですか。手軽にリッチな表現は自分も使いますし、それを格好良いなと思う場面もありますが、今回はそうではなく、もっとこう…例えば飲食店が入っていたり、高架下に飲み屋があったり、マッサージ店があったり。小綺麗ではなく年季の入ったビルで、ちょっと壊れていたり、「なぜこんな変な増築工事をしてしまったんだ?」というような感覚が入るほうが、個人的には好きだと思ったんですね。

——既存のアセットを組み合わせたり、3DCGで精巧につくりすぎると外連味が出ないということでしょうか。

木村:例えばこの画が、美しい、素晴らしいビルの谷間に出てきたというシーンであれば、こういうやり方でつくる必要はないと思います。ただ、自分の中では、この画は「ビルの猫道のような、パイプがごちゃごちゃしていて油臭い、そういったところを飛び越えながらミッションをしなければならない、ようやく飛び出して来たらこのビルの谷間だった」という感じで。このストーリー性だと、「ここは段ボールでやった方が不規則で面白い」とか、そういう順序で物事を考えています。逆に、しっかり規則性のあるところは3DCGで作り込む。人間の営みや文明のすべてが思った通りにいかないように、規則性と不規則性がそれぞれを隠し合うような関係性で。こういった部分から、マテリアルに何を選択するかを考えています。

——コンセプト部分や思想的な背景から、個々の素材の選定を行なっているんですね。

木村:世の中は理不尽なことが多いじゃないですか。その中で一生懸命に生きて商売をしたり、怒ったり泣いたり、誰しもに一筋縄では語れない境遇がある中で文化が多様化していくところを、私たちの世代は実際に見て楽しんでいた世代で。インダストリーな、一定化したものを納品することも大切ですが、アーティストは根源的な世界を無視してはいけません。このことが、翻って自分がつくる世界に関しても、素材なり場所なり、適材適所を考えることの助けになると思います。

——ありがとうございます。ここからは、制作に使用したGF75 Thin 10Uについてもお聞かせください。今回の作品は、全てノートPCで行ったのでしょうか?

木村:はい。もともとは自分でパーツを選定してBTOメーカーに組んで頂いたデスクトップPCを使って3年ほど作業していましたが、今回使わせて頂いたノートPCもスペック的にやりづらいとか、そういったこともなく、非常に快適に作業ができました。

——3年前に購入とのことですが、PCの買い替え周期などはありますか?

木村:基本的には使い倒してしまうタイプなので、「もうダメだ」となるまでは使います。気持ちが乗らない限り、新しいツールに移行する決意が出ない限り、ずっと同じ機種を使い続けてしまうんですよ。中小企業のおじさんみたいに、いまだにフロッピーディスクを入れたりしてしまうみたいな、そういうタイプなんですよ。ただ、最近はそうも言っていられなくなってきた。「気持ちが乗る」という意味では、UE4がその契機になったんです。いろいろなことを考えて差し引きした結果、リアルタイムエンジンは触った方が面白いだろうという気持ちになったので、ちょうど今年は何台かPCを買い替える予定です。


木村氏のCG作業スペース。秘密基地という言葉通り、ワクワクするモノがところ狭しと並びながらも作業に集中できる環境だ

——UE4などのゲームエンジンは特にGPU性能が問われますし、複数のツールで開発する以上はCPU,GPU両面だけでなくメモリ等も含めた総合的なスペックが必要になると思います。

木村:そうなんです。そして、ノートPCということで可搬性とスペックを共存しているのは、すごく良いですね。私も現場にノートPCを持参して、監督にテストを見せたり世界観を共有したり、そういう方向性を決める作業をやっていますが、例えばそのスペックが足りていない場合は当然そこでUE4を走らせたりすることができないわけです。一度作業場まで戻り、完成したデータでチェックしてもらうしかありません。

——その意味では、本機のように最新GPUを搭載したノートPCがあれば、現場でもリアルタイムに作業ができると。

木村:そうですね、このまま持って帰って、これで現場とコミュニケーションを取りたいくらいです。MSIノートPCは本当にそれくらい快適でしたし、今後もチャンスがあればぜひ使い続けてみたいと思いますね。

 

——ありがとうございました!

TOSHIYUKI KIMURA ART WORKS:https://www.toshiyukikimura.com/
VFXstudio LOOPHOLE:http://loophole.jp/
ART SHOP:https://loophole.thebase.in/
ARTSTATION:https://www.artstation.com/kimuratoshiyuki

Exhibition :
https://bijutsutecho.com/exhibitions/6691

Sci-Fi & Steam Punk illustration :
http://www.atelierkochi.com/steampunk-lab/shop/

 

PAINTING SCRIPTURES『MATIM-SAY YES-』
collection :The Museum of Contemporary Art Tokyo /21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa/Fucyu Art Museum
https://cweb.canon.jp/dreamlabo/special/users_voice/uv-002.html

 


木村俊幸『MATIM-聴衆令嬢戦記ー』

NADiff a/p/a/r/t
http://www.nadiff-online.com/?pid=154451370

はるまげ堂
http://obliteration.shop-pro.jp/?pid=154609020

What’s MATIM?
木村俊幸が生涯をかけて制作するトータルメディアアートワーク「MATIM(メイティム)」、その全体像は宇宙と同じ膨張と縮退を繰り返す。壮大なスペースオペラもしくは真理へと導く教典。
(BUTCHER ABC 関根成年 -談)
CM・ロングバージョン

https://youtu.be/zs4JeurMxgM

Instagram:https://www.instagram.com/kimurako000/
Twitter :@matimradio

 

 

製品情報

GF75 Thin 10U

OSWindows 10 Home
ディスプレイ17.3インチ、フルHD(1,920×1,080)、ノングレア、リフレッシュレート144Hz
CPUインテル® Core™ i7-10750H(2.6GHz / Turbo 5.0GHz / 6コア12スレッド)
GPUNVIDIA® GeForce RTX™ 3060 Laptop GPU 6GB GDDR6
GPU仕様最大GPUブーストクロック:1,485MHz
Dynamic Boost 2.0有効時最大消費電力:75W
※ブーストクロックや消費電力は製品構成や使用環境により異なります
チップセットインテル® HM470
メモリ16GB(8GB ×2)DDR4  最大64GB
※MSI公認サポート店でのみ増設可能
ストレージSSD 512GB(M.2 NVMe)

 

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