
横溝正史原作の古典的名作『八つ墓村』がホラー風スパイスを加味され、令和に復活。9月18日(金)から全国ロードショー!
テキスト:幕田けいた
『八つ墓村』【9月18日(金)全国ロードショー】
ミステリの名作に新風を吹き込む
ミステリ作家の巨匠・横溝正史のベストセラーを映画化した『八つ墓村』が9月18日に公開される。名探偵金田一耕助が登場して80周年の今年、何度も映像化されてきた『八つ墓村』にチャレンジしたのは、『呪怨』シリーズを手掛け、ハリウッドリメイク版で日本人監督として初めて全米興行収入1位を獲得したJホラー映画の旗手、清水崇監督。
キャスティングでは、これまで片岡千恵蔵、渥美清、豊川悦司、古谷一行といった名優たちが演じてきた金田一役に、コミカルからシリアスな役まで、幅広い役柄を演じ好評を博してきた歌舞伎俳優の尾上松也が挑む。緑のパンツにシャツ、中折れ帽にコート姿という現代風スタイルにシフトした名探偵役の、飄々とした演技が印象的だ。
1938年に岡山県で実際に起きた「津山三十人殺し」事件をモデルにした、村の因縁話の中心人物、辰弥の兄・久弥と父・要蔵の2役を演じたのは滝藤賢一。「八つ墓」の歴代要蔵役でも、女面を付けて日本刀とライフルを手に村を駆け回る狂気の演技はダントツだろう。特筆すべきは、事件を追う磯川警部役の小籔千豊。堅物ながら、あまり役に立たない警部役をユーモラスに演じられるのは、さすが吉本新喜劇元座長の実力で、清水監督の希望通りのキャスティングだったとか。
また、映画ファン的には、過去作から引き継いだメモリアルにも注目。田治見家の屋敷に使われた「広兼邸」は、1977年版、1996年版のロケで使われた、岡山県高梁市に保存されている歴史的建造物が再登場。本作では田治見家/広兼邸がドローンでも撮影され、見たことのない顔を見せてくれている。
大学生の井川辰弥(演:奥智哉)のもとに、幼いころに別れた母の訃報が舞い込む。遺体を検分するため、母の故郷、岡山県の「八つ墓村」を訪れる辰弥は、途中、奇妙な探偵・金田一に出会う。名家・ 田治見家の莫大な遺産の相続人である辰弥の帰還に合わせたかのように、不可解な連続殺人事件が発生する。そこで辰弥は、封印された自身のルーツを知り、村に伝わる忌まわしい怨念の記憶を蘇らせることになる……。
ホラー的解釈に納得
新作『八つ墓村』では、これまでの映像作品から設定や物語を大きくアダプト。舞台は令和になり、辰弥は内定ゼロで彼女もいない、ちょっと冴えない大学生に。そして物語は清水監督版らしく、濃い目のホラー風スパイスで味付けされている。
この新解釈には、いろいろな事情がある。戦後の昭和を舞台に、山村の因習や祟りなどの要素を盛り込んだ原作小説は、後世のミステリ作品にも多大な影響を与えた大ヒット作なのだが、実は金田一耕助が物語の主人公ではない。物語は主人公・寺田辰弥の一人語り形式の、サスペンス小説や冒険小説に近い印象の作品で、金田一による捜査や推理といった活躍はほとんど見られない。それもそのはず、金田一が事件解決に参加したのは、原作小説の時系列で前作品にあたる『夜歩く』の事件で、たまたま岡山に来ていたため『八つ墓村』事件もついでに引き受けたという心もとない動機で、そもそも金田一の登場シーン自体がかなり少ないのだ。しかも、いかにも不気味なタイトルが盛り上げてきた八人の落武者の祟りや呪いの要素も、事件の裏側が解き明かされるにつれ、影をひそめてしまう。つまり原作『八つ墓村』は、映像化するためには新解釈で補完せざるを得ないブランク部分が多い作品なのだ(そう考えると、これまでの映像化作品が、どれもかなり脚色されていたわけが分かるだろう)。
もちろん新作『八つ墓村』では、初期横溝作品から通底している重要なテーマ「過去の因縁が現在を支配する」構造や「日本の土着系ミステリ」的な外部から隔絶された村社会の閉塞感など、ホラーミステリにうってつけの素材はしっかり描かれ、不安や恐怖を盛り上げている。特に八つ墓村に伝わる不気味な因習、そして村人たちが集団心理によって次第に狂暴化していくようすをクローズアップしている点には、清水監督の手腕が発揮されている。
ホラー風スパイスという新しい要素を取り込んだ清水版『八つ墓村』は、横溝原作を違う角度から見た、古くて新しい金田一耕助映画なのである。
『八つ墓村』【9月18日(金)全国ロードショー】
原作:横溝正史「八つ墓村 金田一耕助ファイル1」(角川文庫/KADOKAWA 刊)
主題歌:「DOOM」TMG(Tak Matsumoto Group)
監督:清水崇
脚本:尾ヶ井慎太郎・清水崇
音楽:アントンジュリオ フルリオ
製作:「八つ墓村」製作委員会
製作幹事・配給:松竹 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
制作プロダクション:ダーウィン
制作協力:松竹撮影所
公式HP:https://movies.shochiku.co.jp/yatsuhakamura-movie
X:https://x.com/yatsuhaka_movie/
TikTok:https://www.tiktok.com/@yatsuhaka_movie/
©︎2026「八つ墓村」製作委員会 ©︎Yokomizo Seishi/KADOKAWA





