『開田裕治画集 メカニズムの軌跡』よりスペシャル対談 開田裕治×出渕裕
ゴジラやウルトラ怪獣など、怪獣イラストの第一人者で怪獣絵師として知られる開田裕治氏。その幅広い活動の歴史のなかから、ロボット系の画稿を集めた保存版『開田裕治画集 メカニズムの軌跡』が発行された。
『聖戦士ダンバイン』のプラモデルパッケージイラストを中心に、『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』『鉄人28号』『マジンガーZ』『超獣機神ダンクーガ』『新世紀エヴァンゲリオン』『トップをねらえ!』『機動警察パトレイバー』『ガンヘッド』etc……僕らを作ってきた数々の名作のロボット画が一同に集結。大判サイズに192ページと迫力満点、見応えたっぷりの1冊だ。
今回は、巻末に収録されたメカニックデザイン・キャラクターデザインの巨匠、出渕裕氏との対談を特別に抜粋してお届け。ぜひ本書で全文を読んでほしい。
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『開田裕治画集 メカニズムの軌跡』巻末対談より抜粋
開田さんと僕とのつながりとなると、きっかけは特撮ですから(出渕)
開田:最初は、『SFマガジン』だったっけ?
出渕:そう、テレポート欄で、ですね。
開田:当時「大人になっても怪獣映画が好きな人はいますか?」といったような投稿があって。それに対して、全国の怪獣ファンからすごい反響があったのですよ。みんな、自分以外に「そんな奴はいない」と思っていましたから。
出渕:それまでは、こそこそとやっていたんですよね。
開田:それをきっかけにして、日本で最初の特撮怪獣専門のサークルが立ち上がったんです。当時は会員制で、会費を払って会誌を郵送する活動が主流でしたが、どうしても怪獣ファン同志で直接語り合いたかった。日本SF大会の合宿などで怪獣の話で盛り上がる機会もありましたが、年に1回では我慢できない。で、大学3年の時に自分でも同好会を立ち上げたんですよ。
出渕:『宙(おおぞら)』の関西支部って形でしたよね。
開田:『宙』は当時あったタバコの銘柄だったから、それに倣って『セブンスター』って名前にして。その会員になってくれたのが出渕さん。
出渕:テレポート欄で『セブンスター』の存在を知って、入会希望のお手紙を書いたのが最初です。開田さんは関西在住で、私は実家の横浜に住んでいたから、すぐに会うということではなく『購読会員』という形でした。
開田:その頃は、同好の士とコミュニケーションが取れるだけでもありがたい時代だったのに、出渕さんのはすごく熱い手紙だったので。だから「君はなかなかいいね!」と感心しちゃって。
出渕: 僕が高校生で、開田さんは大学生でしたからね。大人に見えました。
開田:……僕、上から目線になっていたりしなかった?
出渕:いや、大丈夫でしたよ! いつもネタにしていることなのだけど、開田さんと文通していて普通なら、便せんに1、2、3……と番号をふるところがゴ、ジ、ラ……ってなっていて。「やはりこの人は只者じゃない!」と思いましたよ。
開田:そういうこともあって、出渕さんは会員のなかでも特に印象的な存在でした。
出渕:バカなことやっていたものです。あとは『イナズマンF(フラッシュ)』について書いていませんでしたか?
開田:そうそう! 当時の僕は“東宝育ち”、“円谷育ち”って感じだったから、東映の話が新鮮だったということもあります。
出渕:同人誌はシルクスクリーンを使っていましたよね。
開田:当時の同人誌はガリ版刷りが普通だったのですけれど、僕は美大に通ってたこともありましたから。表紙だけはシルクスクリーン、多色刷りにして、少し豪華な感じにしていました。
出渕 取材写真もたくさん載っていましたよね。
開田:載せたくなるじゃないですか、写真は! 画質は荒いですけれど。
出渕 取材の記念写真なんかも載っているのですけれど……直接お会いしたことがまだなかったんで、取材に行った人たちの写真見て「この中のどの方が開田さんだろう」とか思ってたりしてました。実はこの頃は、長髪だったんですよ。
開田:そうだったね! 東京に出てからは、『怪獸倶楽部』にも入っていたのですが、あのころにご一緒していた方々は今でも第一線にいますよね、氷川竜介さんとか、中島紳介さんとか……今からも考えても、ポテンシャルの高い顔ぶれだったと思います。
出渕:東京に出てきてからは、銀英社に入られたんですよね。
開田:設立に立ち会って、その後1年くらい在籍しました。
出渕:そこで『宇宙空母ブルーノア』のデザインをやられて。
開田:増尾隆之さんがゴドム(人工惑星)側で、僕が地球側を担当しました。この間まで学生だった奴にいきなりデザインを任せるなんて、いかに現場が大変だったかわかりますよね。
(中略)
新しいロボットものが成立しづらい時代(出渕)
――昨今のロボットアニメに対しては、どのような印象をお持ちですか。
出渕:新しいロボットものは、なかなか成立しづらい時代だとは思いますね。『ガンダム』の影響力が大きすぎて、どうやったって“ガンダム”か、“ガンダム以外”かという見え方になっちゃう。だから「また昔のを……」と思われるかもしれないけど、それこそ『ダンバイン』とか、『戦闘メカ ザブングル』とかは、またチャレンジしてみたいですよね。
開田:『ダンバイン』は今の技術でできたらいいだろうね。
(続きは本書で!)
Profile
開田裕治(かいだ・ゆうじ)
1953年、兵庫県生まれ。
「怪獣絵師」の異名を取るイラストレ-ター。日本SF作家クラブ会員。 怪獣やロボットなどのSFイラストをプラモデルや映像ソフト、音楽ソフトなどのパッケージを中心に描く。その活躍は、雑誌、単行本、トレーディングカード、ゲームソフトなど幅広い。 1997年に第28回星雲賞(アート部門)を受賞。
出渕 裕(いづぶち・ゆたか)
1958年、東京都生まれ。
アニメーション監督、メカデザイナー、漫画家、イラストレーターなど、様々なジャンルで活躍するクリエイター。数多くのアニメ作品でメカデザインを担当。また『スーパー戦隊』シリーズや『平成仮面ライダー』シリーズなどの特撮においてもキャラクターデザインを行っている。また、2002年には『ラーゼフォン』で監督デビューし、2012年には『宇宙戦艦ヤマト2199』の総監督を務めあげた。
書籍概要
開田裕治画集 メカニズムの軌跡
【概要】
ゴジラやウルトラ怪獣など怪獣イラストの第一人者で怪獣絵師として知られる開田裕治氏のこれまでに描かれたロボット系の画稿を集めた書籍。 1980年代に発売されたアニメ『聖戦士ダンバイン』のプラモデルのパッケージイラストを中心にこれまでに描かれたロボット画を約160点収録。その作品の魅力を解説した1冊です。
掲載内容: 聖戦士ダンバイン/機甲界ガリアン/戦闘メカ ザブングル/重戦機エルガイム/超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか/機甲戦記ドラグナー/鉄人28号/マジンガーZ/超電磁ロボ コン・バトラーV/無敵鋼人ダイターン3/勇者ライディーン/光速電神アルベガス/超獣機神ダンクーガ/快傑蒸気探偵団/ドラえもん のび太と鉄人兵団 魔神ガロン/太陽の塔のロボ/ZOIDS ゾイド/新世紀エヴァンゲリオン/トップをねらえ!/トップをねらえ2!/THEビッグオー/機動警察パトレイバー/スーパーロボット大戦OG/ガンヘッド/オリジナルロボット
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A4変型版/192ページ
発売・発行:池田書店