どこよりも分かりやすい! 光と影を駆使したBlender演出術 ③光をデザインする

今回は、「光をデザインする」というテーマで書きたいと思います。作品づくりにおいて、ライティングはシーンで語りたい感情やストーリーを、光と影で説明する行為だと考えています。

ただ明るくする、見やすくするための工程ではありません。
光は、見る人の「感情や視線」を操作するための設計要素になります。

今回は、ヘッドフォンのCGを事例にしながら、
光をどう「デザイン」すればよいのかを、流れで見ながら整理していきます。

 

 

 

 

1.まずは「語るストーリー」を決めよう

ライティングを組み始める前に、必ずやるべきことがあります。それは 「このシーンで何を語りたいのか」を決めることです。言い換えると、「見せたい感情」を先にデザインするということだと思います。

この感情というものは、例えば………

●怪しさ、不気味さ → 少しハードライト、強めのコントラスト、狭い照射範囲

●優しさ → ソフトライト、広い面光源、なだらかな陰影、暖色系

怖さ、恐怖心 低彩度、限定された色数

 

このように、最初にイメージしたい「感情」を再現する意識を持つことが大切です。

光は「雰囲気づくりの最後の仕上げ」ではなく、「最初に方向性を決めるための要素」として意識して取り組むことが重要です。

そしてこの感情を読み解くためには、いくつか要素を細分化して考える必要があります。

例えば、感情が生まれた場所・環境・空間はそれぞれどのような構成なのか。

  • 屋内か、屋外か
  • 時間帯は朝・昼・夜のどれか

→もっと細かく見ると、夕暮れか、真夜中か、朝日が昇るタイミングかなど

  • 晴れか、曇りか、湿度は高いか低いか
  • その空気は冷たいか、温かいか
  • 素材は硬質か、柔らかいか

これらは、あくまで一つの要素でしかないですが、こうした条件をしっかり考えていくことで、感情をロジカルに表現へ落とし込むことができます。

構図が決まったタイミングあたりで、まず初めに考えておくことが重要です。

 

 

2.前提条件を定めよう

今回のヘッドフォン作品では、「妖艶さ、美しさ、洗練された怪しさ」といった感情や見え方を意識しました。これらを環境や空間に落とし込むとすると、

  • 暗いスタジオ空間のような背景(=妖艶さ、怪しさに繋がる演出)
  • 冷たい空気感(=ヘッドフォンの色味に合わせたライティング)
  • シルエットが際立つような光の当て方

というコンセプトを前提にしています。

この「表現したい感情」を空間設定に落とし込むことにより、「キーライトを使い、冷たい照明でヘッドフォンを浮かせる」という演出術を実装することが決まります。

もしここで、背景にも光を足し始めてしまうと、ヘッドフォンのシルエットが埋もれてしまったり、全体的に明るくなり、伝えたい妖艶さ、今回のコンセプトとずれてしまいます。

そして、ヘッドフォンを床から浮かせている表現も、怪しさを生み出すポイントの一つになっています。すべてはコンセプトを意識して作られているものです。

 

ここからは、具体的なライティングの設定について解説します。

 

 

3.「明るさ」はどこを見せたいかで決めよう

光の強さは、ただ「明るい・暗い」を決めるためのものではなく、どこを見せたいかを決めるための設計になります。今回は、焦点をヘッドフォンの片面に設定し、強めの光を当てています。

慣れないうちは、焦点を一つに絞って見せたいところを明確に意識することが大切だと思います。ライトは「スポットライト」を使用し、ヘッドフォンの面に強めに当たるように設定しています。

この時に、「半径」と「発光の形状」をうまく使います。まず、「半径」を操作します。「半径」は広げ過ぎると、ヘッドフォンへの光がぼやけてしまうので、注意が必要です。

さらに「発光の形状」から、角度を少し与えることで面に広くライトが当たるように設定しています。こちらも広げ過ぎると、全体を明るくしてしまうので、うまくコントロールする必要があります。

光は、「どの角度から、どれくらいの範囲を、どの程度の明るさで当てるか」で表情が大きく変わります。

 

 

4.光の色をコントロールして、質感を伝えよう

続いて、明暗の差を生み出すために、あえて少し床面にソフトなライトを2つ当てています。

ここでは、色味をコントロールすることで、妖艶さを演出しています。

ポイントとしては、色の対比構造を意識している点です。

全体的に青みのあるライトを中心に配置し、クールな印象を与えつつ、青と対比構造にある赤やピンクといった色味を背景のライトに加えています。(例)

そうすることで、よりシルエットが明確になるとともに、床面とヘッドフォンの間に明暗差を生み出します。

全体を均等に明るくすると、「何も主役がいない絵」になります。この明暗差を生み出すことで、視線は自然と被写体であるヘッドフォンへ集まります。

 

5.最後に、必ず「引いて」見よう

ライティングが一通り組めたら、必ずカメラを引いて、全体を確認します。

だいたい以下の3点を見るとイイと思います。

  • どこが一番明るいか
  • 視線はどこへ流れるか
  • 不要な光が混ざっていないか

引いて見ることで、全体のバランスを確認するとともに、「主役が照らされている」印象が成立しているかを確認できるのが利点です。

 

光をデザインする感覚を育てるために

ライティングは、技術も大切ですが、 観察 も大切です。

  • この光は、どこから来ている?
  • 影は硬い?柔らかい?
  • 色は何色を帯びている?
  • どこだけが照らされている?

こうした問いを持ちながら光を組むと、作品の説得力は一気に変わります。まずは「何を語りたいのか」を決めて、その答えに光を使ってみると、よりライティングの面白さを感じられると思います。

 

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ゆとりCG

CGアーティスト ┊︎ 「Blenderとの距離を、毎日1ミリ縮める」をコンセプトに、Blenderの楽しさ、気軽さ、ノウハウを発信しています ┊︎ note開設 ┊︎ アニメ調好き × Blender独学者
 

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