【スカルプターズ・データベース】リアルだけではなく、造形に宿る空気感も表現する 黒澤津 勝大

フィギュア、ゲーム、CM、映画、そしてアートのジャンルで最も造形力のあるスカルプター・原型師を集めた、最新データベース創刊!

シリアス造形とポップで可愛い美少女造形の二刀流
黒澤津 勝大 Profile


黒澤津 勝大とその利き手

黒澤津 勝大

1991年1月 三重県生まれ。
2011年 特殊メイク・造形制作会社に入社し、TV・映画・CM・各種イベント等における造形に携わる。
2021年 造形制作会社を退社し、フリーランスとして活動。
2022年 株式会社Acxyz Creativを設立。

X(旧Twitter): @kurok116

 

最新作

The Unbroken Fire
戦う少女をテーマに作り始めた作品なんですが、途中で迷いが多くなってきたので、世界観やストーリーも細かく設定していきました。ざっくり説明すると、少数民族の生き残りの少女が失った記憶を取り戻す旅をしているところです。

代表作


オリジナル作品「Moments 15/円環」

オリジナル作品「Moments 20/円環」


オリジナル作品「Spring」

オリジナル作品「息抜きうさぎ」

オリジナル作品「大便小僧」

2023年上半期で一番変化したこと

作品のコンセプトにかなり重きを置くようになりました。なぜ今自分がそれを作るのか、何を使ってどう表現するのかなどをじっくり考え悩んでいます。日々思うこと、感じることを作品に上手く昇華させていきたいと思ってます。

2023年上半期で一番良かった資料

今更感あるかもしれませんが……、本だと『芸術闘争論(村上 隆・著)』、映像だと『「もののけ姫」はこうして生まれた。』です。

2023年上半期で一番感動した作品

『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』です。
前作も好きでしたが、映像・ストーリー・キャラクターすべてが刺さりました!

オリジナル作品の場合のワークフロー

01. 作品のテーマやコンセプトを考える(一番楽しい時間)
02. イメージに近い資料をPinterestなどを使って集める(原型中はずっと)
03. スケッチである程度の構図やポーズを決める(1日)
04. ZBrushですべてのパーツをざっくり配置してボリューム感やバランスを見る(3日程度)
05.  悩みながらちまちま進める(3ヶ月~半年ほど)
06. データが完成したらパーツ分割(1~2日)
07. 出力・洗浄・表面処理(2~3日)
08. ゆっくり塗装(3週間程度)
09. 完成したら写真撮影

 お仕事の場合のワークフロー

01. キャラクターの資料をPureRefにまとめる(コンテンツが配信されている場合はそちらも観る)
02. 顔とポーズを合わせた素体を制作しクライアントチェック
03. 結果を踏まえて修正しながら服や小物も進めていく
04. ブラッシュアップ後、パーツ分割し、データ納品

かかる時間はまちまちです…。

 

 

 

INTERVIEW

——小さい頃なりたかったものは?

画家(小3くらい?)→漫画家(小5)→マジシャン(小5)→特殊メイクアップアーティスト(小6) です。

——最初に造形したのはいつですか?

写真はありませんが、小学5年の頃に粘土でイグアノドンの頭を作って金賞を貰いました。あとは中学3年の頃に、石粉粘土でフランケンシュタインの怪物の頭を作ったことはよく覚えています。ZBrushで初めて造形したのは2009年で、高校卒業してすぐくらいです。老人の顔を作りました。その後6年間くらいは粘土造形がほとんどで、2015年くらいからまたZBrushを使い始めました。

ZBrushで初めて造形した老人の顔

——出身校と、学生時代にはまっていたものを教えてください。

三重県立飯野高等学校の応用デザイン科出身です。CGコースを選択していて、3DCGのアニメーションを作っていました。当時はアニメーションダンスにハマっていて、空いている教室で放課後に毎日練習したり、チーム組んで文化祭やクラブでステージに上がって踊っていました。高校卒業後はAmazing School JURという特殊メイクの専門学校に通いました。造形制作会社に勤めているときも、デジタルハリウッドに通っている時期がありました。

——いつ頃から造形作家を目指しましたか?また、本格的に造形した最初の作品を教えてください。

造形制作会社に入って、仕事でリアルな人の頭部を×2スケールで制作したのが最初ですかね。楽しくて朝早く出勤して夜遅くまでずっとやってました。個人制作だと、『ひょっとこ』をシリコンでリアルに表現したマスクだと思います。ただリアルに人の顔を作ることがつまらなく感じていたので、口をねじって虹彩もねじりました。仕事でも個人制作でもシリコンやFRPを使った1/1スケールのリアルな造形を制作することが多かったです。

オリジナル作品『ひょっとこ』


女性ダミー(シリコン製)


手の造形(FRP製)

——使っている粘土の種類、塗料の種類、愛用のツールなど

粘土造形をしていた頃はChavantの「NSP」という油粘土と、Lagunaの「WED Clay」という水粘土がメインでした。
現在はZBrushをメインで使っています。3DプリンタはPhrozen Sonic Mini 8Kを使っています。塗料はMr.カラーや油絵具をよく使います。
 

——落ち込んだ時に聞く音楽、もしくは見る映像は?

SOIL & “PIMP” SESSIONSは元気が出るのでよく聴いています。

——造形するとき一番こだわられていることは?

「どこで何をしているのか」、「この人は今どんな気分なのか」など、少ない情報の中で状況が自然に伝わり、どれだけその世界に入り込ませられるかということを意識しています。

リアルだったり写実的だったりにこだわらず、上手く空気感を伝えたいと思っています。

——現在、メインでお仕事されているジャンルは?

商業原型などのデジタル原型がメインで、たまにグラフィックデザインやイラスト制作などもやっています。

——今後の野望を教えてください。

Acxyz Creativで展覧会をしたいと思っています。
あとはいつか絵本を作りたいです。ひとつのカテゴリに収まらずのびのびと自由に表現していきたいです。

Data

作業スペース

コレクション棚

影響を受けた(大好きな)映画・漫画・アニメ

映画『ミツバチのささやき』『怪物はささやく』『風の谷のナウシカ』『もののけ姫』
漫画『火の鳥』『藤子・F・不二雄SF短編』
アニメ『交響詩篇エウレカセブン』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』

最近はまっているもの

植物にはまっています。塊根や珍奇植物は沼が深いので気をつけながらちょっとずつ手を出していっています。見てて飽きないですね。

1日に造形する平均作業時間

個人制作は1日平均1時間程度です。長いと5時間以上やるときもあります。