【原型師INTERVIEW 番外編】それぞれ“動”と“静”のイメージで立体化『リコリス・リコイル』制作インタビュー!

TVアニメ『リコリス・リコイル』より「錦木千束」「井ノ上たきな」フィギュアが登場!千束とたきなが持つ、拳銃や機関銃を見事に完全再現。さらに、劇中にないシーンを立体化しているのでファンも興奮すること間違いなし。

今回、制作を担当された制作ディレクター・ケロリソさんとグッドスマイルカンパニー企画担当・キョジンさんにお話を伺いました。

 

INTERVIEW

——本作を企画された経緯を教えてください。

企画担当・キョジン(以下、キョジン):作品紹介をいただいて、キャラクターの魅力とストーリーが突き抜けていると思いました。オリジナル作品ですが、「この作品がヒットしなければオリジナルアニメ自体が難しい状態なのでは?」ぐらいの気持ちで、放送前から企画を進めていました。

——劇中にないシーンを立体化をされたということですが、なぜ「IF」のシーンを制作されたのでしょうか?

キョジン:作品を見た時のインスピレーションやキャラクター性を大事にしたいと思ったので、劇中のシーンをモチーフにしてはいるのですが、立体にした時の見栄えも検討してポーズから練りました

——千束&たきなでそれぞれこだわった部分を教えてください。

【千束】
制作ディレクター・ケロリソ(以下、ケロリソ):まず仕様として「動」のイメージがあったので、アクションの感じがうまく表現できるよう社内でディスカッションしたうえでいくつかポーズラフを作り、それらを比較検討して全体の構成を固めてから本番データの制作に入りました。

【たきな】
ケロリソ:こちらは「静」のイメージなのですが、味気ない立ち姿にならないように意識しました。大きな銃を捌く全身のひねりの流れであったり、ふわっとした髪の動きなどを見せるようにしています。銃の大きさを実際の寸法よりも意図的に少し大きく作ることで、可愛い女の子がでっかい銃を振り回すという対比を強調しています。

——拳銃や機関銃の造形について。

ケロリソ:作品の内容的にも、ここをしっかり作るのは大事だと思ったのと、あとは単純に自分の趣味です。実物に存在するディテールで、例えば小さな突起部などは実物通りの比率で作って縮小すると、形が崩れて見えなくなってしまうことが多いです。そのため、縮尺した実物で見てもちゃんと存在感が出るように、各部ディテールの粒感をデフォルメしました。その際には、実際の大きさでテスト出力したものを確認するプロセスが重要になりました。また、量産品の原型であることも考慮して、細かすぎて量産で再現できない部分がないようにも気をつけています。

——たきなはなぜ機関銃を持たせたのでしょうか?

キョジン:女の子に大きい武器をもたせるのは浪漫じゃないですか!ストーリーとして1話の冒頭から企画を膨らませていたので、機関銃のシーンが印象的だったのと、千束を動きのあるものにしたので、対比としてたきなは「静」を表現したかったというのもあります。

——カバン、リコリス制服の造形について。

ケロリソ:実際の制服のように、しっかりした布地の質感が表現できるようにしました。実在する衣服の資料からシワの付き具合をよく見て、それをアニメキャラの表現として過不足のない情報量に落とし込んだらどういう形になるかを考えながら作っています。形を作っていくうえで、CGを画面で見ているだけでは奥行きの情報が無く、陰影の付き方も実際の見え方と違ってくるところが、フィギュア原型としての3DCGを扱う上での大きな悩みどころになります。フィギュアにおいては、画面上で美しいCGを作ることではなく、現実の物体が美しいものになることが目的になるので、実物での見た目を確認するためのテスト出力を繰り返しながら3Dデータの調整をしました。カバンについては、詳細な設定を資料としていただいていたので、その意匠を再現しつつ、銃と同じように縮尺模型としての細部のデフォルメ感や量産性を考えて作っています。

——髪の毛やスカートの動きについて。

ケロリソ:千束は動きのあるポーズなので、スカートによってフィギュア全体の動きを強調できるようにしました。プリーツの流れの方向がいろんな角度から見て見栄えがするように、立体的な線で構成しています。また、スカートの中にある身体の存在を感じさせる部分と、身体から浮き上がって動きを表現する部分とのメリハリにも気をつけました。スカートだけでなく、ボレロの裾やリボンなどのあらゆる末端部分に気を配って全体の動きの表現として一貫性を持たせることも大切だと思います。たきなは長い髪の表現を綺麗に見せたいので、こちらも立体的な線を意識して色々な角度から見て楽しめるようにしています。軽やかさを出すために、色んなアングルでシルエットの外側に細い毛束が見えるようにしているのもポイントです。

——千束&たきなの表情について教えてください

キョジン:千束は「動」のイメージなので、おそろしく強く、軽く戦闘をこなしている感じを出したかったので、笑顔になっています。たきなは逆で「静」のイメージなので、凛々しい表情にしました。

——監修はいかがでしたでしょうか?

キョジン:監修の過程では、陰影の付け方にこだわりが強い印象を持ちました。いつものグッドスマイルカンパニーのフィギュアとは、ほんの少し違った形になっているので、良ければ比較してみてください。

——本作の見どころを教えてください。

ケロリソ:近年の複雑化したスケールフィギュアの中においては比較的シンプルな作りのフィギュアですが、シンプルな中にもどこに見せ場を作れば映えるのかを考えて作り込めたので、見応えのあるフィギュアに仕上がったかと思います。企画段階で仕様として考えられていた二人のキャラ的な対比を造形としてうまく形にできたと思うので、二人並べて飾ることでいっそう魅力が感じられるのではないでしょうか。個人的には、女子高生+銃器という定番要素のそれぞれのディテールにこだわりを持って立体にすることができて楽しかったです。

キョジン:度々お話に出していますが、「動」と「静」がテーマになっており、2人のキャラクター性の違いを立体物として表現できたのではないかと思います。個人的には細かいところだとカバンの出来栄えが気に入っています。カバンは質感はもちろんですが、動きにも注目していただきたいです。

——ケロリソさんとキョジンさんからみて『リコリス・リコイル』とは。

ケロリソ:オリジナルテレビアニメの希望の星だと思います。仕事の資料で知った作品ですが、実際にアニメを見てみると、キャラクターの魅力やそれぞれの関係性、アクションの気持ちよさなど多くの面白さが詰まっていました。そんな自分が「良いな」と感じた気持ちをフィギュアでも表現できるように頑張ろうと思わせてくれた作品でした。新作アニメーションも楽しみにしています!

キョジン:「このアニメはヒットしてほしい!」という気持ちもあって放送前から企画を動かしていたので、ヒットしたことは制作者のように嬉しかったです!

——ファンや、ご購入を検討している方に一言お願いいたします。

キョジン:企画当初から2人並べて飾ることを意識していますので、ぜひ2人並べて買っていただけると嬉しいです。

 

 

 

商品情報

商品名:錦木千束 (にしきぎちさと)
作品名:リコリス・リコイル
メーカー:グッドスマイルカンパニー
カテゴリー:1/7スケールフィギュア

価格:15,800円 (税込)

発売時期:2024/02
仕様:プラスチック製 塗装済み完成品・1/7スケール・専用台座付属・全高:約230mm
原型制作:磯+今朝丸(モワノー)
彩色:グラハム仮面
制作協力:GSC制作部
ディレクター:ケロリソ

 

商品名:井ノ上たきな (いのうえたきな)
作品名:リコリス・リコイル
メーカー:グッドスマイルカンパニー
カテゴリー:1/7スケールフィギュア

価格:19,500円 (税込)

発売時期:2024/05
仕様:プラスチック製 塗装済み完成品・1/7スケール・専用台座付属・全高:約225mm
原型制作:磯+今朝丸(モワノー)
彩色:せしる
制作協力:GSC制作部
ディレクター:ケロリソ

 
※どちらの商品も現在、販売終了となっております。
 
 
©Spider Lily/アニプレックス・ABCアニメーション・BS11
 
 

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制作ディレクター ケロリソ

企画担当 キョジン