『風の谷のナウシカ』腐海世界、竹谷隆之による造形メイキング写真集発売中!

撮影:たけやけいこ


王蟲、大王ヤンマ、ムシゴヤシ等々、腐海の蟲や植物たち……「ジブリの大博覧会」「アニメージュとジブリ展」で展示された、「風の谷のナウシカ」腐海世界のメイキング本が出版された。
本書は竹谷さんが中心になって作り上げた圧巻の立体造形物がいかにして作られたのか、制作現場でのチームワークやその造形プロセスを精緻なデザイン画、マケット造形、最終的な巨大造形物制作まで写真とともに解説する舞台裏写真集だ。さらに、「風使いの腐海装束」の実寸大造形も収録!今回、発売を記念して竹谷隆之さんと、臨場感溢れるメイキング写真を撮影したたけやけいこさんに制作裏話を聞いてみた。

 

『腐海』展示造形は全部ひとの手で作られているのだ、という臨場感が伝われば——竹谷隆之

「腐海」

ワークフローとしてはまずアレンジ画を描いて粘土でマケットを造形し、それを大きくするという流れです。マケットをスキャンして大きく出力した部分もありますね。王蟲自体は井田恒之さんに3Dデータを作ってもらっていたので、それを発泡スチロールで出力してFRPにおきかえる作業をしています。
王蟲の眼は会場で中を覗き込んだ時に光が反射して見えるように、眼底に透明のブツブツやガラスビーズなどを仕込んでいます。眼球本体の表面はアクリルですが、中に透明シリコンを注入しているから結構重たいんです。眼の奥に仕込んだLEDライトでゆっくり赤と青に変化するようになっています。王蟲のお尻は開くようになっていて、内部に組んである通路に潜り込めるようになっているんです。そこからLEDのメンテナンスをします。個人的に一番お気に入りはウシアブです(笑)。キャラ立ちしていということもありますが、もともとのデザイン自体が大好きなので。

 

「風使いの腐海装束」

宮﨑駿さんの設定画に「風使いの腐海装束」というのがあって、それをもとに作っています。
布の衣装は普段の仕事ではあまり慣れていないので、専門の方々にお願いしました。作業時間はタイトでしたが、楽しい作業でした。長銃を作るのが特に楽しかったですね。
今後の構想? できればユパ様とか作りたいですねー、モウソウですが…。
この本を見ていただくことで、こうやって作っているんだなとか面白がっていただけるとありがたいですね。それで自分も作ってみたいっていう思いが芽生えてもらえたらもっと嬉しいし、作るといっても音楽だったり絵だったりなんでもいいんですけど、何かを作るきっかけになったら嬉しいなと思います。


撮影:たけやけいこ
眼をはめ込んだ後、塗料を塗って光漏れ対処しているところ。巨大な王蟲たちは八王子の工房で作られた後、分解して、何台もの2トントラックに積み込んで会場に運ばれ、たくさんのスタッフの手によって組み上げられた。


撮影:たけやけいこ
これは高さが4メートル以上。雛形だと大丈夫なデザインでも、実際に大きくする時、強度のある構造にするのは至難の技。

巨神兵の残骸は初期に描いたラフ。砂漠に埋もれている感じで風化している感じを見せたかったが、最終的に腐海の菌類に覆われているような構成に変化した。


撮影:竹谷隆之
「森の人」は巨大感を伝えるための比較対象物としていろんなところに置かれている。

制作現場の臨場感を伝えたい——たけやけいこ

2018年の春先、夫(竹谷)が「これから八王子に作業場を借りてジブリのものを作る現場が始まるんだけど」というので、なぬ!それは絶対に現場を撮らなきゃいかん!と思い、図々しくも押しかけて現場の写真を撮らせていただくことになりました。
あとで聞くと夫にはこの制作過程を本にできたらという下心があったらしいですが、私は私で「あわよくば写真作品にできたら!」という下心満々でその制作現場に向かいました。初めて八王子の現場に立った時にまず驚いたのは、8mを超える発泡スチロールの王蟲。すでにざっくりと組まれていて、スタッフの方々が黙々と作業をしていたのが印象深く、夫が現場に向かう日は私もほぼ同行し撮らせていただきました。撮影は当初は「竹谷の仕事の記録」としての目的でしたが、制作が進むにつれ現場には独特の熱気のようなものが生じているように感じ、異様さとともに完成への期待を覚えるようになりました。女性スタッフも多く驚きましたが、現場は決して女子が過ごしやすい環境ではなくむしろその逆。その中で黙々と腐海や蟲達を強い集中力を持って作られる女性のみなさんの姿は同じ女性として注目せざるをえない場面でした。
私個人としては「作業する人」に注視して撮影を行い、この本に採用された約164カットの大半がそれを占めています。約4年間分の写真は2万カットを超えますが、その中から熟考セレクトし適所にレイアウト・デザインしてくださった編集者とデザイナーの仕事には本当に頭が下がるばかりです。この制作現場の臨場感が伝わって楽しんでいただけたら幸いです。                       

 

書籍情報

主なコンテンツ

・王蟲の世界
大型展示物制作現場/ムシゴヤシと腐海菌類/ヘビケラ(翅蟲)/ウシアブ
・朽ちゆく巨神兵
造形I:頭部/台座と仮組み/造形II:手/造形III:トゲ/造形IV:胴体/造形V:蟲と菌類
・腐海深部
フレーム制作/王蟲の抜け殻/蟲と菌類/森の人
・風使いの腐海装束
型紙/紋様試作/フィッティング/縫製/砂防帽と瘴気マスク/手袋/脛当て/長銃/セラミック刀/道具・小物類/秘石
・タケヤ式自在置物型録

 

腐海創造 写真で見る造形プロセス

【発売日】 2023年3月2日(木)
【定価】  4,950円(税込)
【判型】  天地 21㎝×左右21㎝
【ページ数】 152P
【発売】  徳間書店

 

漫画『風の谷のナウシカ』 宮﨑 駿 ©Studio Ghibli

 

 

好評発売中!

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